いつ、誰が顧客へ連絡したか? 事業部間で情報が分断
──2019年に発足した「法人企画統括部(現:クライアントP&M本部)」はどのようなミッションを持つ部門なのですか。
檜山 2019年以前、パーソルキャリアでは人材紹介や求人広告といったサービスごとに縦割りで組織を運営しており、横の連携については営業担当ごとに個別対応をしていたことから、法人顧客へのサービス品質に偏りが生じてしまうシーンもありました。
パーソルキャリアを支える事業部門は、人材紹介や求人広告以外にもさまざまなサービス・事業が生み出されています。これらをひとつの会社として顧客へ総合的に価値を提供するため、全事業部を横でつなぐ部門が必要となり、法人企画統括部が発足しました。
──“横の連携”を進めるうえで、どのような課題が生じたのでしょうか。
檜山 まず始動したのが、事業部横断CRMプロジェクトです。各事業部が独自で導入・最適化していたSalesforceから顧客へのアプローチ情報を抽出し、事業部横断で確認できるようにしました。これで最低限、いつ、誰が、どのような内容で自分の担当顧客に連絡をとったのかわかるようになりました。
次に、事業部ごとに所有している顧客データを1ヵ所で把握できる体制をつくろうとしたのですが、事業部ごとにシステムやデータの管理が異なることが課題となりました。たとえば、企業を特定する企業コードです。コードそのものは全事業部共通の数値を用いていましたが、ある事業部は「企業コード」、別の事業部では「クライアントコード」など、違う名称で管理していました。
このような違いからかんたんに名寄せできず、どの項目が共通していて、どの項目が異なっているのか、1つひとつ確認しなければなりません。そのため最初は、私が手作業で名寄せを行っていたのです。各事業部のIT/テクノロジー活用を担う部署と連携をとってデータをもらい、約500万件のデータを手作業で名寄せする……月1回更新が限界でした。担当者の作業スピードに事業のスピードが左右されてしまうのは健全ではありません。この作業をシステムによって自動化しようという試みから「事業部横断の顧客データ基盤構築」プロジェクトが始動しました。
寺本 各事業部のシステム導入担当者も、現場の営業担当の業務が少しでも良くなればという思いからこのようなシステム導入を進めています。各事業部のビジネスモデルがまったく異なる以上、システムやデータが事業部ごとに最適化されていくのは仕方がありません。
一方、事業部に最適化された膨大なデータを有していることで、データレイク・DWH(データウェアハウス)・データマートと統合していく中で参照元や更新時期・所有者が曖昧になり、データの品質が保てなくなる可能性があります。その結果、市況感を捉えていないデータをもとに営業担当が提案してしまう、という事態も起こり得るでしょう。事業をシステムでフォローするためにも、「データの鮮度」をどのように担保するかが課題でした。