データドリブンで戦略的
達成意識が高い営業組織への変革を伴走支援
――営業組織改革を支援するグラフのミッションと、提供するソリューションの特徴について教えてください。
クライアント企業の確かな営業組織改革を実現するため「GRAPH」というSaaSと、クライアントプロジェクトに伴走するプロフェッショナルサービスを提供しています。大手企業のお客様を支援するケースが多いのですが、直近は事業部長の方から「自社の営業組織を、データドリブンで、達成意識の高い、ベンチャー企業のような“パリッとした営業組織”に変革したい」という類のご依頼を多くいただきます。私は複数の成長ベンチャー企業で営業責任者の経験があるのですが、ベンチャー企業の営業組織は「目標を達成したい」という目的意識をベースに、さまざまなツールを使いこなし、データを活かした合理的な営業活動を展開しています。
――組織改革の目的は「売上を上げる」ことですが、リーダーの本音としてはそもそも「目標達成にどん欲なメンバーが育つ組織にしたい」「営業組織の生産性を向上させたい」という気持ちもあるのですね。現在、大手企業の改革においてどのようなトレンドがあるのかうかがえますか。
「データを貯めたい・活用したい」というトレンドが強まっていることをひしひしと感じます。SalesforceをはじめとしたCRMの普及が一巡し、普及当初の課題はもっぱら「営業担当者が入力しない=データが貯まらない」だったわけですが、それを乗り越え、蓄積したデータをどう活用していくかに課題を抱えている企業様も増えてきました。
苦労して蓄積したデータをどのように活用して、営業組織の生産性向上、また理想的なマネジメントを実現するか、といった悩みは本当に多く耳にします。これまで多くの営業組織のデータ活用をご支援するなかで、汎用的かつ有効なデータ活用モデルをつくり出すことができましたから、今では自信を持ってそちらを提供することができています。
もうひとつのトレンドとしては、各社で新規事業開発が活発です。商社においては当然のこと老舗メーカー等においても、従来事業の周辺領域でSaaS事業を立ち上げるシーンをよく目にします。とくに「会社の威信をかけて」といった意気込みを感じる事業の場合には、非連続的な成長戦略を掲げている事業などもあります。大手企業内にスタートアップが誕生している感覚ですね。
また、テレワークが浸透したコロナ禍特有のトレンドとして、営業の人事評価を「定量・成果主義に傾ける」というものがあります。営業組織内でのコミュニケーション頻度が下がり、定性面での評価が難しくなったということに加え、営業組織の生産性向上に向けての意識が高まったものだと解釈しています。
まずはなにより土台づくり
達成意識が低い状態でナレッジ共有はNG
――「データドリブン」で「目標達成に対する意識が高い」組織の実現に向けて大手企業の営業組織特有の課題はあるのでしょうか。
人数の多さと年齢層の幅の広さが実現に向けての課題となっているケースが散見されます。新しいことを浸透させる手間も非常にかかりますし、全員にわかる言葉で仕組みの平準化をしなければなりません。また、大企業の組織改革では、チーム全員に高い納得感をもって物事を進める必要性が高いと感じています。ベンチャー企業よりも合理性や理論が求められるといったところでしょうか。多様な方にとってデータを扱いやすい状態にしないといけない。データドリブンで強いチームづくりは、営業の現場がデータを使いこなしてこそ実現できます。
また、良い組織をつくるために話題の「セールス・イネーブルメント」に着目し、「データドリブンな育成・標準化」に取り組もうと考える営業組織も多いです。そして実際の施策として、皆さんがまず取り組もうとするのは、「トップセールスの営業手法を型にしてコンテンツ化し、横展開しよう」というもの。
しかし、それを行う前段階として必要なのは、「営業活動をデータで可視化・管理できている」状態をつくることです。それができていないと、実施した施策がどのように数値向上に寄与したのか、誰がベストパフォーマンスを出しているのか、正確に把握できません。また、営業活動をデータで可視化・管理することは、目標達成に向けた道筋を論理的に可視化することでもあり、達成を見据え、能動的にアクションを起こす営業組織の基盤にもなります。現に「目標達成を目指して強く戦うチームをつくりたい」という理由で、私たちにご依頼いただくケースが非常に多いです。
導入4ヵ月で商談数2.4倍、売上が2.1倍!
