営業における雑談の重要性
営業において雑談は、信頼関係を築くための大切な役割を果たしています。
初対面の人にいきなり商品やサービスを勧められても、その人のことを何も知らない状態で購入に至る人はほとんどいないでしょう。まだよくわからない相手からは商品やサービスを買う気にはなりません。
雑談は、自分の情報を開示し、相手との信頼関係を築くのに大切な行為です。雑談の内容から相手は「この人はきっとこういう人なんだな」とあなたの印象を決め、印象がよければ「ちょっと話を聞いてみようかな」という気持ちに向いていきます。
また、雑談の中で相手のニーズをうまく把握できれば、営業での提案も相手に合ったものにできるので、セールスがより成功しやすくなるでしょう。
営業の雑談で使えるキーワード
雑談で何を話せばいいのかわからない、話題がないと悩んでいる人は、「木戸に立てかけし衣食住(きどにたてかけしいしょくじゅう)」というキーワードを覚えておきましょう。
「木戸に立てかけし衣食住」とは、下記の話題の頭文字をとった言葉です。
- 季節
- 趣味(道楽)
- ニュース
- 旅
- テレビ
- 家族
- 健康
- 仕事
- ファッション
- 食べもの(グルメ)
- 住まい
これらは、当たり障りがなく初対面でも気軽に話しやすい話題です。
たとえば天気についてなら「今日は暑いですね」「すごい雨ですね」、趣味についてなら「お休みの日は何をして過ごされているんですか?」などと話し始めるといいでしょう。
ただし、ニュースについては自分の意見を言い過ぎてしまうと、相手の意見と対立し空気が悪くなってしまう場合があるため注意が必要です。
どの話題にするかは、自分が話しやすいものを選ぶか、相手を見てから決めるといいでしょう。たとえば、相手の腕時計がブランドものやおしゃれなものだった場合はファッションの話題を選び、「時計がお好きなんですか?」「その時計、〇〇の限定品ですよね?手に入れるのは大変じゃありませんでしたか?」などといった具合です。
営業の雑談が上手な人のポイント
営業成績がいいセールスマンは、営業に入る前の雑談で相手の心をつかむのが上手です。雑談で相手の懐に入れれば、営業もしやすくなるし成果にもつながりやすくなるでしょう。ここでは、営業前の雑談が上手な人の特徴を紹介していきます。
聞き上手
雑談を頑張ろうとすると、つい「たくさん話さなければ!」と自分だけが一方的に話してばかりになってしまいがちですが、そうすると相手はあなたの話をただ聞かされているだけなので疲れてしまいます。雑談が上手な人は、相手に会話の主導権を持たせるようにうまく誘導し、聞き役に回るのです。話す割合としては、相手7:自分3くらい。すると相手は自分の話ができるので気持ちがいいし、「この人は自分の話を聞いてくれる人だ」と好印象も与えられるでしょう。
また、あなたは相手の情報を得られるので、営業時の提案にも活かしやすくなります。ただし、相手を質問攻めにすると疲れさせてしまうため注意が必要です。質問をするときは、「5W1H」を意識しましょう。「5W1H」は、いつ(When)、どこで(Where)、誰と(Who)、何を(What)、どうして(Why)、どうやって(How)の英単語の頭文字を取ったものです。
「5W1H」で相手に質問し、それ以上は突っ込まないようにするのが無難でしょう。
適度な相槌
話を聞くときに適度な相槌を打つと、相手は「この人は自分の話をしっかり聞いてくれている」と感じます。しかし、相槌は打ちすぎると「この人は私の話を真剣に聞いていないな」と感じられてしまうのでさじ加減が大切です。「はい、はい、はい」や「なるほど」を連発したり、オーバーなリアクションをしたりするのは相手を不快にさせる可能性があるため避けます。
しっかりと話を聞いている姿勢を示すためにも、自分が共感したポイントで相手の目を見て適度に相槌を打つようにしましょう。
また、相手の話に対して「はい」や「そうなんですね」だけで返すと話が広がっていかないので、「そうなんですね、私は~」と相手の話をしっかりと聞いた上で自分の意見や感想をひと言付け加えて返すと会話が続きます。
鋭い観察力
雑談が上手な人は、相手を見てどんな話をするかその場で決めています。たとえば相手のデスクにペットの写真があったら、「犬を飼われているんですか?」「犬がお好きなんですね」などと聞いてみると話が広がっていくでしょう。
また、話していても相手の反応があまりよくない場合は、無理に雑談を続けずに本題へ入るか話題を変えるのがいいでしょう。
大切なのは相手に嫌な思いをさせないことなので、雑談しようと頑張るのではなく、相手の気持ちを汲み取り、それに合わせることがポイントです。
雑談から本題に入るタイミング
雑談のあと、タイミングを見失ってなかなか本題(営業)に入れない人もいるでしょう。本題に入るタイミングを逃すと長々と雑談を続けることになり、相手に「話が長い人」「何がしたいのかわからない」と思われてしまう可能性があります。雑談をしていて、話の波がゆるやかになってきたらそろそろ本題に入りましょう。
本題に入るときは、「もうこんな時間ですね」、「○○さんとのお話が楽しくてつい話しすぎてしまいました」などと言ってから営業へ進みます。
しかし、いちばん理想的なのは、雑談から気づいたら本題へ入っていたパターンです。売りたい商品やサービス関連の雑談を展開し、そこから徐々に本題にシフトしていくとスマートでしょう。
たとえば保険の営業なら、家族についての雑談を展開し、子どもの年齢や将来への不安などを聞いてから、「今うちで扱っている保険なら~」「それなら一度保険の見直しをしてみますか?」などとスムーズに本題に入れます。
営業の前に雑談で信頼関係を結ぼう
営業では、相手がいますぐに必要としていないタイミングで商品やサービスを提案する場合もあるでしょう。しかし、突然やってきた知らない人に、いきなり欲しくもない商品やサービスの説明をされても、「買いたい!」と思う人は少ないでしょう。
まずは営業をかける前に雑談で「自分はこういう人間です」とこちらの情報を開示し、相手の不信感を取り除きます。雑談を進めていくうちに相手はこちらへの不信感が薄れていくでしょうし、こちらも相手の悩みや求めているもの・サービスを探ることができるので一石二鳥なのです。
雑談をするときは、「5W1H」で質問し、適度な相槌で相手に聞いている姿勢をしっかりと見せましょう。ただし、中には雑談が苦手な相手もいるので、その場合は早々に雑談を切り上げ営業に入るのがおすすめです。相手をよく観察し、どんな話題だと話が弾むのか、話をするのが得意とはしない人かもしれないなども見極めて、相手に合った雑談を展開するよう心がけましょう。