エンは、運営する人事・採用担当者向け情報サイト「人事のミカタ」上で、企業の人事担当者を対象に「転勤」についてアンケート調査を行い、人事担当者228名(228社)から回答を得た。

転勤辞令に対する社員の反応、「配慮要望」43%、「拒否」24%、「退職」11%。家族の介護、子どもの就学、配偶者の勤務など家庭の状況が転勤の壁に(図1~2)
「直近3年間、社員から転勤辞令に対する配慮要望、拒否、退職はありましたか?」と質問したところ、「特になかった」が43%で同率で最多になったものの、「配慮要望」43%、「拒否」24%、「退職」11%という結果になった。
「配慮要望」「拒否」「退職」があったと回答した企業に、社員から伝えられた理由を質問したところ、上位は「家族の介護・看護」(46%)、「子どもの就学」(41%)、「配偶者の勤務」(41%)で、多くの人にとって家庭の状況が壁になっていることがわかった。具体的なエピソードは次のとおり。
<社員からの転勤拒否や、条件の配慮要望に関してエピソードを教えてください。※(業種/企業規模)>
- 今の職場を離れたくないからと、総合職から一般職に変更。転勤ができないなら最初から一般職で働いてほしかった。(サービス関連/100~299名)
- 地方勤務予定者(地場採用者)を、育成の意味もあり一定期間本社勤務(寮生活)としていると、東京の住みよさからか戻りたがらないことが多々ある。(商社/100~299名)
- ペット可の社宅選定など。(IT・インターネット関連/100~299名)
- とある職員と一緒に仕事がするのが嫌だということで拒否された。(サービス関連/100~299名)
- 子どもが小さく、家族1人で育てるのは負担が大きいので配慮をしてほしいと伝えられた。(メーカー/300~999名)
- 同棲している恋人と結婚予定、または奥様が後から転勤して同居する予定なので、単身向けではなく2人入居用の物件を探してほしいと言われた。(流通・小売関連/300~999名)
IT・インターネット関連企業の62%が「転勤なし」。流通・小売関連、商社は「転勤あり」が7割と多数を占める(図3~4)
転勤制度の有無を質問したところ「ある」が53%、「ない」が47%という回答だった。従業員数別で見ると、1,000名以上の企業は94%が「ある」と回答し、従業員数が多い企業ほど転勤制度があることがわかった(1~49名:18%、50~299名:61%、300~999名:84%)。
業種別では「流通・小売関連」が73%、「商社」が71%で7割を上回った。一方で「IT・インターネット関連」は38%で、6割が転勤なしという結果になった。
転勤がもっとも多い職種は「営業職(フィールドセールス)」(図5)
転勤制度があると回答した企業に、転勤頻度が高い職種を質問した。トップは「営業職(フィールドセールス)」(55%)で、次点の「エンジニア(電気・電子・機械)」(16%)と39ポイントの開きがあった。
人事担当者は、社員の「転勤拒否」の気持ちを理解しつつも、人員不足による地方拠点・店舗の運営への影響を危惧(図6)
2025年6月、「エン転職」ユーザーに”転勤”に関する意識調査(※)を実施したところ、59%と約6割が「転勤の辞令が出た場合、退職を検討するきっかけになる」と回答した。今回、人事担当者に上記結果に対する所感や、転勤制度に関する意向を質問すると、複数の人事担当者から「(拒否/退職する人の)気持ちを理解できる」といった声が寄せられた。一方で、地方拠点や店舗に関しては、人材不足による事業運営への懸念の声もあがった。
<約6割が「転勤の辞令が出た場合、退職を検討するきっかけになる」という調査結果に対する所感や、転勤制度に対する意向を質問したところ、次のようなコメントを得た。※(業種/企業規模)>
- 納得のアンケート結果だと感じた。ワークライフバランスが重視される世の中で、リモートで勤務できる選択肢が増えてきていることなどを考えると、転勤拒否が起こっても不思議はない。当社も働き方の多様化を考慮した対応を考えていかなければならないと思う。(商社/50~99名)
- 今は転職もスタンダードになってきているため、転勤辞令が出たら退職を検討することは、自身に置き換えても自然なことだと感じた。弊社では、転勤辞令を出す前に本人と会話し、可能な場合のみ辞令を出すなど、もう1歩手前の配慮や話し合いがもたれているため、すぐに転勤=退職検討とはなっていないように感じる。(流通・小売関連/50~99名)
- 現状、当社は他拠点がないので転勤制度が無い。共働きが当たり前の世の中で、未だに転勤制度を設けている会社は時代遅れだと思う。転勤制度は配偶者のキャリアを阻害するか、子どもの教育環境を激変させるか、単身赴任を余儀なくするかのいずれか。家庭をないがしろにすることを推奨するのが転勤制度であるため、退職する意向があるのは当たり前である。(不動産・建設関連/50~99名)
- 転勤は生活環境が変わることから、特に家庭を持っている方には壁となることが多い。企業も「転勤をしなければキャリアアップできない」という従来の考え方は改めたほうがいいと感じる。転勤は希望する方だけに課せばいいと思うし、転勤する方としない方での処遇も、できる限り不公平感がないようにすべきだと考えている。(サービス関連/100~299名)
- 転勤を拒否する気持ちは理解はできるが、新規出店の予定や採用が難しいエリアがあり、やむを得ない場合もある。(不動産・建設関連/100~299名)
- 弊社は転勤制度が無い。転職希望者の志望理由に「現職では転勤があるため」という候補者が一定数いる。入社前から知らなかったということはおそらくほぼ無く、分かっていたはずなのに、その理由で退職されたのでは、その会社の人事はたまらないなと思うことがある。(サービス関連/100~299名)
- 転勤が無い職種と給料差があることも理解して入社しているはずなのに、いざその時が来ると退職というのは給料泥棒と言っても過言ではないと思う。(商社/100~299名)
- 弊社には転勤制度が無いが、新入社員に内定受諾理由を聞くと、半数は理由のひとつに「転勤が無い」をあげるので、採用に有利に働く要素だと考える。(IT・インターネット関連/100~299名)
- 全国展開する建設会社として技術者の異動は必須であるが、近年それを望まない若手が増加しているため配属に苦慮している。地域限定社員と全国転勤する者の大幅な処遇差を設けた制度の必要性に迫られている。(不動産・建設関連/300~999名)
- 弊社の場合は、事業所単位で採用を行なうにはハードルの高い事業所がある。このまま転勤をしたくないという方が増えていくと、運営が困難になるのではと危惧している、(メーカー/300~999名)
【調査概要】
調査方法:インターネットによるアンケート
調査期間:2025年9月15日~10月11日
調査対象:「人事のミカタ」を利用する企業
有効回答数:228社
