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SalesZine Day 2025 Summer

2025年7月24日(木)13:00~18:20

「The Model」型組織の“分断と停滞”に効く 顧客起点の「カスタマーモデル」

なぜ頑張っても受注につながらないのか? 顧客が抱く“違和感”の正体と、本当に追うべきKPIを探る

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本当に追うべきKPIは“量”ではなく“質”

 では、私たちはKPIとして何を追いかけるべきなのか。

 重要なのは、「ただの数字」を追うことではなく、「受注につながるリードをどれだけ育てられるか」という営業活動の「質」を高めることだ。最終的に受注を生むのは、「資料ダウンロード数」「アポイント数」といった表面的な数字ではなく、「顧客との丁寧な関係構築」であるという現実を、今一度正面から見つめ直す必要がある。

 各部門が「質」の指標に目を向けると、たとえばこのような変化が期待できるだろう。

マーケティング部門の場合

商談に至る可能性の高いリードを育成・選別して営業に届ける」ことを目指すと、KPIとしては「営業にパスしたリードの商談化率」などを置くことができる。

 業種や役職、行動履歴などから「受注につながる可能性の高いリード像」を把握し、その層に向けたコンテンツ設計や獲得戦略を組み立てるようになる。さらに、温度感の高いリードは営業に即パスする一方で、まだ温度感の低いリードは、段階的に興味・関心を育て、商談につながりやすい状態を作ってから営業に渡すなど、ナーチャリング施策の設計も進む。

インサイドセールスの場合

「アポイントを取ること」ではなく、「受注につながる商談を創出すること」を目的に据えるなら、KPIとしては「有効商談化率」や「受注に至ったアポイントの割合」などを置くことができる。

 単にリードがコンバージョンしたから架電する、というのではなく、情報提供の機会としての接点を提案し、徐々に関係を構築していくといった対話のプロセスが重視されるようになる。

 たとえば、最初の接点では「ときどき、情報提供でご連絡しても差し支えないですか?」と了承を得る。そこから、担当者の関心領域や組織の課題感、過去の施策・ベンダーへの不満などを少しずつ聞き出し、状況を立体的に把握していくのだ。

 こうしたアプローチを前提とすれば、無理にアポイントを獲得しようとする形ではなく、相手の検討状況に合った適切な接点を創出するインサイドセールスへとシフトできる。

フィールドセールスの場合

「受注件数」や「受注金額」はもちろん重要な指標だが、それだけを追っていては、継続的な成果にはつながらない。重視すべきは、「顧客にとって納得感のある提案で信頼を獲得すること」だ。

 そのためのKPIとしては、「受注率」「継続率」「顧客満足度」など、提案の“質”や信頼関係の深さを示す指標がふさわしい。顧客と丁寧に向き合う姿勢があれば、たとえば、次のような動きが自然と生まれてくる。

  • その企業ならではの事情や検討背景をしっかりヒアリングする
  • 組織構造や稟議フローを踏まえ、決裁を通しやすい提案資料を整える
  • 検討に必要な情報を、相手のペースに合わせて提供していく

「クロージングの技術」ではなく、「この会社はちゃんと話を聞いてくれる」「信頼できる」と思ってもらえることこそが、結果として受注に結びつく。

部門 「量」のKPI 「質」のKPI
マーケティング     新規獲得リード数 営業にパスしたリードの商談化率など
インサイドセールス  アポイント数 有効商談化率、受注に至ったアポイントの割合など
フィールドセールス 受注件数・受注金額   受注率、継続率、顧客満足度など

 このように、「質」のKPIに目を向けるということは、顧客の意思決定プロセスに寄り添う姿勢を取り戻すことでもあるのだ。

 もし今、あなたが「頑張っているのに成果が出ない」と感じているなら、一度立ち止まって自問してみてほしい。

自分たちが追っているKPIは、顧客の意思決定を“受注”という最終ゴールに向けて前に進めるものになっているか?

 KPIの「数」を追うだけでは、顧客の信頼や納得は得られない。成果が頭打ちになっているなら、まずは「質」の指標に目を向けることから始めよう。

 その先にあるのは、売り手側の都合で動くプロセスではなく、顧客の検討プロセスに自然と寄り添う営業組織。KPIを見直すことは、単なる指標の再設定ではなく、組織全体のあり方を“顧客起点”に再構築する一歩になるのだ。

 次回は、あらためて「理想の顧客体験」に立ち返りながら、顧客に信頼される営業のあり方を見つめ直そう。

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「The Model」型組織の“分断と停滞”に効く 顧客起点の「カスタマーモデル」連載記事一覧
この記事の著者

株式会社イノーバ 代表取締役社長CEO 宗像 淳(ムナカタ スナオ)

 福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA(マーケティング専攻)。1998年に富士通に入社、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。 MBA留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから転職し、楽天で物流事業...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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