顧客期待の高度化で、営業改革は必須に
企業の中で、最も保守的だと言われてきたBtoB営業領域に、いま変革の風が吹いている。商習慣と暗黙知という壁に守られ、変革を拒み続けてきた営業部門にSales Techが大きな風穴を開けたのだ。いままで難しいとされてきたことが、新たなテクノロジーで可能となってきたからだ。
しかし風穴は開いたものの、必ずしも営業部門の変革が成功しているわけではない。本稿では、今進行しつつある営業変革とそこで多くの企業が陥っているパッチワーク化の限界について論じてみたい。
まず経営トップが営業変革の必要性を認識する状況を考えてみたい。典型的な例として、以下の3つのケースが考えられる。
1.新規開拓が急遽必要となった
既存顧客との良好な関係をベースに安定した売上を確保できていた企業が、何らかの事情で、近い将来いまの売上が大きくシュリンクすることが予測され、新規開拓の必要性が高まったようなケース。
2. 商品・サービスの変化
自社内での新たな商品・サービスの開発、あるいは、有望な商品・サービスを持つ企業の買収によって、いままでと違う市場に対する営業活動が必要となったケース。
たとえば、オフィス用IT機器を紹介していた営業パーソンが、工場の生産設備用IT機器を営業するようなケースだ。
3.顧客からの期待の高度化
既存顧客との良好な関係は継続しているものの、顧客からの期待が変化して、よりハイレベルな営業活動を求められてきたケース。
このケースは、いままで御用聞き型営業を中心に展開してきた企業が直面していることが多い。顧客は、御用聞き的に自分たちの要望に応えてくれる営業活動に一定の満足はしているものの、自分たちが気づいていない課題を指摘し、その解決を支援してほしいという期待は潜在的に高まっている。この期待に応えることができないと、期待は不満に転換し、ライバルにつけこまれる危険も起こり得る。しかも、顧客の変化が見えにくいため、変化が顕在化したときには、手遅れになる場合もあり得る。常に顧客の変化を察知する意識が重要だ。
顧客の経営トップ・マネージャー・現場の3階層で起こっている期待の変化をウォッチし、社内でその事実を共有・分析した上で、自ら変化することが営業には求められている。
さて、本稿では上記の「3.顧客からの期待の高度化」を前提として論を進めたいと思う。顧客の期待が高度化し、その事実を察知した経営トップは営業変革を目指す。言い換えれば、営業戦略の転換ということだ。