三河屋のサブちゃんに学ぶ? データに基づく「One to Oneコミュニケーション」
既存顧客への営業活動の重要性が認識される中、その成功の鍵となるのが「データに基づいたOne to Oneコミュニケーション」だ。岩熊氏はこの概念を説明するために、国民的人気アニメ「サザエさん」に登場する三河屋の営業手法を例に挙げた。
「既存顧客営業のもっとも良い例としていつも皆さんにご紹介しているのが、マンガやアニメでおなじみのサザエさんで、勝手口から御用聞きにくる『三河屋のサブちゃん』です」(岩熊氏)
三河屋のサブちゃんは既存顧客の家庭の状況を把握し、必要なタイミングで適切な商品を提案する。たとえば、運動会の前日に醤油を持参したり、暑い日にビールの在庫が切れそうなタイミングで訪問したりする。岩熊氏はこの営業手法について、次のように分析する。
「サブちゃんはただルートセールスをしているわけではなく、間もなく醤油やビールがなくなって困るかもしれないという状況に先回りして、その家が今いちばん欲しいものをいちばん欲しいタイミングで売りに行っているのです」(岩熊氏)
この手法の優れている点は、顧客にとって最適なタイミングで最適な提案をすることで圧倒的な信頼関係を醸成し、同時に高い受注率を実現していることだ。さらに、営業側にとっても効率的な手法であると岩熊氏は指摘する。
「営業する側としてもコストパフォーマンスが良いんです。すべての顧客に『この商品はいりませんか』とアプローチして回る必要がなく、そのうえ基本的に売れますから、受注率100%という非常に顧客獲得コストが低く効率の高い営業活動だと言えるのです」(岩熊氏)
しかし、現実の営業活動においてこのような「サブちゃん営業」を実現するためには、顧客に関する詳細なデータが必要となる。岩熊氏は、現代の営業活動に置き換えた例として次のようなケースを挙げた。
「たとえば、ID課金をするサービスを契約しているお客様が、既存契約ID数の9割以上をきちんと使ってくれていて、さらに、他社の導入事例や成功事例をオウンドメディアで読んでいるとします。このお客様に対して、導入事例で紹介された上位プランと共に追加のID購入を提案すれば、高い確率で受注できるでしょう。的確な情報を把握できていれば、上位プランへのアップセルや追加IDの提案など、適切なタイミングで効果的な営業活動を行うことができます」(岩熊氏)
一方、顧客との接点が減少していたり、サービスの利用率が低下していたりする場合は、顧客離反のリスクを早期に察知し、適切な対応を取ることが可能となる。
このようにデータに基づいたOne to Oneコミュニケーションを実現するためには、顧客に関するさまざまなデータを統合し、分析する必要がある。しかし、従来のCRMシステムは見込み客の案件化に特化しており、既存顧客に対する包括的なデータ管理と分析は困難であった。
そこで岩熊氏が提案するのが、次のページで紹介する「SuccessHub」だ。