「売り込む」営業から「協働する」営業へ
本連載「顧客との『オンラインの場』づくり」ではニューノーマルを見据えた顧客とのオンラインの場づくりをテーマにしてきました。前回記事「顧客との『オンラインの場』づくり(3)合意に必要な3つの要素を理解しよう」では、オンライン上における顧客との「合意の場」について解説しました。最終回となる今回は、顧客との「協働の場」を取り上げます。
顧客に対して「協働」という言葉を使うことに違和感がある読者もいるかもしれませんが、「協働型マーケティング」という言葉は以前から存在します。これは、売り手と買い手の協働によって製品・サービスの価値を創造することを指します。
たとえば、ペンキ屋の店員と、DIYにチャレンジしたい顧客がイメージする色をすり合わせる際に、パソコン画面を見ながら一緒に染料の調合を変えて色をつくっていくというのが典型例です。売り手・買い手の情報格差がなくなった昨今、売り手が買い手に向けて製品・サービスなどの提案をし、買い手に提案を受け入れてもらうという「操作型マーケティング」の範囲が狭まっています(※参照:『マーケティング戦略論―実践パラダイムの再構築』(上原征彦/有斐閣))。
このような環境において、売り手は顧客と一緒に創造する協働関係をつくることが極めて重要であるといえます。一見すると対面で膝を突き合わせて会話をしたほうが顧客との距離を縮められそうですが、実は、オンラインでのコミュニケーションにより協働を行いやすくなる例もあります。