受注率を上げるための質問に必要な「CPD」
案件化したらもちろん受注を目指す。川上氏は、受注率を引き上げるためには「CPD」を引き出す質問が重要だと説明した。
- Competitor(コンペティター):どの競合と最終比較されるか?
- Point(ポイント):その競合と比較する際の評価のポイントは何か?
- Decision maker(ディシジョンメーカー):最終的な決定者や決定プロセスは?
優秀なセールスパーソンは、無事ニーズをとらえたうえで、提案の翌日から3日以内にこのCPDをキャッチアップしているという。ひとつずつ見ていこう。
ひとつめの「コンペティター」。コンペで提案を終えた後も結果を待つだけではなく、勝ちを引き寄せるため、補足したり顧客の不安を解消したりと動くのが重要だ。そのためにどの競合と比較されるのかを押さえておきたい。
ここでの質問のポイントは「ハードルの引き下げ」だ。先方も「A社が良い」と確定めいたことは言えないはずである。よって「○○様の個人的な感覚で結構なのですが、どこが本命、対抗の2社になりそうでしょうか?」といったかたちで、「個人的な」というキーワードを入れ、ハードルを下げて質問すると良い。このように聞くことで、会社としての正式な回答がない中でも戦況把握が可能になるわけだ。
ふたつめの「評価ポイント」。プレゼンが終わってすぐに1社に絞られることはまれだろう。たとえばA社の評価が15点、B社が12点だったとして、本当にA社にしてよいのか、もう少し不明点を明らかにしてから決めたいという会社も多い。
そこで的確なフォローをするために、評価ポイントを引き出す質問をしたい。ここでも「個人的な感想で結構です」とハードルを下げることが重要だ。さらに、「どちらの提案内容が良かったですか」とは聞きにくいが、「どちらにも良し悪しがあったかと思いますが、いかがでしたか」と聞くと、さりげなく両社の良かった点・懸念点が引き出せる。それに対して「コストに関しては御社のほうがちょっと高かった」と返ってきたとすれば、「なるほど、コスト面ではA社が少し安かったんですね。ちなみにいくらぐらいでしたか」と深掘りしていくことができる。これが「評価ポイント」を明確にするうえで重要な引き出し方となってくる。
続いて3つめの「ディシジョンメーカー」。最終的に多数決で決める合議制の場合もあるが、役員や社長などの決定権者がいる場合も多い。また、経営会議や取締役会で決めるといった決定プロセスも存在する。
そのため、「誰がどのタイミングで」決定するのかを押さえておき、最終局面まで気を抜かずにフォローする必要がある。「今回のプレゼンを踏まえて今後どのような検討の進め方をされますか」「そのタイミングまでに我々ができそうなことはありますか」とたずね、積極的に手を打っていく。最後に「誰がどのタイミングで」決めるのかを押さえておかなければ、競合に差をつけるためのフォローアップができない。そのため、ディシジョンメーカーを特定するための質問が非常に重要なわけだ。
ITを組み合わせて組織成果へ
ここまで、案件化率・受注率を引き上げていくための質問力について解説した。実際にこの質問力を組織の成果につなげるためには体系的な取り組みも必要だ。今回紹介した質問内容をマニュアル化して指導し、セールスパーソンの行動が変化することで成果が出てくる。とはいえ、マニュアル化や指導にリソースを十分に割けないケースも多い。
そこで川上氏は「マニュアル化して質問力の育成をしながら、CRM/SFAといったITを活用することで生産性を上げ検証・分析をしていく。これらを組み合わせると万全の体制になると思います」と説明し、ITツールを組み合わせたサイクルを提案した。
最後に川上氏は、「ソフトブレーンは、質問力の育成とITによる仕組みづくりの両側面をお手伝いしており、その事例もお届けしています。ご興味があればぜひお問い合わせください」とセッションを締めた。