クロスセルとは?顧客単価を向上させてLTVを最大化
営業やマーケティングにおいて、売上額を向上させるために使われるのが、「クロスセル」です。新規顧客の獲得難度が上がっている現代、クロスセルをうまく活用すれば、顧客単価、ひいてはLTV(顧客生涯価値)をアップさせることができます。
しかし、クロスセルに失敗すると、単なる押し売りと認識され、顧客が離れてしまう可能性も。どうすれば顧客単価を上げ、LTVを最大化することができるのでしょうか。ここでは、クロスセルが注目されている理由やアップセルとの違いのほか、成功させるためのポイントを解説します。
クロスセルは組み合わせで購入してもらうこと
クロスセルとは、商品やサービスの購入後、または購入の意思を固めた顧客に、別の商品やサービスも併せて購入してもらうことです。わかりやすい例として、ネットショップでよく見かける「この商品を買った人は、こんな商品も買っています」というレコメンド表示が挙げられるでしょう。メインの商品といっしょに別の商品をおすすめすれば、売上アップにつながる可能性があります。
実店舗で有名なのは、ファストフード店での問いかけ。ハンバーガーを注文すると「ごいっしょにポテトやドリンクはいかがですか?」と声をかけられることがありますが、これもクロスセルの手法です。
クロスセルはなぜ注目されている?
なぜ、クロスセルが注目されているのでしょうか。その理由のひとつは、社会構造の変化です。
売上を分解すると、「顧客単価」×「顧客数」になります。かつての営業やマーケティングでは、新規顧客の獲得を重視し、広く消費者への認知度を高めるために、テレビや新聞といったマスメディアに広告出稿する手法が一般的でした。人口が多い時代は、顧客数を増やすことで売上が確保できていたのです。
しかし近年、日本では少子高齢化の影響で人口が減少し、さらに競合他社の増加で新規顧客の獲得が難しくなっています。そこで注目されたのが、顧客数ではなく、クロスセルで顧客単価を増やすことです。
人々の購買行動の変化や、企業と顧客の接点となるチャネルの増加で、新規顧客の獲得はコストが高くなりがちです。しかし、クロスセルであれば、すでに顧客となっている人にアプローチするため、低コストで効率良く売上をアップさせられる可能性があります。
また、別の商品も購入してもらうことで認知度や満足度が上昇し、リピートにつながる可能性もあるでしょう。単品では売るのが難しい商品やサービスをセット売りすることで、売上アップや満足度向上も見込めます。
一方で、クロスセルの進め方によっては、顧客が離反するかもしれないことに注意しなければなりません。顧客の望まない商品やサービスをすすめれば、押し売りと思われて関係が悪化する可能性があります。クロスセルを実行する場合は顧客の立場で考え、どのようなメリットがあるのかをわかりやすく提示することが必要です。
クロスセルとアップセルの違い
クロスセルに類似する手法として、「アップセル」があります。 クロスセルは商品を購入することを決めた後、もしくは購入後の顧客にアプローチする手法であるのに対し、アップセルは、購入を検討している段階の顧客に対してアプローチする手法です。
例えば、家電量販店でノートパソコンを購入しようと考えている顧客を想定してみましょう。クロスセルでは、パソコンと併せてマウスやプリンターをおすすめします。
一方、顧客が想定していた商品よりもハイスペックな機種をおすすめするのがアップセルです。「◯◯の用途であれば、これくらいのハードディスク容量があったほうがいいですよ」「メモリは◯GB以上がおすすめです」などと説明することで、より高価な商品の購入を促します。スペックのグレードアップだけではなく、アプリケーションを追加するカスタマイズや、保守契約の付加などもアップセルに含まれます。
クロスセルを成功させるためには?
失敗すると離反のリスクのあるクロスセルですが、成功に導くにはどのような点に注意すべきなのでしょうか。最後に、クロスセル成功のためのポイントをご紹介します。
価値を理解した上で購入してもらう
クロスセルでは、顧客にとって良い商品を、価値を理解した上で購入してもらうことが前提です。併せて買うとどのようなメリットがあるのかきちんと説明し、納得してもらわなければなりません。 たとえ良い商品だったとしても、顧客が価値を感じなければ売上は伸びないでしょう。クロスセルは、「売れ残りを処分したい」など、販売側の都合に偏ると失敗し、顧客が離反するおそれがあるため注意が必要です。
顧客ロイヤルティを高める
クロスセルは、ロイヤルティの高い顧客に対して実施することが重要です。ロイヤルティとは、顧客が自社の商品やサービスに対して抱いている愛着や信頼度のこと。ロイヤルティが高い顧客は、自社に対して良いイメージを持っているため、クロスセルが成功しやすくなります。 ロイヤルティの高い顧客は、お客様アンケートなどで調査し、セグメント化することで抽出できます。ロイヤルティの高い顧客のクロスセルを狙いつつ、ロイヤルティの低い顧客はなぜロイヤルティが低いのか分析し、高めるための施策を検討してください。
ナーチャリングで見込み客を育てる
ロイヤルティが低い顧客に対して、むやみにクロスセルを狙うのは危険です。まずはナーチャリングし、自社に利益をもたらす優良顧客になってもらうべきでしょう。
ナーチャリングとは顧客を育成することを指し、見込み客の購買意欲を醸成するためのマーケティング活動を指します。見込み顧客が必要とするタイミングで有益な情報を提供し、購入前に良い関係を構築します。 タイミングを計るのは簡単ではありませんから、マーケティング活動を自動化するMA(マーケティングオートメーション)や、顧客と良好な関係を構築するCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)などのツールを活用するのも有効です。
強引な営業活動はNG
強引な営業活動は避けてください。無理に売り込んだり、顧客にとって不必要なサービスを紹介したりすると、ロイヤルティを下げることにつながります。場合によっては、メインの商品の購入をやめる、あるいはサービスを解約するといった事態になりかねません。クロスセルを実施する際には、あくまで顧客目線で寄り添いながら、単なる押し売りにならないよう注意してください。
顧客との関係性を強化してクロスセルを成功させよう
クロスセルは、新規顧客獲得よりもコストをかけずに売上を向上させられるとして、営業やマーケティングで注目されています。 ただし、闇雲にクロスセルを実行し、押し売りと思われてしまっては、せっかく良い関係性を築けていた顧客が離反してしまいます。ロイヤルティを高める施策を並行しながら、顧客にとって有益な情報を提供し、価値を理解した上で購入してもらうことを心掛けてください。