デジタルカスタマーサクセスの時代へ
冒頭のセッションパートでは、6年以上Gainsightに在籍し、CCOを務めるカポーティ氏から米国のトレンドが共有された。同社が年に一度米国で開催するコミュニティ・Pulseの参加者は2013年・初開催時の数百名から、2022年には数千名規模へと成長。この10年でカスタマーサクセスという仕事への理解や意義が大きく広がったとカポーティ氏は振り返る。
「ある意味火消しのような……チャーンを防ぐアクティビティがメインだった時代もありました。現在は、お客様にどれだけ早く、大きく価値を提供できるか、拡張・拡大の役割を担うようになっています。お客様の組織内にチャンピオンを生む、グロースエンジンへとカスタマーサクセスが変化していることに、希望を感じています」(カポーティ氏)
中でも成果を出しているカスタマーサクセス組織の共通点は「持続的な成長のエンジンになっていること」。顧客のビジネスを理解し、自社と顧客の双方の成長に貢献すること、そしてそれをひとりのカスタマーサクセスマネージャー(CSM)だけではなく営業組織や製品部門を含め、組織全体が理解していることが重要だとカポーティ氏は強調した。
「さらにもうひとつお伝えしたいのは、数字の重要性です。営業組織と比較すると、カスタマーサクセスを数字で評価することが難しいと悩む方も多いかもしれません。だからこそカスタマーサクセスの行動を可視化し、経営層やエグゼクティブ層にシェアすることが大切なのです」(カポーティ氏)
一方で組織を大きくしていく際には、「コストセンター」と位置づけられないようにすることが重要だ。会場に集ったカスタマーサクセス担当者が大きくうなずく様子も見えた。つまり、カスタマーサクセス組織だけがカスタマーサクセスを求めていても成功しない──では、Gainsightはそれをどう乗り越えているのか。顧客体験だけではなく、顧客成果(CO)を求めることでカスタマーサクセスが実現されると同社の考えがあらためて紹介された。
また、顧客の体験と成果、双方を高めるために、CSMはあらゆるツールを駆使して顧客と向き合う必要があるとカポーティ氏は述べた。そこで、Gainsight 日本法人でカスタマーサクセスディレクターを務める和久井氏にバトンがわたり、これからの時代における「デジタルカスタマーサクセス」のポイントが語られた。
「デジタルカスタマーサクセスと聞くと、ロータッチのお客様が対象だと思うかもしれませんが、ハイタッチのお客様にもデジタルで良い体験をお届けすることは可能です。またデジタル=冷たいものというイメージも抱かれやすいですが、それも人間の工夫次第。より多くのお客様に良い体験を提供するために、デジタルと人の割合を調整しながら取り組む意識が重要です」(和久井氏)
ではデジタルカスタマーサクセスの習熟度はどのように図ることができるだろうか。指標となる3つのPが共有された。ひとつめは顧客が自分で何かを探せる状態をつくっていく「プロアクティブ」 。ふたつめは、顧客ごとに適切な提案を行う「パーソナライズ」。そして、3つめは蓄積されたデータを活用しながら顧客の成果に必要な支援を予測していく「プレディクティブ」だ。
「Gainsight自身も現在は、ひとつめ、ふたつめまでしかできていないと思います。5年、10年かけて、プレディクティブの実現に向かっていくところです」(和久井氏)
セッションパートの最後には、デジタルカスタマーサクセスを行うことで、得られる経営インパクトについての事例共有があった。CSMが担当できる顧客の数や金額、NPSの回答率、コミュニティのエンゲージメントなどが高まったケースがあるという。