ノークリサーチは、同社が実施した「2021年版DXとコロナ禍を踏まえた中堅・中小企業のIT投資レポート」を公開した。
DX/コロナ禍にともなう中堅・中小IT活用の市場規模は1兆2300億円、小規模企業にも要注目
DXを契機とした新たなIT活用は大企業のみならず、中堅・中小企業にとっても不可避の取り組みとなっている。しかし、成功事例として紹介されるDX関連のITソリューションには革新的なものが多く、「今すぐに始める必要はない取り組み」と捉える中堅・中小企業も少なくない。その結果、ベンダや販社/SIerが中堅・中小向けのITソリューションを検討しようとしても、「具体的に何を提案すれば良いのか?」に悩んでいるケースがあるという。
この課題を解消するためには「1.中堅・中小企業が無理なく導入できるDX関連ソリューションを具体的に例示する」「2.喫緊の課題であるコロナ禍への対応も含めたソリューション体系を考える」の2点が重要となるとのこと。そこで、ノークリサーチでは有効回答件数700社の中堅・中小企業に対して、DX/コロナ禍にともなうITソリューションの導入意向と拠出可能な金額をたずね、年商/業種/地域などの多角的な視点から分析している。
次のグラフは中堅・中小企業におけるDX/コロナ禍にともなうIT支出市場規模(導入予定のITソリューションに対して、初年度に拠出可能な金額を元に算出)を年商別に集計した結果である。
中堅・中小企業の市場規模合計は約1兆2300億円に達し、小規模企業層(5億円未満)や中小企業層(5~50億円)の占める割合が高い。これは先進的なDXだけでなく、小規模な企業でも導入可能なITソリューションにも着目しているためだ。大企業を含む日本全体のDXを実現するためには中堅・中小企業におけるIT活用の底上げも欠かせない。
「起点の選択(DX or コロナ禍)」「業種固有のシナリオ」「経営課題の把握」の3点が大切
中堅・中小企業におけるDX/コロナ禍にともなうITソリューションを活性化させるためには、無理なく導入可能なITソリューションを具体的に提示することが大切だ。同リリースの元となる調査レポートでは、様々な調査や取材などを元に次のようなITソリューション項目を列挙し、中堅・中小企業の導入意向や拠出可能額などについて集計/分析している。
押さえるべき重要なポイントは「1. ITソリューション毎にDXとコロナ禍のどちらを起点とするかを適切に判断する」「2.業種固有のIT活用シナリオを提示する」「3.IT活用の阻害要因(経営課題)を把握する」の3点。関連する次のリリースでは、この3点についての分析/提言の一部を紹介している。
業種別分析例:組立製造業では「スマートファクトリー」の前段階となる2つのIT活用が有効
冒頭に記載した市場規模は「企業数」「導入意向」「拠出可能額」によって決まるため、市場規模の値が同じであっても「企業数は多いが、導入意向と供出可能額が低い」、「企業数は少ないが、導入意向と拠出可能額が高い」などさまざまなケースがある。
そのため、ベンダや販社/SIerがITソリューション提案を行う際は、ITソリューション毎に導入意向や拠出可能額を把握しておく必要がある。
組立製造業における大企業向けDXでは「スマートファクトリー」に注目が集まっているが、中堅・中小企業における該当項目(「S1‐b4.サプライチェーンの安定化や強化」や「S1‐b5.製造工程における他社との連携」)への取り組み意向はまだ低い。
グラフの3つの赤帯が示すように中堅・中小の組立製造業に対しては「デジタル化、可視化、自動化による社内の業務改善」および「社外への遠隔/オンラインでのアプローチ」を両輪としたIT活用提案による下地作りが有効と考えられる。
さらに、組立製造業において上記に赤帯で示したITソリューションを導入するために拠出可能な初年度合計額をたずねた結果が次のグラフとなる。(ここでの「初年度合計費用」とは、該当するITソリューションを導入する際に費やしたハードウェア、ソフトウェア、コンサルティング、システムインテグレーションといった支出の初年合計額を指す)
※1は他業種にも横展開しやすい業種共通のITソリューションだが、拠出額は低い。一方、※2や※3は※1と比べて拠出額が高いが、組立製造業の業態を深く理解しておく必要がある。ベンダや販社/SIerは上記のデータを活用しながら、自社の戦略や得意分野なども踏まえて、「どのITソリューションから訴求していくか?」を適切に判断することが大切とのこと。
調査概要
- 調査対象企業:年商500億円未満の中堅・中小企業700社(日本全国、全業種)(有効回答件数)
- 調査対象職責:経営層およびIT活用の導入/選定/運用に関わる立場
- 調査実施時期:2021年5月中旬