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大手企業への営業戦略と実践~持続的な事業成長に向けて~ 『エンタープライズセールス』出版記念イベント by SalesZine

2024年11月20日(水)15:00~17:10

常に高い売上目標を達成し続けなければいけない営業組織。先行きの見通しが立たない時代においても成果を挙げるためには、過去の経験にとらわれず、柔軟に顧客や時代に合わせて変化し続けなければなりません。変化に必要なのは、継続的な学びであり、新たなテクノロジーや新たな営業の仕組みは営業組織の変化を助け、支えてくれるものであるはずです。SalesZine編集部が企画する講座を集めた「SalesZine Academy(セールスジン アカデミー)」は、新しい営業組織をつくり、けん引する人材を育てるお手伝いをします。

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なぜ今「インテントセールス」なのか? 顧客のニーズを分析してBtoB営業の課題を解決する最新アプローチ

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 BtoB営業は売り手が顧客のニーズを正確に把握し、適切なタイミングと方法でアプローチすることが求められます。ですが、ニーズを見極めるのは難しく、顧客が望んでいないタイミングで営業活動を行ってしまうことも少なくありません。そこで今注目を集めているのが、顧客のインテント(興味関心)データを分析してアプローチする「インテントセールス」という営業手法です。今回は日本企業の営業における売り手目線・買い手目線それぞれ課題を整理し、なぜそれらの課題にインテントセールスが有効化なのかを解説します。

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 本記事は『インテントセールス 米国企業の6割が実践する興味関心[インテント]データを活用して売上を伸ばし続けるための最先端モデル』(著:小笠原羽恭)から一部を抜粋したものです。掲載にあたって編集しています。

営業における「売り手目線」での課題

 インテントセールスとは、一体どのようなものなのでしょうか。インテントセールスの重要性を理解するために、まず、営業、特にBtoB営業における課題を整理します。

 BtoB、つまり対企業のビジネスは複雑で、個人の顧客を対象としたものとはまた異なる難しさを持っています。企業の事業領域はさまざまで、ビジネスの進化とともに市場もどんどん変化していきます。

 また、企業のリテラシーや意識レベルも一様ではなく、自社の製品・サービスが顧客企業の抱える課題を解決できるものだとしても、そもそも相手がその課題を認識して解決したいと考えているかどうかはわかりません。売り手が、潜在顧客のニーズを正確に把握し、適切なタイミングと方法でアプローチすることは簡単ではないのです。ここでは、売り手目線で見たBtoB営業における主な課題について紹介します。

課題1 ニーズのある企業がわからない

 最初の大きな課題は、ニーズのある企業がどの企業かわからないことです。例えば、新卒向けの社内教育プログラムを提供している企業にとって、毎年新卒採用を行っている企業は潜在顧客と言えるでしょう。しかし、その企業が採用活動を見直し、中途採用にかじを切っていた場合、その企業にアピールしても意味がありません。

 また、製造業のDX(Digital Transformation)をコンサルしている企業が営業したいのは、DX化に後れを感じ、対応したいと思っている企業です。しかし、同じ未対応の会社でも、トップ交代でDXやERP(Enterprise Resources Planning:企業資源計画)導入に興味を持っている企業と、DXに対応できていない企業とでは、まったく様相が異なります。

 売り手は、自社の製品やサービスが顧客企業のどのような課題解決に資するのか比較的認識しやすい立場です。しかし一方で、その製品・サービスを必要としている企業が抱える本質的な課題をなかなか見つけられないのです。市場に存在する数多くの企業が直面している問題や、検討している事業展開を1つひとつ調べることは簡単ではありません。こうした状況で潜在顧客を見つけ出すのは、困難だと言えるでしょう。ニーズがある企業を効率的に特定できないのは、売り手にとっての大きな課題です。

