ソフトバンクが直面した「アナログな営業活動の限界」
宮地(SalesZine編集部) 本セッションでは、ソフトバンクが2018年のインサイドセールス立ち上げから現在に至るまで挑んできた「顧客主語の営業体制構築とカルチャー醸成」にスポットを当て、大手企業の営業部門がどのように社内のデジタル化を進め、組織を変革してきたのかをおうかがいしたいと思います。
コロナ禍前の2018年、世の中の変化やアナログな営業活動の限界に直面したとうかがっております。当時の状況について教えてください。
原田(ソフトバンク) 2018年当時、当社の営業はお客様のもとに足繫く通い、アナログな営業活動を行っていたのですが、徐々にこのような営業活動の限界を感じるようになりました。
原田 限界を感じはじめた背景には、社会の「デジタル化の加速」がありました。これにより情報収集の手段も多様化し、お客様が持っている情報量が増えたのです。それでも当社の営業は「弊社のサービスはこういう点が優れていますよ」とお客様に提案していたのですが、お客様のほうが情報をたくさん持っているケースも増えはじめていました。
また、当社は2017年から「Beyond Carrier」という成長戦略を掲げ、通信キャリアの枠を超えたさまざまな事業を展開しており、当社の扱うサービス数も増加しました。“スーパー営業”でなければ到底サービスを扱いきれなくなったのです。
マンパワーでやろうと思えばできなくもなかったのですが、そこを脱しなければいつか限界を迎えてしまうだろうと感じ、デジタルを活用した営業体制の構築に踏み切りました。
宮地 具体的にどのような取り組みを行ったのですか。
原田 最初に、インサイドセールス部門をマーケティング部門の中に立ち上げました。当時フィールドセールスだった私を含めた社員数人がインサイドセールスへの異動を命じられたのですが、初めはどのような業務を行うのかもわからない状態でした。
そこで、まずは「インサイドセールスはどのような仕事を担うのか」「マーケティング部門はどのような仕事をしているのか」といったことを、The Modelに関する本を読んだり、インサイドセールスの立ち上げに成功している企業から話を聞いたりすることで学んでいきました。
そして徐々に業務フローができていったのですが、ここで直面したのが「インサイドセールスとフィールドセールスの連携の壁」です。
複雑なソリューション提案が求められる案件は、インサイドセールスからフィールドセールスにトスアップし、フィールドセールスが商談をする流れになります。しかし、これまでお客様とコミュニケーションをしながらアナログな営業活動を行ってきたフィールドセールスからすると、マーケティング部門やインサイドセールスが営業活動に関わってくることになんとなく違和感があり、トスアップされた案件をなかなか案件として認識しようとしなかったのです。The Model型の営業体制を構築する際に多くの企業がぶつかるこの壁に、我々もしっかり直面しました。