「ふつうのエンジニア」からセールスエンジニアへ
――「ふつうのエンジニア」として働かれていた時光さんが、「セールスエンジニア」に出会ったきっかけ、キャリアチェンジの道のりについてうかがえますか。
エンジニアとして働いているときは夜遅くまで残業をすることも多かったんです。プロジェクトルームで働いていたある日、セールスエンジニアがお客様に製品や機能についてかっこ良く説明する姿を目にしました。しかも、いつも日中にしかこない(笑)。「短い時間で働き、お客様にも信頼される仕事で素敵だな」と感じ、当時の上長にセールスエンジニアになりたいと社内異動を希望しました。ポストが空いたタイミングで面接を受け、社内転職のようなかたちでセールスエンジニアになりました。
――もともと「よりお客様と深くかかわるポジション」に憧れもあったのでしょうか。
そうですね。当時は開発している時間のほうが長く、報告やユーザーテストはあるものの、お客様と直接やりとりする機会が少なかったため、より長く対面して仕事ができると良いなと思っていました。面接では、エンジニアとしての実績に加えて、「プレゼンテーションスキル」「理解して人に伝える力」「コミュニケーション能力」「デモンストレーション能力」などが見られていたかと思います。
――現職の「ソリューションエンジニアイネーブルメント」の役割について教えてください。
セールス・イネーブルメントという営業部門の生産性を高め、営業活動を支援する育成部門に所属しています。私は、当社のセールスエンジニアであるソリューションエンジニアのイネーブルメントを担っており、主に転職してきた方向けに必要なスキル・知識をインプットしています。セールスエンジニア向けのイネーブルメント組織は、比較的新しい取り組みですが、セールスエンジニア出身者が多いですね。私個人としても、良いネクストキャリアだと感じています。
――書籍『ふつうのエンジニアは「営業」でこそ活躍する ~セールスエンジニアとして最短で評価される方法』(技術評論社)の原案は技術者コミュニティの中で生まれたとのことでしたが、ご自身がセールスエンジニアとして活躍するのみならず、「セールスエンジニア」をテーマに書籍を執筆されようと思ったきっかけについてうかがえますか。
実は最初はもっと技術寄りの企画だったんです。技術評論社さんに持ち込んだとき、私の経歴を見た編集担当の方から「セールスエンジニア自体が珍しいから、職種をテーマに書いてみたらどうか?」と提案していただいたのがきっかけです。セールスエンジニアの学びを現在は提供する側ですが、日常で取り組もうとすると、どこから手をつければ良いか悩む人も多いかもしれません。自社製品に関する情報は社内で、技術は外から学ぶ必要があります。一方で、エンジニアですから資格取得や英語の勉強などを含めて、楽しみながら情報を仕入れて、共有し合う人も多いですね。
――実際、本書はどんな方が手にとっているのでしょう。
現場のエンジニアの方から、「書籍を読み今月からセールスエンジニアとして働くことになった」と嬉しい報告をもらったこともあります。セールスエンジニアになりたての方も読んでくださっているようで、「もっと早く読めばよかった」という声もいただくなど、当初届けたいと考えていた人には届いているようです。
一方でセールスの方も読んでくださっているようで、ランキングもエンジニア向けではなくセールスジャンルのほうが高いんです(笑)。セールス、セールスマネージャー、経営層の方々が、「セールスエンジニアの必要性」や「セールスエンジニアとの仕事の仕方」を学ぶために手にとってくれているようです。日本企業の方にとっては、外資系企業の働き方という点でも参考になった部分もあるようです。外資系ではセールスエンジニアのJobが比較的明確化されていますが、日本企業ではセールスとエンジニア両方が、それぞれの役割を兼ねているケースも多いですよね。