営業活動でもっとも大きなダメージは「味方が敵になってしまう」こと
私は11年間ハウスメーカーに籍を置いていた。住宅営業は「クレーム産業」と言われることもある。
契約する家が完成していない状態で契約をするため、どうしてもトラブルになりやすいのだ。お客様は購入を検討する際、図面やパース図から完成形をイメージする。今はツールが進化しているため、かなりリアルにはなってきた。とはいえ、やはり現実とは異なる。どうしても「思っていたのと違う」といった話になる可能性は高い。
また、すでに建っている建売やマンションだとしても「住んでみたら違った」ということもよく起こる。とにかくクレームが常に起こる業界なのだ。私自身、いろいろなクレームを体験してきた。
- 営業担当者のケアレスミスに対するクレーム
- 明らかに値引きを目的としたクレーム
- 家族間、近所の人間関係から発生したクレーム
などなど。ときには「なんて理不尽なクレームなんだ!」と叫びたくなることもあったが、さまざまなクレームの中でもいちばん印象深かったのは「顧客を紹介してくれる最高のお客様」を「クレーム客」にしてしまったこと。このクレームによって当時、とてつもなく大きなダメージを負ったし、今でも心の傷は残っている。
このお客様との付き合いは長かった。モデルハウスでお会いしてから1年以上「お役立ち情報」を送り続け、ようやく商談がスタートした。ただ、最初は法律や相続の問題などで話が難航し、2年越しでやっと契約になったお客様だった。
時間はかかったものの、お互いに協力しあって問題解決をしてきたためお客様との絆は深まった。お客様は私のことを信頼してくれ、他社と見比べることなく契約してくれた。さらには「私の知人も家づくりを考えているので紹介しますね」と言ってくれる最高のお客様だったのだ。
しかし、そこに甘えがあった。「このお客様なら多少甘えても大丈夫だろう」といった気持ちがあったことは否定できない。契約後、知らず知らずのうちに接触回数が減り、ほかのスタッフに任せるようになっていた。そして空いた時間で、これから契約になる見込みのお客様を優先させるようになっていたのだ。