不動産営業の「勝ち方」に変化
まず不動産仲介営業のビジネス構造をかんたんにまとめます。
- 集客:「SUUMO」や「アットホーム」などからの集客数
- 内覧:実際にお部屋にご案内できる数
- 成約:契約が決まった数
毎月、新規集客が割り振られ、その中から数字につながりそうな「熱い見込み客」を見定めて月内成約に導く。原則はこのフローです。そのため「配られたカードの中から、今月購入に進みそうな見込み客を見定め、1点集中でクロージングする」ことが不動産仲介業で数字を上げる王道でした。「顧客の温度感を見定める営業センス」と、「今買うべきストーリーを語れる営業力」のふたつが必要なスキルだったわけです。
しかし、この数年で本構造は次のように変化しています。
- a.配られるカードが減る
- b.決まりづらくなる
このふたつの理由で数字は上がらなくなっているのです。まずa.については、興味深いデータがあります。
不動産会社への問い合わせと訪問件数の変遷
ひとりの消費者が「不動産会社に問い合わせをする際、平均何社に問い合わせをするか」というデータです。ご覧のとおり、問い合わせ数も訪問数も如実に減少しています。消費者はスマホを通して、情報をライトに自ら手に入れることができるため、調べ尽くして物件をふるいにかけ、その後不動産会社へと問い合わせをする動きに変化しているのです。
実は、この反響の減少にはさらに拍車がかかると想定されます。まず人口減に伴い、今は90年代~00年代ほどの購入人口がいません。この先も人口の絶対数は減り、顧客はより見定めてから問い合わせをするようになるでしょう。店舗に配られる反響の絶対数が、減少していくわけです。
また、新型コロナウイルスの影響に伴い、世の中の物件在庫数が激減中です。背景には企業の転勤がなくなったことや、感染リスクを危惧する高齢者が都心に出る必然性がなくなり、郊外の家を売却しなくなっていることが挙げられます。広告に出せる物件も少なくなり、新規反響を押し下げる要因になっています。
b.は「“検討期間の中長期化”が約5割――不動産業界のインサイドセールスが求められるワケと必要な人材要件」でもお見せしたデータです。スマホの浸透に伴い、顧客は自ら得られる情報が充実しているがゆえに迷うわけです。問い合わせの段階で迷い、内覧をして新しいことがわかるとさらに迷います。そして、ネットでまた新しい情報に出会い、「こっちのほうが良い物件かもしれない」「まだ見つかっていない悪いクチコミがあるかもしれない」――そのように考え始めると、すぐに購入を決められなくなります。
新規反響営業には、「新規反響の減少」「販売可能物件の減少」「顧客の意思決定の遅延」の三重苦があり、新規反響頼みで仲介を行っていては売上維持もままなりません。つまり、「配られたカードの中から、今月購入へと進みそうな顧客を見定め、1点集中でクロージングする」では数字は上がりづらくなっています。この状況に、どう対処すべきなのでしょうか。