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日本企業のOJT、構造的・組織的な問題が顕著に/パーソル総合研究所調査

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 パーソル総合研究所は、「OJT(On the Job Training)に関する定量調査」の結果を発表した。

 OJTは、新人を職場になじませ、現場の実務を効率的にキャッチアップする人材育成方法として、多くの日本企業で実施されている。しかし、人材不足や時間不足などの構造的な問題に加え、属人的で教育の品質にバラつきが出るなどの組織的課題が顕在化しており、従来のOJTでは対応しきれない局面が増え、運用の難度が一層高まっているのが現状である。

 本調査では、OJTの現状や課題を明らかにするとともに、より効果的な方法論や、教える側・新人側双方に求められる行動や意識について明らかにした。

OJTの実態と課題 

新卒の場合、新人研修は47.3%、歓迎会は39.2%、メンターや教育係の配置も35%が実施

 新人(新卒・中途)向けの組織的な施策は、新卒の場合、新人研修は47.3%行われている。歓迎会も39.2%、メンターや教育係の配置も35%が実施。中途向けには全体的に組織的な施策が少ない。企業規模が大きいほどこうした施策は多く実施されている。

新人側(新卒・中途)が感じるOJTの課題は、「人によって指示や教える内容が異なっている」

 新人側(新卒・中途)が感じるOJTの課題は、「人によって指示や教える内容が異なっている」という課題がもっとも多い。また、中途は全体的に課題感が高く、とくに「マニュアルや書類・業務ツールがそろっていない」「OJTのやり方が計画的でない」が多い。

 教える側(企業)が感じているOJTの課題も、「人によって指示や教える内容が異なっている」という課題感がもっとも多い。中途は、新人側と同様に全体的に課題感があり、中でも「マニュアルや書類・業務ツールがそろっていない」が多いほか、「古い教え方のままになっている」という課題感もやや多いのが特徴。

教える側(企業)の意識変化「ハラスメントに気を付けなければいけなくなった」が68%

 教える側(企業)のOJTに関する意識変化をみると、「ハラスメントに気を付けなければいけなくなった」が68%、「効率よく教えなければいけなくなった」が59.5%、「新人に教える人が少なくなった」が53.1%という変化を感じている者が5割を超える。また、年代が上がるほどそうした変化を強く感じている。

新人は教える側が思っている以上に、長期雇用重視で、経済成長重視で、会社貢献意識が強い

 新卒新人(Z世代)の就業意識の実態に関して、新人本人に聞いた実態と、教える側の(新人への)予想をみた。教える側の予想以上に、新卒新人の意識が強いのは、「経済的な成長を重視する」「一度就職したら定年まで勤めたい」「会社のために貢献することが重要」といった意識だった。新卒新人は教える側が思っている以上に、長期雇用重視で、(社会貢献よりも)経済成長重視で、会社貢献意識が強いことが示唆される。

新人の「没個性化」を招いているのは「仕事の単調さ」「成果主義傾向」「多忙さ」

 新人の個性や主体性を奪っていくような傾向を「没個性化」として測定し、影響する要素を分析した。職務特性として、仕事の単調さ、成果主義傾向、多忙さは、新人の「没個性化」を招いていることが示唆された。また、既存従業員の真似をさせるような指示、厳しい指導も没個性化に影響を与えていた。

OJTにおける有効な教え方

教える側の「勇気づける」「位置づける」「跡づける」教え方が新人のパフォーマンスにつながっている

 教える側のどんな行動が、新人(新卒・中途)のパフォーマンスにつながっているかをみた。「勇気づける」「位置づける(全体の中で仕事の目的や役割を位置づける)」「跡づける(仕事の進捗や目標を記録する)」教え方が、パフォーマンスにプラスに影響していた。新卒に対しては「振り返る」も同様だった。

OJTは複数人で教わっているほどプラス

 OJTに対して、教わるネットワークが広く、ひとりに対して複数人で教わっているほどに、パフォーマンス・組織社会化(社内の人間関係・歴史の理解、業務上の知識やスキルの習得、全体に対する自分の役割の理解)とのプラスの関連がみられた。また、教える側の「出会わせる(社内外の知り合いを紹介するなど)」行動が新人のエンゲージメントにプラスに関連していた。

OJTにおける有効な教わり方

「訊く力」「先を読む力」「会う力」「真似る力」「記す力」の5つの行動力が、パフォーマンスにプラスに影響

 教わる新人側の主体的行動力(プロアクティブ行動)と、パフォーマンスとの関連をみた。

「訊く力」「先を読む力」「会う力」「真似る力」「記す力」の5つの行動力が、パフォーマンスにプラスに影響していた。

 上記の主体的行動(プロアクティブ行動)の実践が高い層と低い層を比較した。実践度が高い新人のほうが、「仕事に慣れた」と感じる時期が早い。また、個人パフォーマンスや、文化的社会化・職業的社会化・役割的社会化も全体的に高い傾向だった。

 新人行動を新卒・中途別にみた。全体的に「会う力」が低く、とくに中途の新人が低いのが特徴だった。新卒のほうが行動が積極的な傾向。年代別には40代以降、多くの行動率が顕著に下がる。

OJTを通じた学び 

教える側のOJTを通じた学びの実感は「業務を客観的に見ることができた」47.6%でもっとも多い

 教える側のOJTを通じた学びの実感をみた。「業務を客観的に見ることができた」47.6%、「業務の改善ポイントに気が付いた」45.5%、「自分のスキルや知識を棚卸しできた」44.6%などが4割を超える。

教える側のマインドセットを「学び合い」「馴染ませ」「矯正」「その他」の4タイプに分類

 教える側のマインドセットについて、回答分布に従って「学び合い」「馴染ませ」「矯正」「その他」の4タイプに分類した。

「学び合い」タイプは、教えることによって学ぶことや新人との学び合いを重視するタイプ。「馴染ませ」タイプは、自社や自組織へ早くなじむことを優先する。「矯正」タイプは、新人のやり方を自分・自社のものに矯正することを優先するタイプ。  

「学び合い」タイプはOJTを通じた自らの変化を感じている

 教える側のマインドセット・タイプと変化実感(成長の手応え)の関係をみると、「学び合い」タイプがその他2タイプと比べて圧倒的にOJTを通じた自らの変化を感じている。

OJT期間中のアンラーニングの関係をみると、「学び合い」タイプが具体的な変化を起こしている

 教えるマインドセット・タイプとOJT期間中のアンラーニング(新しい知識ややり方の導入)の関係をみると、「学び合い」タイプがその他2タイプと比べて圧倒的にOJTをしながら具体的な変化を起こしている。

【調査概要】

※構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合がある

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