BtoBのマーケティング業務におけるChatGPT活用診断をサービス展開しているウィットは、ChatGPT活用診断を通じてパーソル総合研究所のメールマガジン作成・配信業務の分析を行い、メールマガジンの改善を支援した事例を発表した。
ChatGPTを活用してメールマガジンを作成することで、活用改善前後の比較においてクリック率が約3倍に向上する結果が得られた。
実施内容
一般的に、メールマガジンによる業務課題は次のように分類して考えることができる。
<業務プロセス上の課題>
- メールマガジンのネタづくり
- メールマガジンの文章案作成
- メールマガジンの件名作成
- A/Bテストのプランニング
- 配信システム設定
- 効果測定レポート
<業務体制上の課題>
- 体制強化
- 工数削減
- 期間短縮
課題となるポイントは各社によって異なるため、ChatGPT診断によって、1つひとつの課題の可能性について精査し、ChatGPTが活躍できそうなプロセスを見つけるようヒアリングを積み重ねた。
実際に、業務上で課題に挙がったのが次のような内容であった。
- セミナー企画者の初校原稿はメールマガジンとしての反響を得るためのノウハウがあるわけではない。一方で、メールマガジン担当は、セミナー内容が多岐に渡るため、内容を熟知してメールマガジンを作成するのが難しかった。
- メールマガジン担当者はセミナー開催にあたり、メールマガジン以外にもセミナー集客や申込フォーム設定など業務が多岐にわたり、メールマガジンの文面作成に多くの時間が割けていない状況だった。
- また、メールマガジンの配信依頼についても差し迫った日程で依頼が来ることもあり、そういった場合は、セミナー企画担当者から送られてきたメール原稿の誤字脱字やリンクチェックのみを行い、配信することもあった。
メールマガジンのクリック率は決して低いわけではなく、反響が良い時は2.5%を超えるときもあった。そこで、反響が良かった時のメールマガジンの文面や構造を分析し、プロンプト化を行った。
ChatGPTの活用として実施した内容は次のとおり。
- ChatGPTにより「メールマガジン件名のバリエーション出し」および「メールマガジンの初校作成」を実施。プロンプトは数回にわたって検証をしながらアップデート。
- ChatGPTを活用して、どんなセミナーテーマが来ても、安定して案を出力できるようプロンプトを工夫。
- これまで行っていた「メールマガジン作成手順」と、「ChatGPTを活用したメールマガジン作成手順」を前後比較、および同期間で比較を実施。
実施結果
- 一定のメールマガジン作成プロンプトが完成したため、これまでメールマガジンの作成担当ではなかった(ノウハウがなかった)メンバーでメールマガジン作成を実施できた。
- メールマガジンの作成工数は約2倍(1時間→2時間)に伸びた(言い過ぎの点はないか、セミナーの内容ときちんと合致しているか、思い通りの出力結果にならなかった時に切り口を変えて質問する、など)。
- クリック率は大幅に上昇。「これまでのメールマガジン作成手順」では、8本平均でクリック率が1.17%、ChatGPT利用後8本平均でクリック率が3.86%に向上。各取り扱いテーマは違うものの約3倍の反応率に。
また、同テーマの内容を同時期に別配信にて検証した(※母集団は完全にランダムではない)。「これまでのメールマガジン作成手順」/シナジー「ChatGPTを活用したメールマガジン作成手順」を比較した際も、次の結果のようにセミナーのテーマに関係なく、すべてのメールでChatGPTを活用したメールへの反響が上回った。
【6月配信】メール配信A 旧1.2%⇒ChatGPT活用4.44%
【6月配信】メール配信B 旧1.9%⇒ChatGPT活用5.80%
【6月配信】メール配信C 旧1.2%⇒ChatGPT活用4.02%
【6月配信】メール配信D 旧2.5%⇒ChatGPT活用3.93%
【6月配信】メール配信E 旧4.0%⇒ChatGPT活用6.19%
【6月配信】メール配信F 旧0.7%⇒ChatGPT活用1.11%
全体として見ても、
- 「これまでのメールマガジン作成手順」平均 1.44%
- 「ChatGPTを活用したメールマガジン作成手順」平均 4.25%
と、約3倍の成果が得られた。
これまで法人におけるChatGPTの活用というテーマでは、大量業務の工数削減を行うものやあくまでたたき台レベルの原稿を作成するというものが大半だった。今回のパーソル総合研究所の成果では、業務効率化・工数削減という意味では、ChatGPTが貢献できなかったものの、「メールマガジンの品質を高め、プロンプト化で再現性を維持しながら、分業を可能とした」という意味で、ChatGPTの新たな可能性を確認することができた。