デロイトトーマツグループは「行政組織における在宅勤務実施状況・業務効率化に関する調査2020」の結果を発表した。同調査は、コロナ禍での行政組織における在宅勤務の現状や課題、職場環境改善への意識を明らかにし、行政組織の在り方の検討を目的に実施された。
新型コロナウィルス感染拡大防止への対策が迫られる中で、在宅勤務制度を積極的に採用する民間企業が増加し、オフィスへの出社を前提とした働き方が大きく見直される兆しがある。行政組織においても同様で、住民の個人情報保護を目的とした独自のネットワーク環境やセキュリティ対策、窓口対応の必要性など、在宅勤務などが難しい現状がある反面、感染対策や柔軟な働き方に対するニーズが高まっている。
在宅勤務の実施率は15.9% 67.4%は制度があっても実施せず
調査における公務員の在宅勤務実施率は15.9%。在宅勤務制度が「ない」と回答した人が46.7%、また、在宅勤務制度が「ある」(48.7%)と回答した人であっても、その中の67.4%が在宅勤務をしていないと回答。単なる制度の導入だけでは解決されない現状が顕在化する結果に。
行政組織において在宅勤務が進まない要因のひとつに、自宅からパソコンで社内ネットワークにアクセスできないという点が挙げられる。自宅に業務用パソコンを持ち帰り、社内ネットワークにアクセスできる、という回答は全体で16.3%、国では29.3%、市区町村では8.6%に留まり、自宅で通常業務ができる職員が限定されている状況が推察される。
在宅勤務を実施する上での課題を問う設問では、「IT・ネットワーク環境」が最多で62.9%、次いで「業務内容」が59.7%、「セキュリティ」が46.5%という結果に。「制度・ルール」(43.6%)、「職場の雰囲気」(13.7%)という運用の課題はありながらも、まずは在宅勤務を実現するための環境整備への課題が浮き彫りになった。
職員の7割がコロナ感染に不安 在宅勤務希望者は8割に
行政組織における在宅勤務が難しいとされる一方で、コロナ感染への不安を感じている職員は約7割という結果に。業務内容別に見ると、住民と接する住民関連と税務の2部門では不安を感じる職員の割合が8割と高い数値を示している。この2部門は自宅から社内ネットワークにアクセスできる割合がもっとも低く、これと比例するように在宅勤務の実施率も低く示されている。
また、在宅勤務の希望日数を問う設問においては、8割以上が在宅勤務を希望する、と回答。希望日数は「週2日」が最多で29.3%で、週5日を希望する職員は17.7%という結果に。団体ごとの内訳では、在宅勤務が進む国の職員が、より多くの日数を希望しており、在宅勤務の実施と希望日数の増加に関連性が推察される結果に。
「自由な働き方」「労働時間」など、職場環境の改善を求める意見が多数
新型コロナウィルス感染拡大にともなう勤務環境の変化にかかわらず、「広く改善されてほしい」と感じる点を問うと、「自由な働き方」が最多で41.7%、「労働時間」が39.5%、次いで「職場環境」が38.4%。「人事評価・異動」(29.0%)や「給与」(27.8%)といった処遇よりも、働き方や職場環境の改善を求める意見が多数見受けられた。また、AI・RPAによる業務効率化については、国、都道府県、市区町村いずれにおいても「できる」「難しい」「わからない」のそれぞれが約3割ずつという結果に。