リンクアンドモチベーションの研究機関であるモチベーションエンジニアリング研究所は、「マネジャーに対する周囲からの評価とエンゲージメントの関係性」に関する調査を実施し、その結果を公開した。
調査概要
- 調査期間:2015年1月から2022年5月
- 調査機関(調査主体):リンクアンドモチベーション モチベーションエンジニアリング研究所
- 調査対象:2015年1月~2022年5月にリンクアンドモチベーショングループ内で実施したマネジメントサーベイを受けたマネジャー
- 有効回答数(サンプル):182名
調査方法(集計方法、算出方法)
- 調査1:マネジャーに対する周囲からの評価とエンゲージメントの関係性
マネジャーに対する360度マネジメントサーベイ結果と、そのマネジャーが管理する組織のエンゲージメントスコアを用いて、マネジャーの上司からの評価が部下からの評価に及ぼす影響、部下からの評価がエンゲージメントスコアに及ぼす影響について調査した。
- 調査2:マネジャーに対する上司からの評価と部下からの評価の関係性
マネジャーに対する360度マネジメントサーベイ結果を用いて、特定の要素に対する部下からの評価が高い場合における、上司からの評価が部下からの評価に及ぼす影響の変化について調査した。
調査結果
調査1:マネジャーに対する周囲からの評価とエンゲージメントの関係性
- マネジャーの上司からの「役割遂行や率先垂範」「部下の成長支援」への評価は部下からの評価を高める一方で、「自社の戦略や課題の確認」「業務への要望や改善点の確認」「外部情報の提供」への評価は、部下からの評価を下げる傾向にある。
- 部下からの「戦略情報の提供」「進捗状況の確認」「動機付け」への評価はエンゲージメントスコアを向上させる傾向にある。
調査2:マネジャーに対する上司からの評価と部下からの評価の関係性
- 部下からの「戦略情報の提供」「進捗状況の確認」「動機付け」に対する評価が高い場合、マネジャーの上司からの「自社の戦略や課題の確認」「業務への要望や改善点の確認」「外部情報の提供」への評価が部下評価に及ぼす負の影響を緩和、もしくは正に転じさせる傾向にある。
リンクアンドモチベーション モチベーションエンジニアリング研究所による考察
- マネジャーは組織において上下や左右の情報の結節点としての機能が求められるものの、過剰に上司の方針や意図を確認したり、上司に状況を報告する行動は結果として部下からの評価を低下させるリスクがあり、得た情報を元に自身で考え行動し、部下の成長を支援するといった行動が重要と考えられる。
- 部下の状況を把握しながら部下に情報を伝達したり、部下への動機づけを十分に行っている場合には、上司への方針確認や状況伝達が良い方向に働く可能性があり、マネジャーが上司ばかりを見てマネジメントを行うと、部下からの評価の低下や、従業員エンゲージメントの低下につながる可能性があると考えられる。
学習院大学 経済学部経営学科教授・一橋大学名誉教授 守島基博氏のコメント
今回の調査では、株式会社リンクアンドモチベーションが保有している、マネジメントサーベイとエンゲージメントサーベイの結果を用いて、マネジャーに対する周囲からの評価とエンゲージメントの関係性について、調査をしました。
調査から得られたことを一言で表すと、上司から評価されているマネジャーがエンゲージメントの高い組織を創るわけではないということです。
企業としての方針や戦略を実行するためには上司との連携は当然重要になりますが、上司ばかりに気を取られ、部下の状況の把握や部下への戦略情報の伝達、動機づけなどを怠ってしまうと、結果的にエンゲージメントが低下してしまうということが明らかになりました。これはミドルマネジメントの2面性を忠実に表した結果といえるでしょう。
ミドルマネジャーは組織の上下間の情報を繋ぐ立場にありますが、ただ情報を受け渡しするのではなく、ゲートキーパーとして上からの戦略に自分なりの解釈を加えること、下からの情報に自分なりの解決策を加えることが求められます。
メンバーの多様性向上やミドルの育成機会の不足、プレイングの重視など、ミドルマネジャーがおかれる環境は難易度が増していますが、その重要性はこれまで以上に高まっているため、ミドルマネジャーだけに責任を負わせるのではなく、組織としてミドルが機能するために必要な組織創りやフォロワー育成への投資などが求められるのではないでしょうか。