前回(第1回)記事
多くの営業を悩ませる「商談後ノーレス」
「商談後に案件が進まない」という状況は多くの営業担当者が抱える共通の悩みです。たとえば、商談後にお礼と共に資料を送ったものの返事がこない。フォローの電話をかけても留守電につながるだけ。気まずさを感じつつ「検討状況はいかがでしょうか?」と再度メールを送っても、返事はない──。
このような状況を 私は「商談後ノーレス」 と呼んでいます。ノーレス(no-response)とは、文字どおり「返事や反応がない」ことを指し、商談中に手応えを感じていたにもかかわらず、突然沈黙が続いてしまう状態です。この状態に陥ることは営業担当者にとって大きなストレスです。相手の反応を待つことしかできない無力感が、営業のモチベーションを大きく削いでしまっているのではないでしょうか。
「商談後ノーレス」が起こる3つの原因
「商談後ノーレス」が起こる背景には、“進め方の設計不足”があります。営業担当者は、「どうテンポよく話すか」「どうスマートに魅力を伝えられるか」など自身の商談の進め方に注力している一方、「どのように顧客と商談を一緒に進めるか」の設計ができていないケースが多いです。
営業担当者が一方的に話を進め、顧客はただ“聞いて判断する側”にとどまってしまっている。このようなかたちでは、商談が途中で止まってしまうのも無理はありません。商談停滞を引き起こす3つの原因を見ていきましょう。
原因1:顧客の「目的」や「意志」が明確になっていない
商談が停滞する大きな原因のひとつは、顧客が提案内容を“自分ごと”として捉えられていないことです。営業担当者が一方的に説明や提案をしても、顧客の中で「なぜこれを導入するのか」「何を実現したいのか」が曖昧なままでは、意思決定に向けた動きは生まれません。
重要なのは、顧客が自身の課題や目指す状態を言語化し、「これは自分たちのプロジェクトだ」と腹落ちすることです。たとえば、「次回までに私たちで課題を整理してみます」「社内で◯◯をヒアリングしてきますね」といった、自発的な動きが生まれる状態をつくること。顧客の意志を引き出し、主役になってもらう対話の設計が求められます。
原因2:共通の基準や評価軸が共有されていない
営業担当者と顧客の間で「共通の基準や評価軸」が設定されていないことも、大きな要因です。顧客にとって、契約はゴールではありません。本当に求めているものは、導入後の成果やビジネスインパクトです。しかし、その指標や評価基準が明確に共有されていないと、提案内容が価値あるものかどうか判断できません。結果として、顧客の意思決定が遅れ、商談が停滞してしまうのです。顧客と共通の基準を持つ視点が必要です。
原因3:顧客が“動ける”構造が用意されていない
もうひとつの停滞要因は、商談プロセスの中に、顧客が具体的に関与できる「仕組み」や「手順」が欠けていることです。営業担当者が提案を一方的に提示するだけでは、顧客は受け身になり、行動にはつながりません。
たとえば、「一緒に理想像を言語化するワーク」や「現状課題の優先順位を整理するシート」など、顧客自身が手を動かし、考えながら進められるような設計が重要です。こうした顧客を巻き込みながら進行する視点を持つことで、顧客の関心や当事者意識が高まり、商談が前に進みやすくなります。
営業担当者がどれだけ優れた提案を行っても、顧客がプロセスに参加できる仕組みがなければ、その提案は一方通行に終わります。 つまり、「顧客を主役に据える視点」「共通の基準を持つ視点」「顧客を巻き込みながら進行する視点」 が欠けていることで、商談は停滞し、「商談後ノーレス」に陥ってしまうのです。
これらの視点を取り入れ、商談プロセス全体を再設計することができれば、停滞を打破し、顧客との共創によって商談を前に進めることが可能です。