現行法では電子データと紙の二重管理に
――今日は「電子帳簿保存」の改正について営業組織向けに解説いただきます。尾籠さんが、freeeでどのような役割を果たされているかかんたんにうかがえますか。
いくつかの部門の立ち上げや営業企画の職務などに携わってきました。組織が大きくなり、プロダクト数も増えてきたタイミングで事業開発側へ異動しています。実は、現在のfreeeでは年間600以上の新機能がリリースされているんです。お客様の要望や状況に合わせ、プロダクト側がアップデートを日々進めているわけですが、提案する営業側がすべての情報にキャッチアップすることは難しい状況にありました。そこで、現在はプロダクト側と営業をつなぐ役割なども担っています。
このような背景もあり、複雑なことや難しいことをかみ砕いて説明する力や、たくさんの人や部門を巻き込んで事業をスピーディーに進める「プロマネ力」を磨くことができました。今回は、その力を使って営業組織の皆さまに電子帳簿保存法の改正について、わかりやすくお伝えしたいと思います。
――早速ですが、そもそも「電子帳簿保存法」とはどのような法律なのでしょうか。営業部門が携わる業務に絡めて教えてください。
企業が扱う「国税関係帳簿書類」は紙で基本的に7年間保存することが定められているのですが、特定要件をクリアすれば電子データで保存が可能になることを定めた法律です。
今回は営業組織の皆さんにとって身近でわかりやすい「経費精算」を例にお伝えします。これまではタクシー代や接待時の経費を処理する際、「経費精算書」をExcelなどで作成し、印刷したものに、領収書を糊づけし、上長や経理にハンコをもらっていたと思います。これを電子データで保存し、処理できるのが電子帳簿保存法です。
私たちも会計システムをお客様へ提案する際に、電子帳簿保存法に対応できる上位プランを提供していたのですが、実際は法律上の制限が厳しく、運用に至らない企業が非常に多かったという実情があります。実際に、次の4つの制約がありました。
制約2:領収書が発行されてから3営業日以内にシステムに登録し「タイムスタンプ」を押す必要がある
制約3:経理に手渡したのち、受領者と別の人が「システムに登録されたデータと原本が合っているか」をダブルチェックする必要がある
制約4:年に1回ほど原本とシステム上のデータが合っているかランダムに定期検査が必要
――実態としては紙の原本も保存する必要もあったんですね。
まさに、改正前の法律に則ると、データと紙の多重管理になってしまっていたんですよね。ユーザーからも「この複雑な制約をオペレーションに落とし込んで全社で運用するのは難しい」という声をよく聞きました。最初は電子データの保存に前向きだったお客様も、商談を重ねるごとに、「負荷が増えてしまうから、この実装は難しいですね」と温度感が下がってしまい、紙運用を残すケースも多かったのです。