営業は「ロジック馬鹿」になりやすい!?
飯髙 AIの進化も凄まじく、営業という職種も大きな転換点を迎えています。「営業の説明を聞くくらいなら、AIで調べるからいいよ」という買い手も増えています。
ただ、すべてをAIに任せて自動化すればいいかと言うと、僕はそうではないと思っていて。萩坂さんは、昨今の「営業不要論」についてどう考えていますか?
萩坂 大否定派です。そういう世界では、機能的な価値でしか差別化はされないじゃないですか。でも、機能的な差はもう生まれづらいわけで、営業活動ではハートフルな部分や“ナラティブ”を重視しないといけないのではないかと考えてますね。
飯髙 便利になる部分は任せていけば良いと思うんですが、「それで人は幸せになるの?」とも思いますし、決断をするのは人間という点は変わらないでしょうね。買い手の最後の決断って、実は非合理だったりもしますしね。「この人を信頼できるから」とか。
株式会社GiftX 代表取締役 Co-Founder 飯髙悠太さん
株式会社ベーシック執行役員、株式会社ホットリンク執行役員CMOを経て2022年6月「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに(株)GiftXを創業し、「おもいが伝わる。ほしいを贈れる」選び直せるギフト「GIFTFUL」。「最高のギフト体験を、最小の工数で」をテーマに「GIFTFUL for business」運営。企業のアドバイザーやマーケティング支援も実施。著書に『僕らはSNSでモノを買う』『SNSマーケティング7つの鉄則』 『BtoBマーケティングの基礎知識』など。
萩坂 そうですよね。AIでいろいろなことが調べやすくなった反動で、事前準備では取得できない、会って初めて教えていただける「クローズドな情報」の価値が高まっているとも感じていて。たとえば、担当者の方の経験など、そういったリアルな話はネットにはありません。ネットにある成功事例ではなく、現場での失敗や葛藤の経験こそが顧客の決断に大きく影響を与えることもあるわけです。
飯髙 そうなんですよね。今後変わっていくこともあると思いますが、現時点では、AIが持っている情報ってインターネット上のものが多い。そして、インターネットの情報って本音もあれば建前もあるじゃないですか(笑)。
萩坂 いや、もう建前8割ですよね(笑)。
飯髙 対面の重要性が高まり、小話を持って相手先に出向くことができるルートセールス的な役割が求められるようになるかもしれませんね。
萩坂さんはこれからはどんな営業が「選ばれる」ようになると思いますか。
萩坂 「ハートがある人」。自分のキャラクターや人間性を、感情的かつ適切な言葉でお伝えできることが重要になるはずです。そのためには、いろいろな経験が必要ですから、体験が自分の付加価値になっていくと思います。
一方で、この「感性」の評価はとても難しい。どうしても営業は売上やアクションなどの定量評価が重視されやすく、あえて言うと「ロジック馬鹿」になってしまうんです。

飯髙 ロジック馬鹿! すごい言葉です(笑)。
萩坂 ロジックは大切なのですが、それだけを行動指針にしているとつまらなくなっていくんですよね。とはいえ、育成観点ではわかりやすい答えが必要ですから、新人にもある程度まではロジックを教える。でも、ある程度できるようになったところで「感性が大事だ」と伝えることになります。
ただ、これだと「マネージャーの言ってることが変わった!」と混乱するメンバーも出てきてしまうかもしれません。個人的には、お客様や現場、双方の心の満足度を重視する「感性経営」をしていきたい。でもそれは昨今の効率化と非常に相性が悪く、悩ましいところです。
「あえて寄り道できる」営業が求められる
飯髙 件数やロジックで管理するのはわかりやすいですし、競争もさせやすいですからね。一定必要だとも思いますが、その人らしさみたいなものを大切にしたいですよね。
萩坂 そういう営業マネージャーが増えれば、日本の営業はさらに良くなると思うんですよ。選ばれる営業を育てるためには、「1人ひとりの感性」を「正」としてあげる組織のリーダーが必要で。

飯髙 論理的に考えすぎると、枠組みを超えていくような提案がなかなか生まれづらくなりますよね。潜在的な課題や目標について会話ができていないと言うか。
萩坂 まさに。売り手と買い手の双方が、表面化している課題だけで話を終わらせようとしている。最短距離で課題が解決できる営業は一見良さそうなんですけど、周辺情報をまったく得られないんですよね。
aという事象に対して、遠回りしながら顧客と会話することで、bやcの情報が見えてきて、一番の課題はdだった、ということが見えてくることもある。「あえて寄り道できる」というのも、これからの営業に求められるスキルかもしれません。
