最後はやはり「人」 組織を動かすコミュニケーション
高橋 両社とも仕組みやツールの重要性を語ってくださいましたが、それを実際に動かすのは「人」です。組織にどう浸透させていったのでしょうか。
重松 富士通では2025年、組織の力を試されるような大きなプロジェクトがありました。「CORE400」という、デジタルセールスが3ヵ月で400億円のパイプライン(見込み案件)を創出するというミッションです。このミッションが降りてきた時、「本当に達成できるのだろうか」という空気が漂ったのを覚えています。
高橋 そのプレッシャーをどう乗り越えたのですか?
重松 まずは徹底した数値の可視化です。メンバー1人ひとりに具体的な目標を割り振り、進捗を毎日ランキング形式で発表しました。重要なのは、それを単なる監視にしないことです。マネジメント側も「黄色信号(遅れの予兆)」をいち早く共有し合うことを合言葉にし、問題が起きたらチーム全体で解決するウェットなコミュニケーションを繰り返しました。
高橋 メンバーの意識に変化はありましたか。
重松 はい。目標に向き合う中で、メンバーが自分ごと化し、自ら考えて動く集団へと変わっていきました。結果として、この高い壁を突破できたことは、組織としての自信につながりました。強いマインドを持ったメンバーが互いを押し上げるような、新たな成長フェーズに入ったと感じています。

高橋 山洋電気さんでは、いかがでしたか。
小峯 私たちは「インナーマーケティング」という考え方を大切にしています。営業担当者を「マーケティングの価値を届けるべき大切なお客様」と定義したのです。単に「リードをフォローしてください」とルールを押し付けるのではなく、営業さんが喜んで飛びつきたくなるような、質の高い案件を渡すことを目標にしました。

高橋 営業現場の要望に徹底的に寄り添う、ということですね。
小峯 そうです。時には営業現場から「電話をかけるリストが欲しい」といった要望も来ますが、まずはそれに応えることから始めます。「マーケティングに相談すれば、自分たちの活動が楽になる、成果が出る」という信頼を勝ち取ることが先決です。社内メルマガでも、マーケットのトレンドや成功事例を定期的に発信し、営業と同じ方向を向けるよう働きかけました。
高橋 仕組みだけでなく、心理的な壁を溶かすアプローチですね。
小峯 最後はやはり「人」の気持ちです。営業に対して「同じ組織の仲間として一緒にやろう」という姿勢を貫く。この伴走支援の積み重ねが、部門を超えたワンチームの基盤になったのだと思います。

高橋 最後に、おふたりからこれからの展望とメッセージをいただけますか。
重松 「エンタープライズ×エンタープライズ」のインサイドセールスモデルを確立し、将来的にはこのモデルを他社へ展開して、日本企業の営業変革に貢献していくことが、次の大きな挑戦です。
小峯 マーケティングや営業という枠を超えて、一緒にお客様に向き合うことが何より重要です。現在、BtoBの購買プロセスは、お客様が自力で情報収集を終えた段階で営業に問い合わせが来るようになっています。だからこそ、部門の垣根を超えて連携し、お客様の課題に深く寄り添える体制を、これからも強化していきたいと思います。
高橋 アプローチは違えど、本質は「顧客のために部門がどう手を取り合うか」にあると感じました。本日はありがとうございました!
