アポ獲得率3.5倍に Bill Oneの急成長をけん引した接点情報
Sansanでは、社内でも同ツールを活用した営業活動に取り組んでいる。その例として、2020年にローンチした「Bill One」のケースがあがった。Bill Oneはサービスローンチから4年で61億円の売上高まで成長しており、前年比で2倍以上の、文字どおり「急成長」が続いている。
Bill Oneの成長に寄与したのが、Sansanを駆使した営業活動だ。売上の拡大には、自社プロダクトのターゲティングが非常に重要であり、そのうち中島氏がセオリーとしてあげるのがペルソナ設計だ。しかし、Bill Oneのような新規サービスの場合は、アタックするのに最適な人物をいかに見つけ、絞り込んでいくかが難しい。
そこでSansanを活用し、これまでに接点がある人物や、その人物との関係性などのデータを全社共通の基盤として整備。顧客の組織体系を確認しやすくした。さらに、Sansanを導入している企業から、Bill Oneのターゲット層となり得そうなCFOクラス、経理担当者などを抽出し、最初のアタックリストを作成した。
「これまでSansanを使う中で、財務や経理部門のデータが社内に蓄積できていました。また、こうした部門の方は横のつながりも強く、ネットワークのデータもあったことが、大きなポイントになりました」(中島氏)
加えて取り組んだのが、Sansanの契約はないものの、何らかの接点情報がある人物へのアプローチだ。これは、社内のチャットツールでSansanとBill Oneの営業メンバーが情報を共有することで、相乗効果が生まれることを狙った。
その結果、2年間の営業活動を通して、接点のある企業とない企業では、前者のアポイント獲得率が2%だったのに対し、後者は6.8%と、3.5倍の違いが生まれた。Bill Oneの導入企業のうち6割が、「何かしらの接点があった顧客」だという。また、そのうち30%はSansanの契約がない企業であり、接点情報を蓄積しておくことの重要性を示している。
接点情報の活用で、煩雑な商談の準備時間は大幅に削減できる
セッションの最後では、営業生産性を上げていくために重要な、コスト削減にも話題が及んだ。
中島氏は、マッキンゼーのレポートを引用しながら、日本企業の営業生産性が、世界と比較して低く、55%が商談の事前資料や情報収集に当てられていると指摘。1商談につき、営業ひとりあたりがかけている時間は40分ほどだという。商談40回に換算すると、事前準備に30時間近くがかかっている計算だ。一方、Sansanを導入している企業の場合、営業ひとりあたりがかけている時間は15分、月換算でも10時間程度と、半分以下に収まっている。
「ポイントは、顧客情報を一元管理できているかどうかです。たとえば、顧客企業のキーパーソンへアプローチすることを考えてみましょう。接点情報があれば、社内に顧客側のキーパーソンと接点を持っている人がいるか、過去にどんなやりとりをしているかといった情報がすぐに集まります。これまでのキーパーソンの異動履歴や、さらに上の階層にいる決裁者に関する情報、顧客企業のIRや最新のニュースもあるとしたら、どうでしょう。アプローチの事前準備にかかる時間は、大幅に削減できるはずです」(中島氏)
つまり、接点情報の適切な管理と活用は、営業DXの2大テーマである、「売上の拡大」と「コスト削減」の両方に効果を発揮するわけだ。これにより、営業が本来時間を費やすべき、「顧客へのアプローチをいかに高度化するか」とい取り組みに時間を割けるようになると中島氏は話す。ポイントは、顧客の理解ではなく、その先にあるアプローチの検討こそが本丸であるということだ。
ここまでをまとめ、中島氏は次のようにセッションを締めくくった。
「接点情報を集約し、即座に活かせる環境をつくることが、営業DXのポイントです。以前であれば、デキる営業パーソンというのは、接点情報を自分で集約して、保持していました。テクノロジーによって、全社で共有できるようになっているのは、とても素晴らしいことだと思います。ぜひ、社内の貴重な資産を眠らせるのではなく、活用することを当たり前にしていきましょう」(中島氏)
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