セールスキャパシティとは?
前回の記事「『THE MODEL』で本当に伝えたかったこと」では、「プロセスを分解してボトルネックを特定する現状分析」「フォーキャスト」「Go-to-Market戦略」「テリトリー設計」「キャパシティ計画」「コンペンセーション設計」という要素はSaaSビジネスだけでなく、あらゆるビジネスに通じるものであると説明しました。今回は、これらの中から「キャパシティ計画」について取り上げます。
セールスキャパシティとは「一人当たりの期待売上を設定し、組織全体でどれだけの売上を上げる戦力があるか」を意味します。営業活動なしにオンラインで購入してもらえる商材の場合は別ですが、BtoBのビジネスでは営業が介在して受注するのが一般的です。だとすると、いくらマーケティングやインサイドセールスを強化して商談数を増やしたとしても、それに対応できるだけの営業がいなければ売上に結びつかないということなります。
つまり会社が期待する売上に対応できる十分な営業人員がいるかが制約事項になります。もちろん単に頭数さえいれば良いというものではありません。セールスキャパシティを考えるうえで、とくに重要な要素が3点あります。
ひとつめは、「Sales Quota」と呼ばれる営業の個人目標金額。
ふたつめは、「Ramp time」です。一人当たり年間1億2,000万円の売上を期待すると仮定します。月に換算すると1,000万円ですが、入社して初月からいきなりその数字を期待することは現実的ではありません。会社の製品サービス、社内のオペレーションなどを学ぶオンボーディングの期間を経て、新たに商談を発掘するのにも一定の時間はかかります。その会社の商談サイクルが90日間であれば、入社してすぐに商談を発掘したとしても受注できるのは3ヵ月後となります。
つまり、セールスキャパシティを計算する際は、この点を考慮してその人の売上が期待値(Sales Quota)に到達するまでにどれくらいの期間(Ramp time)が必要かを設定しなければなりません。多くの企業では、商談サイクルが短いSMB(小規模企業)担当営業の場合は3-4ヵ月程度、Mid Market(中堅企業)担当営業は6ヵ月程度、Enterprise(大手企業)担当営業の場合は、8-10ヵ月程度と、担当する顧客セグメントに合わせてRamp timeを設定しています(期間は各社のソリューションの特性や実績値によって変動するため参考値として捉えてください)。