全体最適の施策は、営業組織からは「支配的」に映る?
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セールスイネーブルメントでの取り組みテーマを決定し、アプローチ方法を検討した次のステップが、「社内推進」です。セールスイネーブルメント施策をどのアプローチで届けていくかは非常に重要です。
あらためての解説になりますが、これらはナレッジワークの考えるセールスイネーブルメントの対象領域を示したものです。横軸に「できるようになる(CAN)」「やるべきことがわかる(MUST)」、縦軸に「成果視点(業務視点)」「能力視点(人材視点)」とし、セールスイネーブルメントで行うべき要素/対象領域を表現しています。それぞれの領域についてもかんたんに紹介します。
- ワーク領域<成果視点(業務視点)×やるべきことがわかる>:営業プロセスの最適化
- ナレッジ領域<成果視点(業務視点)×できるようになる>:営業ナレッジの展開
- ピープル領域<人材視点(能力視点)×やるべきことがわかる>:営業スキルの可視化
- ラーニング領域<人材視点(能力視点)×やるべきことがわかる>:営業向けの学習プログラムの提供
セールスイネーブルメントにおけるこれらの4つの領域には次のような特徴があります。
横軸に「営業現場からの受容性」、縦軸に「営業活動での即効性」と置いており、各施策が営業現場にとってどのように捉えられやすいかを示しています。
受容性の観点については、右側のワーク領域やピープル領域のような「組織の全体最適を標準化していく取り組み」は、組織には必要ながらも営業現場からは支配的な印象をもたれることが多いです。逆に、左側のナレッジ領域、ラーニング領域のような「営業現場を支援する取り組み」は、営業現場から営業活動を後押ししてくれている印象がもたれやすい特徴があります。
また、即効性の観点については、ナレッジ領域やワーク領域のような「業務に直接的に影響する取り組み」は、営業人材のうち誰が打席に立っても一定の品質を担保できることにつながるため、短期的な成果に結びつきやすいです。一方、ラーニング領域やピープル領域は業務に間接的に影響する(営業人材に影響を与える)取り組みですから、重要な取り組みながらも成果創出の観点で時間がかかる特徴があります。
実際、私が日々お客様とご一緒する中で、よくあるのは「真っ先に人材育成領域から実施するケース」です。たとえば、4つの領域に当てはめると営業研修に代表されるようなラーニング領域、また、営業人材のスキルをスキルアセスメントで測定するようなピープル領域が該当します。当然、営業人材が「できるようになる」ことは必要なことですから、これらの手段もセールスイネーブルメントにおいて重要なアプローチですが、それ以外のアプローチについても検討したうえで選択するほうが良いと考えています。
4つの領域はどのアプローチが良くて、どのアプローチが良くないというものではありません。会社や営業組織が置かれている状況を踏まえ、取捨選択やアプローチの組み合わせていきましょう。セールスイネーブルメントテーマの優先度に加え、短期/中長期などの時間軸を踏まえたうえで、どの領域のセールスイネーブルメントの仕組みを設計/運用していくかを検討する必要があります。