数値に弱い人が陥りやすい「3つの罠」
営業マネージャーとしてチーム全体の成果を上げるため、はじめに、ビジネスパーソン一般が陥りやすい「数値化の3つの罠」を押さえておきましょう。
数値化の3つの罠、それは「確率の罠」「平均の罠」「2:6:2の法則の罠」です。
1.確率の罠
成約率が80%のAさんと50%のBさんがいます。あなたはどちらのほうが「仕事ができる人」だと感じますか?
多くの方は、成約率が高いAさんを選ぶはずです。しかし、Aさんは毎月10件商談して8件成約、Bさんは毎月50件商談して25件成約するとしたらどうでしょうか。実数で見るとBさんのほうが成約件数が多く、売上への貢献度が高いことがわかります。
もし、営業担当の目標が成約率で設定されていた場合どうでしょう。Aさんは「成約率を80%から下げたくない」という思いから、行動量が減ります。売上が伸びないことはもちろん、Aさん本人にとっても打席に立つ回数、すなわち成長機会が減ってしまいます。
一概に数値で管理すると言っても、確率やパーセンテージ(%)で判断するのは危険。とくにパーセンテージは、印象操作に非常に便利な単位です。目標は確率ではなく、「獲得件数/商談実施数」のように実数で設定することが重要です。そうすることで「成約率では勝っている」という誤った印象にだまされず、事実ベースで行動量と目標達成数を管理できます。
2.平均の罠
自分が管轄している各エリアの売上が、Aチームは1,000万円、Bチームは600万円、Cチームは200万円だったとします。このときに「全チームの売上平均は600万円」と全体に掲示してしまうと、ちょうど平均値の売上を創出しているBチームはどのような心理状態になるでしょうか。
「平均値に達しているから大丈夫」
「Cチームに負けなくて良かった」
このように、安心してしまうのです。
“平均”はとても都合の良い数値です。「平均だから大丈夫」という安心材料は部下やチームの成長を阻害してしまう要因となるため、十分に注意する必要があります。
3.「2:6:2の法則」の罠
「2:6:2の法則」とは、あらゆる集団において、パフォーマンス(生産性)が良い人が2割、中くらいの人が6割、パフォーマンスが悪い人が2割の割合で存在するという経験則のことです。別名「働きアリの法則」とも呼ばれ、人間もアリもなぜか集団(組織)になるとこのようなバランスになってしまうのです。
しかし、それはあくまでも、何も働きかけていない自然な状態だった場合。2:6:2の法則どおりにメンバーのパフォーマンスが分かれているのであれば、裏を返せば、マネジメントが機能していないということを意味します。
評価する以上必ず順位はついてしまいますが、マネジメントがきちんと機能していれば、パフォーマンスが悪い2割=まったく成果を出せないレイヤーは発生しません。2:6:2の法則どおりにパフォーマンスが分かれてしまうことを当然だととらえず、数値を活用しながらマネジメントに注力していきましょう。