セールスフォース・ジャパン(以下、Salesforce)は、富士通が、顧客データ活用の高度化と顧客体験の向上を目的に、Salesforceの「Marketing Cloud Next」を、富士通Salesforceサポートデスクに導入したことを発表した。
今回の導入は、これまで富士通が取り組んできたEinstein for Service、Einstein for Marketing、Agentforce for ServiceといったAI活用の延長線上に位置づけられるもので、マーケティング領域におけるAIエージェントの適用をさらに拡大するものになる。同社はさらに、Tableau NextとRevenue Cloudも同時に採用し、データに基づく迅速な意思決定と収益プロセスの最適化を目指す。

採用の背景
富士通は、Salesforceサポートデスクを通じて多くの顧客からの問い合わせに対応している。2025年1月にはSalesforceのAIエージェントプラットフォームであるAgentforceを導入し、富士通お客様総合センターで行ったパイロット検証では、平均応答時間をチャットBotと比較して71.5%削減した。またSalesforce製品サポートでは問い合わせの15%をAIエージェントが対応することを目指すなど、業務効率の改善と人的リソースのより高度な顧客対応へのシフトという成果を上げてきた。パイロット検証を経て、2025年7月には富士通お客様総合センターの電話回線を廃止し、その受け皿のひとつとしてAgentforceが稼働している。
一方で、カスタマーサクセスに直結するプロアクティブな情報提供や新しい製品・機能の説明などの領域では、顧客ごとに最適化されたパーソナライズ対応の強化が求められており、実現に向けて次の課題を抱えていた。
- データ活用の制約:CRMの商談・問い合わせデータに限られ、契約情報やアンケートなど周辺システムの顧客データを十分に活用できず、限られたデータに基づく対応にとどまっていた。
- 業務効率化の課題:パーソナライズされた顧客対応を実現するにはコンテンツ量の増加が不可欠だったが、限られた人的リソースではさまざまなセグメント作成、複数パターンでのコンテンツ作成、キャンペーンレビューなどが十分に対応できていなかった。
こうした課題を解決するため、富士通は富士通SalesforceサポートデスクにMarketing Cloud Nextを導入した。フルファネル型AIマーケティングプラットフォームであるMarketing Cloud Nextは、Salesforce Platform上にネイティブに構築されており、実用的なデータ、部門をまたいだワークフロー、そしてカスタマーファネル全体に組み込まれた自律型AIエージェントによるエージェンティックマーケティングを可能にする。エージェンティックマーケティングは、「従業員体験の革新」と「顧客体験の革新」を可能にする2種類のAIエージェントを活用することで、コンテキストを理解したAIエージェントが就業時間の制約なく24時間365日稼働する。
富士通が本サービスを導入する決め手となったポイントは次のとおり。
- データ統合とパーソナライズ:Data Cloudと連携し、契約情報やアンケート結果を含む周辺システムのデータを統合する。これにより、CRM外のデータを含む顧客ごとの利用状況に基づいたメール配信が可能となり、より高度にパーソナライズされた顧客体験を提供する。
- AIによる業務効率化:Agentforce for MarketingやEinsteinを活用し、キャンペーンやコンテンツの自動生成する。さらに予測AIが配信頻度・送信時間を最適化し、Tableau Nextで成果を可視化することで、効率と効果の両立を図る。
- AIエージェント同士が連携し自律的に対応:Agentforce for ServiceとAgentforce for MarketingのAIエージェントを連携させることで、契約更新のリマインドからQA対応、契約手続きのサポートまでAIエージェントが自律的に対応する。対応が難しいケースは担当者にシームレスに引き継がれるため、業務効率化と顧客満足度の向上を同時に実現することが可能になる。
さらに、富士通ではこれまでマニュアルで行っていたライセンスや契約の管理業務を、Revenue Cloudによって一括管理し、2026年4月までに完全に廃止する予定である。契約から請求、収益管理までを自動化・一元化することで、透明性と効率性を飛躍的に高める取り組みとして位置づけられている。
導入により期待される効果
Marketing Cloud Nextの導入により、富士通では業務効率化と顧客体験の質的向上を見込んでいる。これまで工数を要していたセグメント作成はAIによる自動化によって完了できるようになり、コンテンツ修正やレビューにかかる平均作業時間も83%削減されている。これにより、担当者は日常的な定型業務から解放され、より付加価値の高い業務へ注力できるようになる。また、契約データや利用状況といったさまざまな顧客データを活用することで、顧客向けの情報提供の内容を一律化するのではなく、それぞれの顧客に最適化したパーソナライズを実現できるようになる。
富士通 クラウド&ビジネスアプリケーション事業本部 本部長 桐生卓氏のコメント
富士通は、Agentforce for Serviceの導入に加え、さらなるAIエージェントの活用による顧客体験の向上を目指し、Marketing Cloud Nextを導入します。エージェンティックマーケティングによって顧客一人ひとりにパーソナライズされた情報提供を実現したその先には、富士通が提供する様々なAIエージェントを連携させ、マルチAIエージェントにより課題解決を図ります。これらの自社実践で得られた知見を活かし、ビジネスパートナーとしてお客様の企業変革に貢献してまいります。
Salesforce 専務執行役員 製品統括本部 統括本部長 三戸篤氏のコメント
このたび、富士通様にSalesforceサポートデスクでMarketing Cloud Nextをご活用いただけることを大変光栄に思います。富士通様は、すでにAgentforceを通じて先進的にAIを業務に取り入れておられ、今回の導入はその取り組みをさらに発展させ、エージェンティックマーケティングを本格的に実現する大きな一歩となります。今後もSalesforceは、富士通様の継続的なイノベーションを支え、持続的な成長に貢献してまいります。