人とAIの「ハイブリッドチーム」 構築するためのブループリントと3つのステップ
ランガン氏の講演に続き、プロダクト担当エグゼクティブ バイス プレジデント(EVP)のカレン・ン氏が登壇。ランガン氏が描いた未来を実現するための具体的な方法論を提示した。

ン氏は、ランガン氏が提唱したLoopを機能させるためには、人間とAIが協働する「ハイブリッドチーム」の構築が不可欠であると続けた。現在市場にある多くのAIツールが、特定の機能に特化しすぎて顧客体験を分断するか、既存の古いシステムにあとづけされることで歪みを生じさせていると指摘した。
これらの課題に対して、ン氏は、HubSpotは顧客、チーム、ビジネスに関するコンテキストをプラットフォームの基盤として統合することで、異なるアプローチを取ったと説明。ハイブリッドチームを構築するための「ブループリント(設計図)」と、それを構成する3つのステップを紹介した。
1.データの統合:ハイブリッドチームの頭脳となる基盤を構築する
ン氏は、ハイブリッドチームの能力は、それを動かすデータの質によって決まると述べ、非構造化データ、サイロ化した外部データ、質の悪いデータといった課題の解決策を提示した。
発表された「Smart CRM」は、通話やメールといった非構造化データから自動的に情報を抽出し、データの更新・補完を実施。インテントシグナルも追跡でき、HubSpot上でプロジェクトを管理することができる。
また、外部にサイロ化されたデータをシームレスに接続・活用する「Data Hub」や、重複の削除、フォーマットの修正、欠落情報の保管といった顧客データ内の問題を自動検出し修正する「Data Quality」機能も紹介された。これにより、企業は顧客に関する完全なコンテキストをひとつのプラットフォームで管理できるようになる。
2.人材を強化する:AI搭載ツールでチームメンバーを支援する
統合されたデータを基盤として、HubSpotはマーケティング、セールス、カスタマーサクセスが最大限の力を発揮できるAI搭載ツールを提供している。
Marketing Hubでは、ひとつのアイデアからマルチチャネルのキャンペーン戦略を自動で生成する「Marketing Studio」や、顧客の行動に基づいて最適なコンテンツを個別に作成する「AI-Powered Email」、さらにはLLMの回答に自社の情報が表示されるように最適化する「AI Engine Optimization」が発表された。
また、Commerce Hubのための新たな機能として「CPQ(Configure Price Quote)」が導入された。この機能は会話や取引の状況に基づいて見積書を自動作成し、担当者の時間を効率化しながら、取引成立プロセスを加速させる。
ン氏は、これらの機能はチームが既に使っているワークフローに組み込まれているため、コンテキストの切り替えやデータの欠落は発生しないと強調した。
3.AIチームを構築する:人間と協働するAIの「チームメイト」を導入する
ン氏は、AIが単なるツールではなく、人間と協働する「チームメイト」になると強調し、従業員をサポートする「Breezeアシスタント」と、特定の業務を処理する「Breezeエージェント」を紹介した。
Breezeアシスタントは、カレンダーや商談履歴、Googleドライブの情報などに基づいて、会議の準備といった業務全般をサポートする。ClaudeやChatGPTに加え、今回新たにGemini向けのHubSpotコネクタも発表。これによりユーザーはHubSpotのコンテキストをGeminiに持ち込み、より深いインサイトを得て、実行可能なコンテンツを生成できるようになるという。
一方、Breezeエージェントは、カスタマーエージェント、データエージェント、プロスペクティングエージェントといった各エージェントが、それぞれの専門領域で人間をサポートする。さらに、これらをカスタマイズし、最適なAIチームを構築するための拠点として「Breeze Marketplace」と「Breeze Studio」が発表された。
ン氏は、今回の発表で示されたすべてのツールは、AIがより身近で安価になるのを待つのではなく、「今日からハイブリッドチームの構築を始める」という決断を後押しするものだと語った。

「未来は、最高のAIを持つ企業のものでも、最高の人間を持つ企業のものでもありません。未来は、最高のハイブリッドチームを持つ企業のものなのです」という言葉で、講演を締めくくった。