現場はネガティブ? フォーキャストはなぜ重要なのか
第4回のテーマは『THE MODEL』(翔泳社)の第9章で取り上げている「フォーキャスト」です。会社によって「受注見込み」「ヨミ」などいろいろな表現があると思いますが、本稿では営業における着地数字の見込みを「フォーキャスト」と表現することにします。
営業の中には「ミーティングで上司にフォーキャストについて詰められるのが嫌だ」「うっかり『この商談はいけそうだ』と報告したら、進捗をチェックされるし、万が一失注したら責められるからギリギリまで報告しないでおこう」とフォーキャストにネガティブなイメージを抱く人も多いかもしれません。
しかし、フォーキャストは営業の成績を評価するためのものではありません。顧客セグメントや地域など、どのテリトリーにリソースを追加すべきか、あるいは投資をストップするべきかなど、重要な経営判断の基礎になります。
上場企業の場合、予測を外すことは株価など市場の評価に悪影響を与えます。また上場・非公開企業に関わらず、売上が当初見込みの数字を下回る場合には、採用計画、マーケティング予算などの投資を抑えなければなりません。「努力しましたが、結果数字が届きませんでした」では困ります。
では、フォーキャストした数字を上回れば良いかと言えば、それも違います。計画を上回るほど好調であることが早くわかれば、その有利差異を活かして新規投資を早めに行い、成長をさらに加速できたかもしれません。「控えめな数字を提出しておけば余計なプレッシャーから解放される」と考えている営業は、会社から見ると機会損失を発生させているのです。1人ひとりの金額のズレは小さかったとしても、組織全体で見ればそのズレが会社として致命的なものになる場合もありますから、営業1人ひとりの強い責任感が求められます。
一方、会社によっては「うちの会社は既存顧客からの売上など定常的に入ってくるものが見えているので、そもそもあまりブレる要素がない」という話も聞きます。しかし、これは問題を抱えている会社の兆候です。その会社の業績が伸びていれば良いですが、そのような発言をする会社の売上はほぼ横ばいというケースがほとんどだからです。
コストコントロールで利益率を多少高めることはできても、中長期的な成長は望めません。既存顧客を大切にすることは重要ですが、それに甘んじて新たな市場を開拓していかなければ会社は衰退していくのみです。会社が持続的な成長を実現するには、すでに見えている確実な数字だけでなく、ストレッチした高い目標を追いながら同時に正確なフォーキャストを行うことが求められるのです。
フォーキャストの精度を定点観測してみよう
SalesZine読者の多くは営業や営業部門のマネージャーの方だと思いますが、自分のフォーキャストの精度を把握できているでしょうか。意外とこの数字を把握していない人は多いものです。もし意識したことがないという方は、四半期単位のフォーキャストであれば、第1週、第4週、第6週などいくつか確認するポイントを決め、それぞれのポイントで提出したフォーキャストと最終着地の数字にどの程度差があったのかトラッキングしてみることをおすすめします。
私がこれまで勤務してきた会社では、上に10%、下に5%のブレの範囲内に収めることを強く意識させられました。数字に対する責任感を持つことはもちろん、許容範囲から外れたフォーキャストをした要因は何なのかを分析する。また継続的にトレンドを観察し、マネージャー、営業レベルにブレイクダウンして傾向を把握すると、早めにリスク検知できるようになり精度も高まってくるはずです。