課題2 検討段階やフェーズがわからない

 自社の製品やサービスがマッチする企業を見つけられたとしても、その企業が購買ステップのどの段階にいるのかを把握しなければ、適切なアプローチはできません。購買ステップとは、顧客が購入するまでの流れのことで、整理の仕方によっていろいろなモデルが提唱されています。

 単に情報探索しているだけなのか、具体的な購入意思を持っているのか、すでに商談中なのか、検討段階によって売り手側が取るべきアプローチは異なります。しかし、企業の場合は個人と異なりそのステップは複雑です。組織的な意思決定が必要なため、 検討期間が長期化しがちで、さらに特有の購買決定フローを持つ企業も多くあります。

 そのため、その企業が購買ステップのどの段階にいるのかを把握するのは、簡単ではありません。検討段階がわからなければ、売り手側も適切な戦略やアクションプランを立てられず、効率の悪い営業活動や無駄なコストにつながってしまうのです。

課題3 企業の誰にアプローチすべきかわからない

 BtoB営業においては、「誰にアプローチするのか」が極めて重要です。直接意思決定に関わらない人に切々と自社製品の魅力を伝えてもあまり効果は期待できないでしょう。しかし新規開拓における多くの場合、アプローチすべき人物を特定することは、簡単ではありません。企業によって購買の意思決定に関わる部署・人物や流れにバラツキがあるためです。

 一般的に、企業の購買は複数以上の承認を経て決定しますが、金額によって必要な承認者のレベルが異なっていたり、プロジェクトや部署によって複数の承認ルートがあったり、特に相手が大企業にもなると売り手がその情報を把握するのは至難の業です。企業ごとに異なる購買ステップをどのように把握し、さらに、キーパーソンをどうやって見つけ出すのか。「誰にアプローチすべきかわからない」という点も売り手にとっての大きな課題と言えるでしょう。

課題4 最適なアプローチ手段がわからない

 営業する段階で直面するのが、どのようにアプローチすべきかわからない、という課題です。潜在顧客との適切なコミュニケーションチャネルを見つけることが、効率的なBtoB営業には欠かせません。

 しかし現代において、アプローチの手法は多様化・複雑化しています。伝統的なメールや電話、対面訪問だけでなく、ソーシャルメディアやオンラインプラットフォームの活用が必要なシーンも増えています。加えて、企業や人物によって、どのチャネルが最適なのかはさまざまで、「部長クラスはメールで」といった明確なルールもありません。

 また、ベンチャー企業や若い経営層にとって、デジタルを活用できない企業はそもそも商談する対象外となってしまうかもしれません。ある企業にとっては効果的な手段が別の企業にとっては全くフィットしない可能性もあるのです。それぞれの企業にどのようにアプローチすべきか、最適解を見つけ出すことは、簡単ではありません。

 このように、売り手起点で見たBtoB営業には多くの課題が存在しています。それぞれの課題は、いずれも「顧客のことがわからない」ことから、結果として最適な営業活動を行えない、効率の悪い営業活動になるという負の共通点を持っていると言えるでしょう。

 CRM(Customer Relationship Management)プラットフォームを提供しているHubSpot Japanが発表した「日本の営業に関する意識・実態調査2023」によると、法人営業を行っている組織の31.0%が、自社の顧客管理の方法について「明確ではない・わからない」と回答し、調査結果からは、適切な顧客管理ができず、無駄な業務に時間を割いているBtoB営業の現状が推測されます。

 BtoB営業における売り手起点の課題は、市場の複雑さと企業ごとの多様なニーズ、そして法人営業という特性からくる「顧客のことがわからない」という問題に起因しています。これらの課題を克服し、対応することが、効果的・かつ効率的な営業戦略につながる鍵となります。

