リモートマネジメントに必要なコミュニケーション設計
下平(PLI) 御社は社内のやりとりも完全にオンライン化されたとのことですが、メンバーとコミュニケーションをとる際に、マネージャーの立場で意識していることはありますか?
原(Salesforce) リモートワークはメンバーが孤立しやすいですから、メンバー同士やメンバーとマネージャーの接点を増やすことに心を砕いています。これまでも週に1度、30分間の1on1ミーティングは設けていたのですが、数字の話も行うカチッとしたものでした。今は同じ1on1でもアイスブレイクをしっかり行って互いの健康状態も確認するなど、メンバーの心をほぐすコミュニケーションに重きを置いています。ほかにも、インサイドセールスの部門では定期的に自由参加で業務について相談できる、よろず相談会の時間を設けており、創意工夫しながら働きやすさを追求しています。
下平(PLI) 温かみのあるコミュニケーションは大事ですね。困っていることはありませんか?
原(Salesforce) 嬉しい悲鳴ではありますが、メンバーから頻繁に声をかけられるようになったため、オフィスにいたときよりも忙しくなりました(笑)。むしろ、オンラインになってからコミュニケーション頻度を高めたことで、メンバーの悩みや課題の解像度が上がり、適切なアドバイスをできるようになりました。
河村(PLI) 御社は自社の提供するSales Techをフル活用して堅固な基盤を築きつつ、人間的なつながりというソフト面の整備もカバーされていますよね。
原(Salesforce) Sales Techをマネジメントに活かせていないと悩むマネージャーの方は、重要な顧客や商談の条件を徹底的に洗い出すことから始めると良いかもしれません。これまではマネージャー自身が暗黙知として感じていた基準を、より具体的、定性的、定量的に明文化した上でSales Techや戦略に落とし込めば、リモート下でもメンバーの足並みが揃って最良の動きをとれると考えています。
下平(PLI) ものさしが合っていなければ、同じデータを見ても違う解釈が生まれてしまうため、せっかくのリソースを活かせませんよね。SFAを活用し始めた営業組織が、今後さらなる高度化や効率化を目指してAI活用を見据えるにあたっても、重要な顧客や商談の条件の認識合わせは不可欠だと思います。しかし、重要な顧客や商談条件の設計は実は容易ではなく、たとえば取引高や商談金額が大きいことだけで判断できるような単純な話ではありませんよね。自社にとって何が重要なのかを測ることができるものさしを持ち、マネージャーとメンバーが共通の見方をすることが大切です。それらが設計できて初めて、AIの学習精度が高まり、異常値にも気づきやすくなりそうです。
坂本(Salesforce) 当社では、セールス・イネーブルメントという部門があります。活躍しているメンバーがどんな行動をしているのかインタビューして体系化し、新しいメンバーやパフォーマンスの上がらないメンバーのトレーニングに活用しています。マネージャー同士のミーティングにセールス・イネーブルメントのメンバーが同席し、目指すべきビジョンを実現するためのトレーニングコンテンツを作成してくれることが、営業としてはありがたいです。
河村(PL) 素晴らしいお取り組みですね。よく「リモートになって部下が何をやっているかわからない」というマネージャーがいますが、それはビジョンと同様に「組織の最終的な成果」に対して、マネージャー自身が実感・納得できる有効なKPIを設定できていないからです。マネージャーはどうしても達成すべき売上やメンバーの活動件数など、会社から与えられた目の前のKPIにとらわれがちですが、今後は営業プロセスや自組織全体を見渡して「何をしたらどう成果が出るか」というトレーサビリティをデザインする力が特に問われていくと思います。
原(Salesforce) 私からも営業トレーニング・研修のプロであるパーソルラーニングさんに人材育成について質問させてください。当社もそうですが、コロナ禍で研修のやり方や内容を変更するケースが増えていると思います。各社どのように対応されているのでしょうか。
下平(PLI) 外部の会場を使った研修などは延期されていることが多いです。あるいは急遽オンライン研修に切り替えることを支援させていただいてもいます。コミュニケーションの手段は変わっても、提供するべき本質は変わらないと思います。研修で学んだことが日々の現場で役に立たず、勉強にとどまってしまう傾向はオンラインのほうが強いように思えるかもしれませんが、それも設計次第です。
学びを実業務で活かせるように、これからの研修は「ラーニングジャーニー」という流れで捉えており、ラーニングコーディネーターと呼ばれる専任者がインプットとアウトプットをうまく織り交ぜたジャーニーを設計し、場を盛り上げながら実践的に学びを身につけられるものを志向しています。
一方で、緊急事態宣言解除後、お客様から既存の集合研修を要望される声も聞きますので、多様なニーズに応えられるようにしていきます。将来的にはSales Techとラーニングジャーニーを有機的にリンクさせることで、1人ひとりの日々の活動や課題に合わせたジャーニー設計ができ、その研修が実際の業績や顧客関係性の向上につながっているかを検証できると良いかもしれませんね。
坂本(Salesforce) まさに当社にも教育マネジメントのソリューションがあり、SFAと組み合わせて営業成績との相関を見られるようになってきています。
下平(PLI) 相関の見方にも留意すべきですよね。たとえば、「デモの回数が多い営業は成績が良い」という結果が出たからと言って、むやみにデモをする営業が現れることのないようにしなければなりません。営業が取り組んだことによって、「購買プロセスを前に進めたのか」「顧客との関係性が深まったのか」といったばらつきのない共通認識となるような的確な基準を設けることが相関を見るときの前提となりますね。
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