People Tech事業を運営するアトラエは、エンゲージメント解析ツール「wevox(ウィボックス)」のデータを活用し、新入社員におけるエンゲージメントの年間推移を分析し、その結果を発表した。
同分析の結果、4月入社の新入社員のうち6割以上が、
- 入社から1年後にエンゲージメントスコアが低下
- スコアの低下には6類型がある
一方、新入社員のスコア上昇が起こった数少ない事例の分析により、新入社員の定着支援において非常に重要だと思われる要素も判明。同社はこれも合わせて発表した。
分析結果の詳細は、次のとおり。
wevoxの全利用企業における新入社員のエンゲージメントスコアの変化
上のグラフでは、2018年入社の新入社員のエンゲージメントスコアの推移を記した。4月から5月にかけて一度だけ上昇し、そのあとはほぼ単調に低下し続けることがわかる。同様の傾向は入社年次によらず見られ、中途入社の社員についても同様の傾向が見られた。4月から5月にかけてのスコア上昇は、新しい環境への慣れや周囲の人々との関係構築によると推察している。
一方、5月以降のスコア低下については、少なくとも次のふたつの原因があると考察。
- 入社時の過度な期待が、適正値に修正されることによるエンゲージメントスコアの低下(妥当なレベルに落ち着く)
- 望まざる何らかの要因によるエンゲージメントスコアの低下
前者に関してはある程度仕方ない面があると言えるが、後者については改善の余地があると考えられるとして、入社時からのスコア変化を、機械学習の手法(k平均法)を用いて分類。おおむね8類型に分かれることがわかった。
うち6種類においては、次のタイミングで急激なスコアの低下を経験していることがわかる。
低下時期 | 6月 | 7月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12~1月 |
---|---|---|---|---|---|---|
該当色 | 灰色 | 橙色 | 桃色 | 紫色 | 赤色 | 青色 |
出現頻度 | 3.8% | 11.1% | 9.7% | 7.0% | 6.6% | 11.8% |
このことより、新入社員のスコアは徐々に低下するのではなく、特定の月に大幅に下がることがわかる。具体的には、研修の開始や切り替えまたは終了、配属の決定など、環境の変化や、大型連休または年末年始などの季節的な要因が大幅なスコア低下をもたらすと推察できる。
とくに5月から6月に大幅なスコア低下を経験するグループ(灰色)は、分析対象全体における出現頻度は高くないものの、もっともスコア減少が激しく、かつほとんどの場合でスコアが一切回復しないなど、のちに悪影響となる後遺症を残すこともわかった。
新入社員のエンゲージメントスコアが維持・上昇する事例について
レバレジーズ協力のもと、新入社員のエンゲージメントスコアについて分析した。
上グラフでは、入社時よりエンゲージメントスコアが改善している部署に所属する新入社員のスコア推移を、9つのジャンルごとにまとめた。(黒線は基準となるスコア水準)
これを詳細に分析することにより、次のふたつが新入社員のエンゲージメント維持・向上において重要であると考えられる。
- 企業の価値観にマッチしている人材を採用すること
- 上司や同僚との人間関係
上記スコアを見ると、約25%の部署で「支援」「人間関係」「承認」のスコアが入社時より大きく上昇しており、これらの項目が新入社員のエンゲージメントスコアを改善させる要因になっていることが分かった。この結果から、配属された部署やチームメンバーとの関係性が新入社員のエンゲージメントにとって非常に重要であることが推察される。
また、入社時よりエンゲージメントスコアが改善している部署には、「理念戦略」「組織風土」のスコアが入社時から一貫して高い部署が多い。これは、社員のエンゲージメントを低下させないためには入社後の研修や定着などの人事施策のみならず、採用時から自社の理念や文化、組織のあり方などに共感する人材を採用することが重要であることを示唆している。これにより、新入社員のエンゲージメントスコアの維持・上昇には、自社の価値観に合う人材の採用や、入社後の同僚及び上司との関係性が非常に重要であることが確認された。
なお、「職務」「自己成長」「健康」「環境」のスコアについては、特段の傾向は見られなかった。新入社員のエンゲージメント維持・向上という観点では、これら項目群の役割は、今回の分析結果からは発見できなかった。
研究概要
- 内容:wevoxの全利用企業における新入社員のエンゲージメントスコアの変化
- 対象:wevox利用企業に2018年4月、および2019年4月に入社した新卒社員のうち、サーベイへの継続回答などの条件を満たした人
- 人数:610名
- 回答データ数:約15万件(610名の新入社員の1年〜2年分の回答データ)
- 期間:2018年4月~2020年3月
- 内容:新入社員のエンゲージメントスコアが維持・上昇する事例について
- 分析協力企業:レバレジーズ株式会社
- 対象:2019年4月入社の新卒社員
- 人数:約200名
- 回答データ数:約3万件(約200名の新入社員の1年分の回答データ)
- 期間:2019年4月~2020年3月