営業における「買い手目線」での課題

 では、買い手目線で見たときに、BtoB営業にはどのような課題があるのでしょうか。

 顧客企業は、自分たちの抱える問題を解決してくれる商品や、戦略を後押ししてくれるサービスを求め、そして、それらを適切なタイミングで提案してくれる営業を求めています。しかし、日々、多くの営業活動を受ける顧客にとって、そのうちのほとんどが、求めていない、不要な提案となっているのが現状です。こうした営業活動への対応は、顧客企業にとって時間の無駄となってしまいます。それでは、具体的に見ていきましょう。

課題1 ニーズがない提案を受ける

 顧客が直面する課題の1つは、自社の状況や戦略とは無関係な提案を受けることです。浅く広くつくったリストをもとにした、優先度をつけない「数を打てばあたる」方式、いわば力技の営業攻勢をかけている企業はいまだ多くあります。十分に顧客を理解できない状態でなされる提案は、顧客の実際のニーズとかけ離れたものになりがちです。膨大で不要な営業メールを削除したり、作業を中断して営業電話に対応したりする時間は、忙しいビジネスパーソンにとってストレスフルで本来不要なものです。顧客にとってニーズがない提案を受けることは、日々の業務に支障をきたし、課題の1つになっています。

課題2 ニーズに合わない提案を受ける

 自社にとってある程度関係がある提案だとしても、詳細を詰めてみると内容がニーズにフィットしていないことがあります。例えば、顧客が採用に課題を抱えているとしても、課題の内容、想定している事業戦略や求める人材、かけられる予算などは企業によってそれぞれ異なるからです。フィットしない提案は、売り手が顧客のニーズを表面的にしか理解していないために起こるものです。また、売り手側の調査不足だけでなく、顧客自身がニーズを正確に伝えられていないというケースもあるでしょう。

 いずれにせよ、ニーズにフィットしない提案は、そもそもニーズがない提案と同じく顧客にとっての課題です。詳細を検討した分、無駄となるコストは、より大きいと言えるかもしれません。

課題3 タイミングが合わない提案を受ける

 どんなに良い提案であっても、タイミングが合わなければ顧客は受け入れることができません。注意が必要なのは、同じ提案内容でも、顧客にとっての最適なタイミングは一律ではないということです。例えば、会社全体で語学研修をスタートしようとしている企業にとって、いつが最適なタイミングでしょうか。来年度予算の検討時期に来てほしいという企業もあれば、海外プロジェクトがスタート間近で、急いでプログラムを組みたい企業もあるでしょう。

 さらに、他社の研修プログラム導入を決定し契約した直後であれば、いかに顧客のニーズにぴったりと合った提案ができたとしても、「時すでに遅し」になってしまいます。この場合は、顧客側も「もっと早く提案してもらえれば……」と残念に感じるはずです。提案のタイミングが合わないことも、顧客にとっての課題となっているのです。

 顧客起点で見たBtoB営業の課題は、売り手側の理解不足、すなわち売り手側の課題と表裏一体です。そしてそれらの課題は、売り手と買い手双方にとって有意義なビジネスチャンスを逃す原因となり得ます。売り手は、顧客のニーズを深く理解し、適切なタイミングでニーズに合った提案を行うことが重要です。一方で、顧客も自社のニーズを明確に伝え、受け入れ可能なタイミングを売り手に伝える必要があります。

 こうした顧客起点の課題に対する理解と対応が、長期的で良好なビジネス関係の構築、そして互いにとって最良の結果を導く鍵となるでしょう。

海外のトレンドは「顧客起点」

 ここで改めて、日本と海外の違いについて見てみましょう。海外、特に北米や欧州の営業トレンドは、「顧客起点(Customer-Centric)」に大きくシフトしています。顧客起点とは、企業が製品やサービスを提供する際に、単に自社の商品を売り込むのではなく、顧客のニーズや課題を深く理解し、それに対応するソリューション提供を重視する姿勢を指します。日本でも主にマーケティング領域においては、顧客理解の重要性はいわば「当たり前」として認識されています。

