アカウントマネージャー・BDR・イネーブルメントが求められる進化
──本連載において、エンタープライズ開拓をアカウントマネージャー・BDR・イネーブルメントという3つの視点から解説する背景を教えてください。
桐原 この3つがそれぞれの進化を遂げ、互いにかみ合うことがエンタープライズ開拓の成功を左右するからです。
まずアカウントマネージャーですが、生成AIの進化により営業を取り巻く環境はもちろん、自社が提供できる価値そのものも日々変わり続けています。だからこそ、営業はどのような価値を伝えるかよりも先に、顧客の課題を先回りして見つけ出さなければなりません。
このとき、情報を集めてから分析していては遅過ぎます。AI時代のスピードに追いつくには、外部のコンサルタントやベンダーを含む顧客のステークホルダーを体系的に把握してキーパーソンを押さえ、少ない情報から最短距離で顧客の課題を発見する必要があります。こうした役割を果たすのがアカウントマネージャーなのです。
エンタープライズ開拓を成功させるためには、営業がアカウントマネージャーへと進化し、顧客から信頼される存在にならないと、接点を持つ機会すら得られなくなっていくでしょう。
村瀬 次にBDRですね。現在はリスト作成や初期ナーチャリングといったインサイドセールスの業務を生成AIが代替できるようになり、誰もが一定水準に到達できるようになりました。一方で、人が担うべき価値もより鮮明になっています。
とくに意思決定が複雑なエンタープライズ開拓では、顧客の合意形成プロセスを設計すると同時に、組織の力学やキーパーソン構造を理解して顧客の本音を引き出し、課題を言語化して決断の背中を押す力が重要となり、BDRの価値が問われる領域でもあります。
エンタープライズ開拓を成功させるうえで、BDRは「横断合意された仕組みの結節点」として進化することが求められているのです。
株式会社ナレッジワーク エンタープライズBDR・エグゼクティブリレーション エキスパート 村瀬 章氏
外資系企業2社で約8年にわたりエンタープライズ営業に従事した後、SAPジャパン株式会社に入社。大手製造業を担当。 2020年、株式会社パーソルイノベーションに参画。Board member兼Enterprise事業部インサイドセールス責任者として部門をゼロから立ち上げ、その後、スタートアップにてマーケティングおよびインサイドセールス部長を歴任。 2023年、株式会社ナレッジワークに入社。
並木 そうしたアカウントマネージャーやBDRに活躍してもらうには、冒頭でもお話ししたとおり、採用だけでは限界があります。イネーブルメントや営業企画といった営業現場を支援する役割が生成AIを取り入れた新しい仕組みを構築して、ポテンシャル層をいかに成長させられるか。この「支援の設計」が、企業の競争優位性を左右するでしょう。
エンタープライズ開拓のフロントを担う高付加価値な人材を輩出することは、自社だけでなく、日本の労働市場に対しても意義があることだと感じています。
「現場実行力」を高める源泉
桐原 並木が言う「支援の設計」は、現場の実行力を高めるうえでも重要です。仕組みだけを整えても、現場が「管理されている」と感じてしまえば実行力は生まれません。
たとえば、ナレッジワークのアカウントプラン共有会議には、以前はアカウントマネージャーとインサイドセールスだけが参加していましたが、現在はコンサルタントやカスタマーサクセス、PdMも参加するようになりました。これは、仕組みが現場を「管理」するだけでなく、「支援」するためのものだという共通認識が浸透したからです。そうした文化が構築されるプロセスも、エンタープライズ開拓を成功させるうえで非常に重要だと感じています。
並木 そうですね。エンタープライズ開拓は、関わるメンバー全員でPDCAを回す継続性や胆力が最後に物を言います。社内の合意形成や文化の醸成は時間が必要ですが、組織編成などの大きな変更をせずとも、小さく始められる初動は多いはずです。その具体的なステップも、次回以降でお伝えしていければと思います。
──エンタープライズ開拓における「横断合意×現場実行力」の重要性をお話しいただきました。第2回以降はその具体について解説いただけるとのこと、楽しみにしています!
