とにかく「手を抜かない」トップ営業の人たち
これまで20年以上、多くの営業パーソンと接してきました。その中でわかったのは、「トップ営業」と呼ばれる人たちが、特別なセンスや才能を持っているわけではないことです。むしろ、トップ営業の特徴は、「誰でもできる基本的なこと」を驚くほど高い精度で実行している点にあります。
もちろん、センスや才能が成果に影響を与えることもありますし、一見するとトップ営業は属人的な方法で成果を出しているように見えるかもしれません。しかし実際は、標準的なプロセスを忠実に守っている場合がほとんどなのです。
トップ営業は、商談のアポイントを確実に取り、ドタキャンを防ぎ、面会時には次のアクションを合意するなど、基本的な営業活動を徹底しています。特別な能力を使っているわけではなく、基本をひとつも漏らさず実行しているだけです。それにもかかわらず、残業は少なく、効率的に成果を上げているのです。
トップ営業の行動を観察すると、営業活動においては、やるべきことや手順が決まっており、それを確実に実行することが成功の鍵であることがはっきりわかります。営業の成果は能力に依存するのではなく、習慣に依存するのです。
属人化しているのは「非」トップ営業である
トップ営業は「当たり前のこと」を正確に実行していますが、そうでない営業部員には、営業活動に抜け漏れややり忘れが多いという傾向があります。「営業の属人化」という言葉を耳にすることがありますが、これはトップ営業が属人化しているというより、むしろそうでない営業部員の活動が属人的になっているのではないでしょうか。
トップ営業が実践する営業プロセスを自社の「営業活動の標準形」として整備し、全営業部員が確実に実行できる仕組みを構築することは十分可能です。この仕組みを導入することで、営業組織全体の属人化を排除し、トップ営業の手法を模倣したような営業部員を増やし、組織全体としての成果を向上させることができるでしょう。
さらに、新人や若手営業部員も、標準化されたプロセスに基づいて営業活動を実践することで、実務を通じて学び、着実に成長することが可能です。お客さまと接する経験を積む中で、自然と営業スキルが磨かれていきます。
次項から、トップ営業の習慣を組織全体に定着させるための「営業活動の標準化」の方法を解説します。