新たな目標設定手法OKRとは何か?その特徴は?
OKRは、近年、導入する企業が増えている目標設定手法のことだ。その概要や特徴を見ていこう。
OKRが生まれた経緯と導入企業
OKRは、Objectives and Key Resultsの略で、1900年代後半にシリコンバレーで生まれた目標設定の手法だ。米インテル社の元CEOアンディ・グローブ氏によって構築されたとされる。インテル社がマイクロプロセッサーという新しい分野に進出するため、組織を結束させる必要があったからだ。
インテル社による新分野進出の成功が知られることになり、OKRは広まっていく。当時、インテル社でグローブ氏から学んだジョン・ドーア氏によってGoogleに導入されたほか、AmazonやNetflix、Microsoft、Adobe、accentureなど、名だたるグローバル企業に導入されている。日本での導入企業は、メルカリやSansan、freee、Chatwork、GMOぺパボなどだ。
OKRの仕組み
OKRでは、目標(Objectives)に対して、達成度を測るための主要な成果(Key Results)を設定して管理する。まずは、目標の設定方法から見ていこう。
- 目標は企業にとって重要な課題と関連するものとし、部署や個人目標とリンクさせる
- 目標はシンプルでわかりやすいものとする
- 数値で表せない定性的な目標もOKとする
- 目標の数は3~5個
- 現状維持ではなくチームのモチベーションが上がるような挑戦的なものを選ぶ
- 具体的で明確な言葉を使って表す
目標に関しては、達成したかどうかを客観的に判断ができるように設定しておくことが重要だ。具体的には、「EC販売を強化する」「関東エリアで売上を倍増させる」「新製品開発プロジェクトを成功させる」などが挙げられる。重要な成果の設定方法については、以下のとおりだ。
- 1つの目標に対して3個ほど設定する
- 計測可能な定量的な指標とする
- 行動そのものではなく、行動の成果を表すものとする
目標に対する到達度が分かるよう、数値を用いて具体的に設定することが大切だ。例えば、「製品Aの売上を関西エリアで拡大する」という目標に対しては、「見込み客を20社見つける」「10社と商談する」「既存顧客の導入例を5社集めてホームページで発信する」などが挙げられる。
OKRでは、評価のサイクルが早い、達成率100%を求めない、全社に情報公開するなどの特徴もある。
- 評価のサイクルは1カ月~四半期
- 達成率は100%を求めない
- 全社で同じシートを使い情報公開する
- 評価制度と連動させない
評価のサイクルが早いということは、目標設定の段階で、企業の重要課題との関連性が薄すぎたり、目標設定が低すぎたりした場合でも、早期に修正できることを意味する。また、ストレッチゴールと呼ばれる、一見達成できなさそうな挑戦的な目標設定が重要で、結果として60%で未達となっても失敗と考えず、その60%を評価する。
なお、Googleでは、60~70%で目標達成としている。スコアカードも公開されている。評価制度と連動させないことで、挑戦的な目標設定を促すのも重要なポイントだ。
OKR を導入する5つのメリット
次に、OKRを導入するメリット5つを見ていこう。なぜOKRを導入する企業が増えているのか、自社にはどのような効果がありそうか考えるためのヒントになれば幸いだ。
企業の重要課題を全社で共有
企業には、必ず経営目標がある。しかし、組織が大きかったり複雑だったりすると、企業の重要課題が全社に行き届かないことも少なくない。OKRは、シンプルにわかりやすい言葉で目標設定するため、企業の重要課題を全社で共有しやすく、部署も個人もそこに向かって進んで行きやすい。つまり、企業も部署も個人も、一緒に成長できる目標設定手法だといえる。
生産性やエンゲージメントの向上
OKRを導入すると、部署や個人の目標が企業の重要課題と何らかの形で結びつくことを意味する。自分の目標達成が、企業の課題解決に貢献しているという自負を生むことにつながるため、生産性やエンゲージメントの向上が期待できるといえる。
社内コミュニケーションの活性化
社内コミュニケーションの活性化も、OKRを導入するメリットのひとつだ。レビュー頻度が1カ月から四半期と高いことや、全員が同じフォーマットを使っての目標管理、全社への情報公開など、社内の共通言語としての役割も果たすだろう。「今回のOKRは何にしたか」「目標をどこまで達成できたか」「未達でも学んだことは」など、コミュニケーションの活性化が見込まれる。
具体的なアクションに基づくタスク管理
明確な言葉で目標や主要な成果を求めるOKRは、具体的なアクションなどと相性がいい。成果を計測する指標は数値なので、数値化するために具体的なアクションをいつまでにやればいいのかというタスク管理能力が磨かれることになる。
失敗を恐れない風土の醸成
高い目標へ向かっていこうとする企業風土を醸成することもOKRのメリットのひとつだ。OKRの特徴のひとつに前述のストレッチゴールがある。ストレッチゴールの狙いは、失敗を恐れず、今の自分の実力で達成できるよりも高い目標を設定することで、自分が想定しているより大きな成果へとつなげることだ。
なお、月面着陸のように高すぎて届かないと感じる目標でも、地道に積み重ねていけば、いずれたどり着けることを意味するのがムーンショット。その一方で、難しいけれども実現可能な目標のことを、屋根の高さに見立ててルーフショットと呼ぶ。
KPIやMBOとどこがどう違うのか?
最後に、OKRとKPI、MBOとの違いを見ていこう。似たようなものと比較することで、OKRの特徴をよりいっそう理解することができるだろう。
KPIとは
KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、重要業績評価指標と訳される。企業が定めた目標に到達するまでの業務進捗管理手法として広く知られ、かつ用いられている。指標は原則として定量的、つまり数値化できる具体的な項目で管理され、100%に至るまでの途中経過が各指標のパーセンテージで表わされる。
基本的にはKGI(KGI: Key Goal Indicator「重要目標達成指標」)の達成に向け、そのプロセス管理として機能するものだ。KGIは、どのような目標を達成すべきかを定量的に定めたもの。KGIで定めた目標に向けて、KPIを使って具体的に進捗管理していくというイメージだ。
MBOとは
MBOは、Management By Objectivesの略で、目標による管理を意味する。主に個人に適用される手法で、半期や1年などの期間を定め、一定期間内での達成度を定性的・定量的に計測する指標によって成果を評価する仕組みのことだ。指標には、各企業の業界や業種などに即したものが選ばれるが、目標そのものは個人が自分で設定する場合が多い。一般的に、目標進捗管理のために用いられ、成果は人事評価と連動することが多い。