 一方で、営業領域においてはどうでしょうか。顧客が何を欲しているか、購買ステップのどこにいるのか、データにもとづいた的確な分析を行い、合理的な営業が実現できている企業は、まだまだ少ないというのが現状です。顧客起点が浸透している海外では、日本と営業のあり方が大きく変化しています。営業方法、営業組織、セールステックという3つの側面から、海外と日本の違いを紹介します。

海外と日本の営業手法の違い

 顧客起点という営業トレンドの有無が大きく反映されているのが、1つ目の「営業手法」の違いです。海外、特に北米や欧州の営業担当者の動きはコンサルティングに近く、顧客に対して営業担当者はまず相手のビジネスを深く理解することが求められます。そして、顧客が抱えている問題と、自分たちが貢献できる方法を考えることが一般的です。このため、営業担当者は高いレベルの専門知識とコンサルティングスキルを持つ必要があります。

 一方、日本では長らく関係性重視の営業が中心であり、人と人とのつながりや信頼関係の構築に重きが置かれてきました。かつての「顔を覚えてもらう」、「足しげく通う」という訪問型の営業手法が根深く残り、いわゆる情に訴える営業手法が好まれてきた側面は否めません。しかし、コロナ禍によるオンライン化やや技術の進歩により、顧客のニーズに深く寄り添う、欧米型の顧客起点アプローチの重要性が認識され始め、関心が高まっています。

海外と日本の営業組織の違い

 こうした営業手法の違いは、2つ目の組織の違いにもつながっています。特定の顧客群のニーズや特性を深く理解し、よりパーソナライズされたサービスを提供できるよう、海外の営業組織は、領域やマーケットの特性を捉え、狙うべき顧客セグメントや市場にカスタマイズする傾向にあります。また、役割の専門化が進んでおり、デマンドジェネレーション(見込み案件創出のための取り組み)、アカウントマネジメント(顧客との関係構築、維持を目指す取り組み)、カスタマーサクセス(顧客の成功を支援する取り組み)など、異なる役割を持つチームが連携して顧客をサポートしています。

 一方、日本企業の多くは、個々の営業担当者が顧客の獲得からアフターフォローまでを一貫して担っています。外勤営業が人員の大半を占め、データ活用という観点ではまだまだ最適化されていないのが一般的です。効率的な分業体制が敷かれているスタートアップなどももちろんありますが、全体としては型にはまった組織となっていることが多く、日本はこれから最適化していくというフェーズと言えます。

海外でのセールステック、自動化を活用したマルチチャネルアプローチ

 3つ目の違いが、質の高い顧客起点を実現するために欠かせない、データの活用度合いです。海外ではセールステックの導入が進んでおり、CRM(顧客管理)システム、自動化ツール、AIなどを用いたリードスコアリングが広く浸透しています。リードスコアリングとは、見込み客が購買ステップのどの段階にいるかを数値化することです。スコアリングの分類としては、属性による商品・サービスとの相性、行動ログから推測される興味関心の度合い、訪問頻度による活性度などが考えられます。

 例えば、HRテックに関するソフトウエアを販売しているA社にとって、決裁権限を持つ人事部門の管理職で、A社のホワイトペーパーのダウンロードやウェビナーの参加履歴があり、週に3回A社のサイトを訪れて記事を閲覧している人はスコアが高く、有望な見込み客と言えます。リードスコアリングの結果から、戦略的にスコアの高い相手により効率的で精度の高い営業行動を取ることが可能となるのです。

 さらに海外では、SNS、メール、オンライン会議など複数のツールを駆使したマルチチャネルアプローチによってビジネスチャンスを最大化しています。特にLinkedIn(リンクトイン)がビジネスSNSとして深く浸透しており、セールスでも盛んに使われています。日本でもセールステックの導入は進んでいますが、海外に比べるとまだ活用の幅や深さに差があり、伸びしろが大きい領域です。

