案件化率を上げる質問とは ポイントは「3つのR」
続いて具体的な質問力の極意について説明した。川上氏は、顧客をその気にさせるというフェーズ、「案件化率」を上げるための質問について、次の「3つのR」をポイントとして挙げた。受注率を上げる前に、そもそも提案をできる状況をつくるために必要なステップだ。
- ライトパーソンの特定(検討に際しての起案者/決裁者)
- ライトタイミングストーリー(予算時期以外でも「今」)
- ライトコンテンツ(自社の業務/課題/ゴールに沿ったもの)
ひとつめは「ライトパーソンの特定」だ。どんなに良い提案や商材であってもそれを訴求する相手が適切でなければ意味がない。営業パーソンが陥りがちなケースが、決裁者や検討部門を聞かずに目の前の担当者に一生懸命説明してしまうことだ。とはいえ、「キーマンはどなたですか?」とは聞きにくい。そんなときは「if」を活用すると良いという。断定はせず「本件のご検討に際して、できればこの方のご意見を聞いておいたほうが良いという方はどなたでしょうか」とさりげなくうかがって特定する。
「これで中核のキーマンまではいかなくとも、その周りのサブキーマンくらいは特定できるでしょう。この質問をして返事がなかったとしたら、対面の方がキーマンを知らない可能性もありますし、もしかしたら信頼関係が成り立っていないのかもしれません」(川上氏)
このメソッドは、ソフトブレーンが2,000名以上のTOPセールスマンにインタビューしその行動を分解して確立したもののひとつだ。「if」を使った質問はあらゆる場面で活用できるので、覚えておくと良いという。
ふたつめのポイントは「ライトタイミングストーリー」。良い提案も、タイミングが合わなければ「今はいいです」と断られてしまう。3月決算であれば1~2月の予算時期に再度提案する場合が多いだろう。
川上氏は「この『今』を無理やり捻じ曲げて売る必要はないが、『検討のタイミングにまた来ます』と言ってそれまで何もしないのはダメなパターン」だと指摘する。
ここでのポイントは「逆算」だ。予算時期からしばらく期間が空いたとしても、今からの検討がちょうど良いというイメージを持ってもらうため、相手に「ゴール」をたずねて時期を設定する。
先述の「if」を使い「たとえば本件を始めるなら、いつごろからやってみたいなというイメージはありますか?」と聞いてみて「来年の4月」と返ってきたとする。この最終ゴールを顧客に設定してもらうのが重要で、ここから逆算していく。「だいたい導入に3ヵ月ぐらいかかるので、4月スタートに向けては12月ごろにご契約いただくのがベストです。となると業者の選定を11月中に終えるために、コンペは10月中がよろしいのではないでしょうか。このコンペを開始するためには……」といった具合だ。できる営業は無意識のうちにこの「逆算の促し」を行っているという。
3つめのポイントは「ライトコンテンツ」だ。適切な相手に適切なタイミングで営業できたとしても、そこで機能中心の営業をしてしまっては意味がない。先述のとおり、今の時代の営業はお客様のニーズを明らかにし、刺さる提案をすることが重要である。
TOPセールスマンはこれをうまく実践しており、潜在課題をさりげなく顕在化できる。そしてこれを組織全体でできるようにするには、TOPセールスマンの知見を借りることだ。TOPセールスマンが顧客によく投げかけている質問を、「よくある課題」として箇条書きにして顧客に提示し「この中で何か当てはまりそうなものありますか」とたずねるところから始めると良いだろう。これによって、顧客に刺さる提案がしやすくなる。
この「3つのR」を経て、顧客が「今この課題を解決するために、提案してもらったほうが良い」と感じれば、案件化の状態に至るわけだ。