「上振れ」は良いことか? 経営の高度化を目指す
2023年11月にXactly Forecastingを導入したNECソリューションイノベータ。導入当時、同社はどのような課題を抱えていたのか。営業機能の事業統括を担う宮永氏は「当時の案件管理は確度や受注/失注の把握に留まっていた」と語る。そのため成果を正確に予測できず、期末になっても上振れが続いていたという。先を見据えて次の施策を考える「経営の高度化」を実現するため、フォーキャスト(受注予測)の改革に着手した。
首都圏の営業部および事業戦略グループを管轄する河村氏によれば、かつての営業部には、経験と勘による営業活動や「下振れはいけないが、上振れは良い」という文化が存在したという。そのため「頑張ったから成約できた」など定性的な結果報告が多く、データの集計方法や用語の定義にも個人差が生じ、営業プロセスのどこに課題があるかわからない状態だった。
打開策を探していたそのとき、Xactly Forecastingと出会う。「まさに今欲しかったものだ、と感銘を受けました」と河村氏。すぐさま宮永氏と話し合い、導入に向けて舵を切った。
さまざまなツールがあるなかで、宮永氏は「経営判断を下すために正確な情報を得たい」という経営層のニーズを満たすだけでなく、現場にメリットがないとツールは定着しないだろうと考えていた。その点、Xactly Forecastingは受注予測に留まらず、顧客に対するアクションの効果測定や商談のボトルネックの発掘など、現場でも活用されるイメージが湧いた。それが導入の決め手だった。
約130時間/月を削減し、営業活動や施策立案に専念
20以上ある営業組織のうち、関東甲信越営業部でXactly Forecastingの利用を開始した。もともと同組織では、マネージャー層が商談の進捗や着地予測の調整を行う月次会議を行っていたが、定性的な報告やデータ集計のばらつきにより、現状を正確に把握できない状態だったという。
そこで、営業部長主導のもと報告用のExcelシートを作成し、週次会議を開始。データに基づき週ごとに進捗を確認する体制へシフトしたものの、依然として、SalesforceのデータをExcelへ落とし込む手間や、報告内容の個人差が生じていた。この課題をXactly Forecastingで解決したのだ。
現在の週次会議では、資料の代わりにXactly Forecastingの「フォーキャスト」と「パイプライン管理」を活用している。フォーキャストでは、前週からの差異と今後の成果予測を個人別に報告する。そしてパイプライン管理では、商談スコア(受注確度をスコアリングしたもの)や商談金額を見ながら、次にとるべきアクションを検討する。Xactly Forecastingの項目に従い順を追って報告することで、報告内容の個人差も解消したという。
また、部長以上のマネジメント層が組織全体の状況を確認する際もXactly Forecastingを活用している。たとえば「本来、受注確度は“成約できるか否か”で判断されるべき」(宮永氏)だが、現場の営業は「今期の予算達成につながるか否か」で受注確度を判断してしまうことがある。受注確度が誤っていれば、当然、受注予測もズレが生じる。以前は商談1件1件のデータを調べ、営業担当にヒアリングして、受注確度が正しいかどうか確認する必要があった。しかし、Xactly Forecasting導入後は、商談データさえ入力すれば自動で受注確度がスコアリングされる。受注予測の精度を高めるうえで非常に有効だった。
Xactly Forecastingによる成果のひとつが「フォーキャストの高度化」だ。以前は幹部層が前期/今期のパイプラインを比較し、フォーキャストを予測していた。現在はXactly Forecastingより、パイプラインに応じた複数のフォーキャストパターンが提供され、営業部からより正確なフォーキャストが報告されるようになった。
もうひとつの成果が「マネジメントの高度化」だ。商談のボトルネックを早期発見できることで、「頑張れ」と叱咤激励する抽象的な指導から、次にとるべきアクションを考える具体的な指導に変わった。
