「付加価値」創出の鍵を握る、生成AI活用のメリットとは
第1回で述べたとおり、「付加価値」は製品・サービスの質や機能を向上させるだけでなく、顧客企業の生産性、財務改善、CSR向上、コスト削減、リスク低減、自社提供価値向上の6つの要素を軸に、顧客の事業成果へ直接貢献します。
しかし、この「付加価値」を再現性を持って継続的に生み出すには、従来型の営業アプローチだけでは難航してしまうでしょう。市場や顧客の変化のスピードが増す現代では、意思決定サイクルの短縮や潜在ニーズの先読み、精緻なアップセル/クロスセル、提案の高度化などが求められるためです。
こうした状況で「生成AI」が果たす役割は極めて大きいと言えます。生成AI(Generative AI)は、顧客企業ごとの属性情報、業界レポート、商談履歴、さらにはSNS上の発言といった多元的データを統合/分析し、インサイトや提案候補をダイナミックに創出します。これにより、営業担当者が手作業で行っていたリサーチ業務が大幅に効率化されると同時に、顧客と最初の接点を持つ段階から的を射た問題提起を行うことが可能になるのです。
こうした顧客理解は、従来は営業担当者個人の経験や勘に依存していました。しかしこれからは、生成AIを活用することで多面的な情報を瞬時に解析し、顧客の潜在課題や業界トレンドを可視化できます。たとえば、次のようなプロンプトを活用できます。
<プロンプト例>
コンサルティングセールスでは、信頼を深めることが大切です。信頼を深めることは、顧客の感情的な悩みへ真摯に共感できることを意味します。そこで、顧客の苦しみや悩みを事前に予測しておきたいと思います。
- 会社名、顧客の特徴:A社、老舗の中堅企業
- 業種:工具メーカー
- 従業員数:100名
- 部署:代表者
- 役職:代表取締役
- 担当者業務:代表取締役
- 業務:経営判断
上記の顧客の恐怖や苦しみや悲しみと、そこに向き合う姿勢や思いを構成してください。
<回答例>
- (1)お客様が苦しみ、悲しんでいそうなこと/営業担当者が共感する姿勢や思い
- (2)お客様が苦しみ、悲しんでいそうなこと/営業担当者が共感する姿勢や思い
- (3)お客様が苦しみ、悲しんでいそうなこと/営業担当者が共感する姿勢や思い
営業担当者個人の価値観も踏まえながら、顧客の潜在課題とそれらに対する共感を分析/整理することで、顧客のインサイトに対する仮説が圧倒的に深まります。見込み客の温度感や購買タイミングを予測/把握することで優先度の高い顧客へ即時にアプローチできるため、成果創出のサイクルが加速すると同時に、市場環境の変化にも柔軟に対応しやすくなります。
加えて、自動生成される提案書のドラフトやメールのテンプレートでは、顧客固有の関心事に寄り添った内容を提示できます。たとえば「この提案が顧客にとってどれくらいの価値を提供できるか、フェルミ推定も入れて記述してください」のように方向性を出すだけで、新人営業であっても、なぜこの提案が顧客の成長につながるのか納得感のあるかたちで示すことができます。
このようなプロンプトは、構造さえ理解すればどのような場面でも応用できます。従来は数時間~数日を要していた顧客情報の取得から提案までのプロセスを短縮することで、顧客に対して「圧倒的な対応スピード」という価値も提供できるようになるでしょう。