目標達成意識を醸成する営業データ可視化
――実際に御社が営業組織改革を支援してきた大手企業では、どのような成果が出ているのでしょうか。
ひと言で表現すると「目標達成に向けたアクションの量と質が上がる」という成果が出ています。事例で申し上げると、大手メーカーの新規事業部門において、システム導入から4ヵ月で、活動量(商談数)が昨対比2.4倍、それに紐づく売上も2.1倍という実績が出ています。定性的には、チーム内に「目標を達成しよう!」という強い意識が醸成されてきています。また、施策の効果をデータで検証できるようになったことで、真に業績向上に貢献する「実のある施策」を精度高く実施できるようにもなってきています。
――チームの目標達成に対する意識を高めていく過程が重要かつ、難易度の高い部分ではないかと感じます。ツール導入だけではなく、営業会議のファシリテーションの支援も行われているとのことでしたが、取り組み当初はどのような状態だったのでしょうか。
大手や歴史のある企業ではよくあることなのですが、既存顧客からの継続発注がある程度あるため、新規の営業活動を積極的に行わずとも一定の売上が立ち、それに甘んじてしまうという受動的な営業スタンスでした。営業担当者1人ひとりが自分の目標値をはっきり意識できていなかったのです。
そこで、週次の営業会議における報告コミュニケーションにGRAPHを活用して大きく変革しました。具体的には、普段入力したデータから導き出された数値を元に、目標と現状のギャップを把握、目標達成から逆算して必要なアクションを自ら宣言するといったスタイルでの会議を実践し、会議のたびにそのコミュニケーションの精度を高めていきました。それを反復して行ったことにより、受動的な状態から脱却できたのは大きな変化だったと感じています。GRAPHには上記を含む、営業会議コミュニケーションに必要なデータ項目が網羅的にプリセットされており、導入設定直後から頻度高く活用いただけました。
実は、目標数値を個人ごとにしっかり把握できていない営業組織は少なくありません。多くのケースで営業マネージャーが、経営から降りてきた数値を基に各担当者に目標を割り振るのですが、マネージャーとメンバーの間で目標数字を基にしたコミュニケーションを月に1回程度しか行わない組織も多いのです。これが、目標達成に対する意識が高まらない要因にもなっています。
月1回程度しか会議が行われない大きな理由のひとつに、営業会議の資料づくりの煩雑さがあげられます。実際、CRMや各帳票から営業会議のたびに、データを集計し、資料づくりを行うというタスクは負荷が大きく、敬遠されがちです。しかしその結果、営業活動のPDCAサイクルが月に1回しか回らない事態を招いてしまっては本末転倒です。
ダイエットに置き換えれば、月に1回だけ体重計に乗り、「あれを食べてしまったな」「運動しておけば良かったかも」と、すべてが後の祭りになってしまう状態です。
まずは振り返りのサイクルを短くすることで、実態に即したリアルタイムな改善が可能になります。GRAPHを活用することで、CRMもしくはGRAPH上の最低限の商談項目を更新するだけで、資料の準備を行わずともGRAPH上で会議に必要な数字およびデータ項目がわかりやすくスタンバイされている状態になります。もちろん会議以外のタイミングでも、ひと目で現状が把握できます。
組織改革にデータが必要な本当の理由
営業がとっつきやすいUI・UXにこだわり
――そもそも、営業改革になぜデータが必要なのでしょうか。
ふたつあります。ひとつは、人を動かす納得感。もうひとつは、データを活用することで取り組みの精度を精度を高めたり、営業の施策や結果からさまざまなトレンドを追うことができるようになる点です。一般的に「データドリブン」の価値としては、後者の「施策の判断 やPDCAの実行」が挙がりやすいですが、営業の意識変革という意味で、前者の「データが人を動かす納得感を生む」という点を当社は重要なポイントだと認識しています。
――では、GRAPHならではのデータの可視化についてうかがえますか。
Salesforceとセットで活用いただくケースが多いのですが、Salesforceのデータの持ち方は平たく言うと「チームの数字の本日時点のスクリーンショット」です。そのため、先週から今日までの変化を見る難易度は少し高い。GRAPHは、Salesforce上に蓄積された過去のデータを保存し、かいつまんで見せることが得意です。そのため、先週と本日の状態という2点間の差分をわかりやすく表示することが可能です。