受注予測の実務を担ってきた細川氏によると、同社は2021年にSalesforceによる案件管理をスタートし、案件情報と営業活動のデータ管理を一元化した。データの蓄積が進む一方、「データをどのように分析すれば、生産性の向上や成果に結びつくアクションがわかるのか」と課題を感じていたという。Xactly Forecastingにより、営業活動と成果を結びつけて分析できるようになったことで、経営およびマネジメントの高度化が実現した。
さらに、「データの入力率」も向上した。前週からの商談スコアの変動を見れば「入力していない」ことが可視化されるため、自然と、「入力しなければいけない」という意識が現場に芽生えた。結果としてこれまで“隠れていた”案件が明らかになった。たとえば、事業に大きな影響を与え得る1,000万以上の規模の案件について、活動データの入力率が50%から80%へ上がったという。
加えて、営業生産性も向上した。案件情報は全営業部で約2万件、関東甲信越営業部だけでも数千件が登録されている。膨大な量から目当てのデータを抽出してExcelに落とし込み、分析するのは非常に時間のかかる作業だ。しかし、今はXactly Forecastingにログインするだけで、個人/組織の商談進捗や受注予測をリアルタイムで把握できる。関東甲信越営業部(20名)全体で約130時間/月、データ抽出や資料作成にかけていた時間を削減し、商談など本質的な営業活動に時間を充てられるようになった。
「もっと使ってみたい」 導入1ヵ月で営業現場に定着
新たなツール導入には苦労がつきものだが「正直に言うと、壁はありませんでした」と河村氏。導入に際して現場の営業担当が作業する必要がなく、直感的な操作性により、年齢層が高いベテランぞろいの組織でもすぐに使いこなすことができた。導入から1ヵ月が経つころには、あたりまえのように週次会議で活用されていたという。
同社もこれまでさまざまなツールを導入してきたが、大なり小なり壁はあった。たとえばSalesforceを導入した際は「自分たちを管理しようとしているのではないか」という声も上がった。
「Xactly Forecastingは、現場から『ほかの機能も使ってみたい』という声も出てきたほど。とても驚きましたね」(細川氏)
スムーズに導入できた背景には「正確な予測に重きを置く文化」も影響したと宮永氏は指摘する。しばしば、営業は「なんとしても予算を達成しよう」と思ってしまう。かつては同社でも、成約や予算達成といった結果中心のマネジメントが行われていた。しかし現在は、結果よりも「下振れ/上振れする理由をきちんと分析してほしい」と伝えている。こうした経営層からのメッセージとXactly Forecastingがマッチしたことで、現場にもすぐに受け入れられたのではないかと語る。
関東甲信越営業部での成果を踏まえ、今後はXactly Forecastingを全営業部へ展開する予定だ。宮永氏は、組織間の比較が可能になることで自部門の課題が明確になり、部門長による「部門経営の高度化」が起こることを期待しているという。
一方、全営業部へ展開する過程では新たな壁も生まれるだろうと河村氏は語る。
「関東甲信越営業部の場合、営業部長が経営層の意思をきちんと理解し、マネジメント体制にXactly Forecastingを取り入れました。これが現場への定着を左右したのは間違いありません。各営業部のリーダーが率先して変革に取り組むことが、全社展開を成功させる鍵となるでしょう」(河村氏)
河村氏の言葉を受けて、細川氏は「関東甲信越営業部をモデルケースに、Xactly Forecastingの成果を各部門長へ伝え、定着を支援していきたい」と今後の展望を語った。
「Xactly Forecastingにより、報告された受注予測を信じるか信じないかで悩まなくなりました。予測が信頼できると、次の施策を打つことに専念できます。ビジネスを加速させる経営体制を築くうえで、非常に大きな成果ですね。加えて、部門経営やマネジメントの高度化、受注予測の標準化は、新人営業の即戦力化や人材獲得の面でもアドバンテージとなるはずです。複雑性の増す時代、Xactly Forecastingはビジネスを良い方向へと導いてくれるツールと言えるでしょう」(宮永氏)
※役職名は取材当時(2024年2月)のものです。
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