 顧客起点の営業アプローチは、顧客のニーズと課題に深く寄り添い、それを解決することを最優先に考える姿勢を反映しています。この「顧客起点」に対する認識の強弱が、日本と海外における営業手法や組織、セールステックの活用度合いの違いとなって表れていると言えるでしょう。

「売り手主導」から「顧客起点」へ

 BtoB営業のスタイル・モデルは、「売り手主導」から、「顧客起点」へと変化をしています。その変化はすなわち、「この製品を売りたい、サービスを提供したい」という売り手側の視点から、「顧客がどんな課題を持っているのか、顧客のニーズは何か」を探る、購入者や利用者の視点にトレンドが切り替わっていることを意味しています。その変化に伴い、顧客や業界、市場などへの理解は必要不可欠なものとなり、より複雑で多くの情報を適切に収集、分析していくことが求められていると言えるでしょう。

インテントセールスとは?

 インテントセールスとは、ひと言で言うと「企業の検索行動からわかるニーズにもとづき、顧客起点で行う新時代の営業手法」です。企業の検索行動データはインテントデータと呼ばれ、具体的には顧客の購買意図や関心を示すデータのことを指します。すなわち、Web検索やMAなどの行動データから、顧客の興味関心の対象や購買に対する検討の段階を推測したうえで、相手に合わせた最適なチャネルとメッセージでアプローチするという営業手法です。

 インテントセールスの最も重要なポイントは、「顧客が何を求めているのか」をタイムリーに理解し、それに応じて最適なタイミングで、パーソナライズされたコミュニケーションを行うことにあります。これにより、それぞれの顧客にとって真に価値ある情報を提供し、関心やニーズに寄り添って製品やサービスを提案することが可能となるのです。これはすなわち、前節で紹介した、売り手目線の課題、買い手目線の課題、そしてさまざまな営業モデルで生じている課題の解決に求められること、そのものです。

 こうした質の高い営業はこれまで、「限られた経験豊富で優秀な営業パーソン」のみが実現できるものでした。彼らは、培った知見とスキルにもとづき、高い顧客満足度とロイヤルティを獲得してきましたが、インテントセールスでは、豊富なインテントの取得と分析によって、それらを誰もが実現可能なものとします。半ば属人化されてきた営業という仕事を、テクノロジーによって広く再現可能なものにしたとも言えるでしょう。インテントセールスを実践することによって、どのように現状の営業課題を解決し、成果を生み出していくのか、これから順を追って説明していきます。

 インテントセールスの4つのポイント

 インテントセールスを成功させるためには、4つのポイントがあります。

 1つ目が、顧客のニーズに合わせたターゲティングです。このポイントでは、顧客が購買に対してどのような段階なのか、すなわちバイヤージャーニーのどこに位置するのかを見極めます。一般的なバイヤージャーニーでは、潜在的な顧客が最終的に購入決定に至るまでのプロセスが次の4つのフェーズに分けられます。

  • 課題に気が付き問題意識を持つ「問題認識」
  • 課題に対する解決策を意識し、自身のニーズに最適な選択肢を探す「解決策探索」
  • 具体的な製品やサービスを比較して検討する「比較検討」
  • 製品やサービスの購入を最終的に決定する「1社に決める」

 このうち顧客がどこに当てはまるのかによって、売り手側が取るべきアプローチは異なります。顧客のフェーズに合わせた適切な手法を選択することで、より効果的な営業を実現するのです。

 インテントセールスの2つ目のポイントが、部署・人物、ターゲットの選定です。インテントセールスでは、企業情報などを活用することでアプローチすべきターゲットを選定し、キーパーソンに接触する確度を上げることが可能になります。

 3つ目のポイントが、ニーズに合わせた訴求内容を作成することです。同じ製品、サービスでも、相手のニーズによって響くポイントは違ってきます。例えばメールを送る際も、顧客の課題解決に貢献できる機能や使い方など、顧客の属性やニーズに合わせた、相手が関心を持ちやすい文面に最適化されたアプローチが求められます。この点においても、インテントデータをもとに最適な訴求内容をつくることのできるインテントセールスは、強みを発揮します。

