中小企業こそがITを活用していくべき
――HubSpotにたどり着く前のキャリアをお聞かせください。
伊佐 金融業界からキャリアをスタートしたのですが、数字の世界で生きていくのではなく、ものを届けるところに貢献したいと思い、デルコンピュータ(現DELL)に転職しました。BtoBのマーケティングに携わったので、その後SONYでBtoCのマーケティングも経験し、GoogleやfreeeではまたBtoBのマーケティングを担当しました。一貫して、日本の中小企業の方々のビジネスを効率化し、成長させるというところにモチベーションを感じていますね。リソースやお金がある大企業がテクノロジーを活用している世界はすでに見えていて、それよりもまだ恩恵を受けられていない中小企業こそがテクノロジーを使ってこれからもっと活躍できるのではないかという思いがあるからです。
伊田 新卒入社した総合商社では、3年間経営企画として勤務していました。当時、今後この世のすべての産業がITの影響を受けるだろうという感覚があって、ITそのものをビジネスにしている会社に行きたいと考えるようになりました。2002年にデルコンピュータに入社し、インサイドセールスとブランドマネージャーを経験し、マーケティングの面白さを感じて、マイクロソフトに転職しました。マーケティング職を経験した上で、もう一段お客様に近いところで仕事がしたいなと感じ、営業としてGoogleに入りました。デルに続き、ここでも伊佐と同じ会社なんですけど(笑)。
――HubSpotでおふたりは再会を果たしたのですね。伊田さんが入社された2002年の時点で、デルはインサイドセールスを行っていたんでしょうか。
伊田 今思えばそうですね。パソコンを電話とインターネットとメールを使って販売するというのはインサイドセールスですよね。しかもコンシューマー向けだけでなく、中小企業向けに売っていたので、当時にしてはすごく斬新なモデルでした。
消費者の変化に追いついていなかった営業活動
――2006年に創業したHubSpotについて教えてください。
伊佐 創業者2名はMITの大学院で2004年に出会っています。それぞれがスタートアップの支援をしており、彼らと向き合う中で、ある矛盾に気づいたことが創業のきっかけでした。インターネットの登場によって情報が氾濫し消費者の購買行動は変化しているのに、マーケティングやセールスの手法は変わっていないという矛盾です。また企業が簡単に情報発信をできるツールがなかったという課題も合わさって、生まれたのがHubSpotです。
伊田 HubSpotとして英語圏以外で初めてオフィスを立ち上げたのが日本です。1億2,000万人の成熟したコンシューマー市場とBtoB市場が存在していて、マーケティングとITが持つ市場もすごく大きい。一方でマーケティングと言えば、大企業が行うマス向けのものであるという文化もまだ根強いので、中小企業がまだ恩恵を受け切れていない部分もあると思います。
伊佐 日本の中小企業の数は、約360万(2016年6月時点、中小企業庁調べ)と言われています。この市場感を我々が本社に説明するときは、ドイツとイギリスの中小企業を足した数より多い、ポテンシャルがあるマーケットなんですよと伝えています。