多くの企業ではこの差分を見るために、前回分の数値やデータを手元のExcelやスプレッドシート上に保存し、今回分のデータをCRMからダウンロードして貼り付けするなど複雑かつ脆弱な運用に陥っています。GRAPHでは、比較したい2点の日付をカレンダーで選択するだけで済みますから、会議の準備が簡略化できます。加えて、Salesforceはチーム全体の目標設定および管理はできるものの、個人の目標管理は実質的に不可能です。一方、GRAPHでは個人ごとの目標設定の進捗管理も容易です。
また、1ヵ月の中でどのように数字が伸びていったのか、先月の推移と比較することもできます。この比較により、「現段階で先月と比較して○○万円遅れをとっている」ことが明確にわかります。
営業担当者の数字の積み上げ、目標の達成率も可視化できます。直近数ヵ月のトレンドを、受注率、商談数単価などの切り口で平均と比較することも可能です。ここまで気持ち良く、容易に、これらの数字を比較することはほかのソリューションではできないと自負しています。
UI・UXには好みもあると思いますが、現場の営業担当者がとっつきやすいという視点で、非常にこだわっています。「データ」に苦手意識がある営業担当者も多いと思いますし、正直私自身も営業担当者として初めてSFAを活用したときは、非常に使い勝手が悪く面倒なものだと感じたものです。我々は「プアなビジュアライズ」「使いこなしにコツが必要」という課題をクリアするUI・UXにより、データに縁遠かった営業パーソンを「よくわからないけど入力させられている」状況から開放することを目指しています。
そのため、これまでSFAを上手く活かせていなかった企業様からは「データを使ったコミュニケーションが可能になった」と高い評価をいただいています。一方で、Salesforceを使いこなす企業として有名なメドレーにも導入が決まっています。2点間の差分データが出せることと、営業にとって使いやすいUIが、さまざまな状態の企業に好評いただいている証左となっています。
――今後、どのような機能追加や販売戦略で日本の営業組織を支援していくのか、展望をお聞かせください。
成果を出すために分析するべき項目はある程度決まっていますから、「イケている営業組織の分析の型」をプリセットしたソリューションに進化させていく予定です。Excel やBIツールにデータを連携してあらためて分析せずとも、GRAPHさえあれば営業組織に必要な分析がすべて完結する世界を目指していきます。
加えて、1つひとつの導入案件をきちんと成功させたいと考えています。当初は、ツールを磨き込みながらユーザー数を拡大し、使い込んでもらえるツールになることをイメージしていました。これは、Salesforceも使いこなしているようなエキスパートな企業様であれば今すぐに可能ですが、本日お伝えしたとおり、営業人員が多かったり、新しいビジネス・売り方を模索したりしている大手企業様では、まずは「目標に対するコミュニケーション方法」を整備する必要があることがわかりました。1つひとつの組織を成功に導き、最終的にはユーザー企業とのコミュニティも形成して、そのうえでナレッジが横展開される世界を目指していきます。
――営業組織改革を目指す営業リーダー・マネージャーへ、メッセージをいただけますか。
中長期的な視点で良い組織になるための仕組みづくりをする際には、データはとても有用であり、必要不可欠です。一方、その扱いは非常に難しいものでもあると思います。どのようなデータを抽出・可視化し、行動変容を促すか。当社のツールやプロフェッショナルサービスが、この難問にお力添えできると信じています。
まずは、データドリブンな会議の仕組みをつくっていきましょう。データを基に会議を行うことで、さらにデータが集まっていく好循環が生まれ、データ活用の良いサイクルが回り始めるはずです。SFAなどの活用でせっかく手に入れたデータをここで一挙に活用し、共に営業組織をレベルアップさせるセールス・イネーブルメントに取り組んでいきましょう。
――現場の意識を根本から変えていくデータ活用の事例を共有いただけました。本日はありがとうございました!