接戦を振り返り、「勝ちパターン」を構築する
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高橋 私がおすすめしているのが、「接戦」を振り返って「勝ちパターン」をつくることです。アポイント獲得や案件化のタイミング、フィールドセールスであればクローズ・失注のタイミングなど……商談のターニングポイントに注目をすると、お客様の「心が動いた瞬間」を見つけられると思っています。「会うかどうか迷ったけど、会おうと思った」「しばらく連絡をとっていなかったが、連絡してみた」など、心が動いた瞬間を的確にとらえて、言語化できるとよいですよね。
マネージャーの方々に自社の「勝ちパターン」を尋ねると、「お客様との信頼関係を築くことです」と、ざっくりとした回答が返ってくるケースが多いように感じます。営業パーソンの大半はお客様との関係構築の重要性を理解しているかと思いますが、実際にうまくいっていないからこそ苦戦しているわけです。一度立ち止まって現状を言語化し、仮説を立てたのちにそれを確かめていく。こうした段階を踏んで「勝ちパターン」を構築していくことが重要であるように感じます。
茂野 SFAやMAなども同じように、「勝ちパターンをツールで自動化すること」を目的としています。人材育成の仕組みが浸透していない組織がセールス・イネーブルメントを導入してもうまくいかないように、勝ちパターンが確立されていない状態でツールを導入してもうまくいきません。ほかにも、高橋さんが見聞きした「ツールの導入を先行してしまったがゆえに失敗したパターン」はありますか?
高橋 いちばん耳にするのは「活用しきれなかった」パターンの失敗ですね。お客様に配信するメールにURLを挿入すると、そのリンク先が見られているのか否かがわかりますし、データも蓄積される。しかし、そうして蓄積されたデータがしっかりと活動に活かせているのか? と問われると、即答できる人は少ないと思っています。活用が促進されない理由のひとつは「活用することによって生じる利点が組織で共有されていない」点であるように思います。
SFAを例に挙げると、「データを入力することでよいことが起こる」以上に、「入力していないと怒られる」イメージが先行し、「やらされている感」が植え付けられてしまうケースを多く聞きます。しかし、SFAを活用することの利点のひとつに、「勝ちパターン」を検証できるという点が挙げられます。データを入力することによって、勝ちパターンが検証され、営業組織の「指針」が確立される。こうした利点が組織で認知し、意識されるとよいですよね。
一例ですが、当社のような無形商材型ビジネスにおける成約の「決め手」を探っていくと、「提案・見積もり」段階ではなく、「初回訪問~初期アクション」にポイントがあることが多いんです。これがSFAを用いて検証されることで、「時間をかけて提案書を作りこむよりも、初回訪問に向けたアクションに力を入れたほうが、より成約率が上がる」ことへの裏付けとなり、データ入力を徹底することのメリットを提示できます。
茂野 高橋さんが「接戦」に着目する理由は、「もっともよいインサイトが詰まっているから」でしょうか。
高橋 そうですね。とはいえ、営業という仕事は、相手の判断に基づいて動くにもかかわらず、相手が判断を下すまで、「いつ・どこで心が動いたか」がわからない。そこで、僕はよく「『心が動いた場面・タイミング』をお客様に尋ねましょう」とお伝えしています。
「なぜ、会ってくれましたか?」という聞き方をすると、「それっぽい」答えしか返ってきません。しかし、「『どの瞬間に』会いたいと思ってくれたのか」と尋ねると、「メール文章の〇〇にグッときて」ですとか、「インサイドセールスの印象がよかった」など、肝の部分を知れる場合が多いです。
「接戦」においては、それぞれ意味合いは異なりますが、勝ちパターンと負けパターンの両方が重要であると思っています。勝ちパターンは、接戦での勝利を振り返ることで作り上げていきますが、「同じ断られ方をしない」視点で考えると、負けパターンに目を向けて、「同じ負け方をしていないか」をマネージャーがチェックしていく必要があります。