現場からリーダーまで総勢260名の営業育成を担う
杉村(Xpotential) まず中田さんのお役割と、イネーブルメントに取り組むに至った経緯について教えてください。
中田(LINEヤフー) 前職はセブン&アイ・ホールディングスで店舗マネジメントやバイヤー業務に11年間携わり、2004年にLINEヤフー(当時 ヤフー)に入社しました。Yahoo!ショッピングの企画・営業、ヤフー広告の営業のチームリーダーなどを担当したのち人事部に移りました。そこから人材育成・組織開発に携わるようになり、現在はショッピング統括本部でセールス・イネーブルメントを推進しています。
中田 イネーブルメントの発端としては、私が人事部にいた2017年ごろ、事業拡大にともない契約社員が大量入社したタイミングで、当時の営業本部長から「営業の育成強化が必要だ」という話があり、育成チームがショッピング統括本部の中に立ち上がりました。今は「エデュケーションチーム」という名前で、リーダーの私を含めた専任がふたり、兼務ふたりを合わせた4名で活動しています。
エデュケーションチームの業務は、新卒研修や契約社員の育成からスタートしました。研修後に営業現場に配属されてから3ヵ月間の営業成績の達成率を数値目標として設定し、定性的なところでは、知識面のスキルやロープレでのヒアリング力のスキルを点数化することで達成度合いを測っています。
最近は既存社員、OJT担当、営業リーダーなどにも育成対象を広げており、総勢約260名の営業の育成を担当しています。
杉村 OJT担当やリーダーなど「教える側」も育成しているとは、かなり徹底されていますね。4人で260名の育成を担当するのはなかなか大変そうだなと想像します。
中田 基本的にはSalesforceのTrailheadを活用してeラーニング形式で学習コンテンツを提供しており、効率化しています。
また、ロールプレイングも以前はエデュケーションチームがメンバー1人ひとりに実施していたのですが、さすがに負担も大きいため、いくつかのパターンで「ロープレの型」をつくりました。それをもとに営業リーダーたちが適切なフィードバックをできる仕組みづくりを行ったのです。
それから、営業メンバーのトレーニング履歴やスキルテストの結果は、我々のチームや現場の営業リーダーがシステム上で確認することができます。「このスキルが弱い」といった現場の声も吸い上げながら、コンテンツを改良したり、新たなパターンのロープレを追加したりなど地道な改善を重ねてきました。
杉村 取り組みの成果も感じていますか。
中田 そうですね。現場の声を聴きながら改善を積み重ねてきたこともあってか、契約数も右肩上がりになっています。数値的な成果がしっかり表れていることで、営業現場も「効果のある施策」として受け入れてくれているように感じています。
杉村 イネーブルメントでは、最初は小さく取り組み始めて徐々に拡大させていくことが多いですが、まさに御社も育成対象や施策の幅を徐々に広げていったのですね。成果もリンクして順調であるように見えますが、今とくに注力している育成テーマなどはあるのでしょうか。
中田 新卒研修が充実したことで、新人の立ち上がりは目に見えて早くなった一方、「既存社員をさらに成長させる仕組みづくりに力を入れていきたい」という声が現場から挙がってきました。また、当社ではプロパーの社員が2~3年めで別部署に異動することが多いのですが、「他部門に異動しても活躍できるためにポータブルスキルをより強化してほしい」という指摘がショッピング統括部の本部長からも入ったのです。そこで今年度からは、既存社員のベースを上げる取り組みに注力しています。