 最後の4つ目がマルチチャネルアプローチです。ターゲットによって最適解が異なるのは訴求内容だけではありません。顧客の業種などの属性、アプローチ対象となる部署や人物の役割や考え方などによって、効果的なチャネルも異なります。SNSの活用が適する相手もいれば、メールのほうが目に留まりやすく、検討の選択肢に入れてもらう可能性が高まる相手もいるはずです。インテントセールスによって導き出されるそれぞれのターゲットに最適な複数のチャネルを使い分けることによって、訴求したいメッセージがさらに届きやすくなります。

なぜ今インテントセールスなのか

 日本のBtoBセールスの世界では、ここ数年、インテントセールスが急速に普及しています。背景にあるのは、AIをはじめとするテクノロジーの進化、営業手法や組織の営業手法の変化やDX推進の加速、そしてインテントセールスの成功事例の認知です。なぜ今、インテントセールスが広がっているのか、それぞれの要因とインテントセールス普及の関係を具体的に見てみましょう。

 テクノロジーの進化は、最も大きな要因と言えます。インテントセールスの精度を高めるためには、膨大なデータ量が必要です。テクノロジーの進化によって、インテントデータがリアルタイムで解析され、顧客インテントとしてマーケティングや営業の現場で活用できるようになりました。今や、顧客の課題やニーズをデータから導き出すのに大勢の人手や大量の時間は必要ありません。

 さらには、生成AIの進歩が、アプローチ時の最適解を導き出すことを可能にしました。例えば、アプローチする相手、興味関心の対象、購買ステップの段階に応じてAIが営業メールの内容を適切にアレンジし、パーソナライズされた文章を送ることができます。AIによって、質と量の両方を兼ね備えた、より効果的・効率的なセールスの実現が可能になったと言えるでしょう。

 そして、営業手法の変化やCX推進の加速も、インテントセールスを拡大させた要因の1つです。多くの日本企業では人材不足が慢性化しており、成長や売上に直接的に影響をおよぼす営業領域の人材不足は解決が急務です。このような背景から、いよいよ日本でもセールステックが浸透し始め、特に、従来の営業ステップを自動化・効率化し、少ないリソースで効果を上げることが期待できるインテントセールスを多くの企業が導入しています。

 さらには、営業の先進企業がインテントセールスを導入し効果を出していることも、インテントセールスを加速させています。大手企業や急成長中のスタートアップに限らず、営業代行会社や営業SaaS ベンダーなど、長期にわたって営業で実績を上げてきた組織もこぞってインテントセールスを実践し始めていることもポイントです。弊社が提供するSales Marker も大手企業やスタートアップを中心に2年で400社以上に導入されていることからも、非常に多くの企業がインテントセールスを推進していることがよくわかります。

 これらの具体的な成功事例の紹介にとどまらず、さまざまなビジネスメディアでインテントセールスの専門的な解説や実践的なケーススタディなどの多岐にわたるコンテンツが掲載され、興味を持った企業がより詳細な情報を得て理解を深め、そして自社での導入を検討するという循環が生まれています。

インテントセールス 米国企業の6割が実践する興味関心[インテント]データを活用して売上を伸ばし続けるための最先端モデル

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インテントセールス
米国企業の6割が実践する興味関心[インテント]データを活用して売上を伸ばし続けるための最先端モデル

著者:小笠原羽恭
発売日:2024年8月29日(木)
定価:1,980円(本体1,800円+税10%)

本書について

本書では顧客の興味関心を把握し広告やSNSなどのマルチチャネルでアプローチする手順から、顧客の意思に沿って進める商談・クロージング手順、マルチチャネルを使って新たな顧客の興味関心を生み出す手順まで、インテントセールスを実現するための方法を解説しています。

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