注目すべきは「言動」ではなく「状況」―― CS Tech活用術
高橋 最後のテーマに進んでいきます。SalesZineでは営業組織のための「Sales Tech」がテーマとなっていますが、我々は「Customer Success Tech」をテーマにお話しできればと思います。これは、その名のとおり「テクノロジーを活用することで、カスタマーサクセス業務をより良いものにする」というお話です。
ここでひとつ、「びっくり解約」に関するお話をします。ここでのびっくり解約の意味は、「問い合わせもなく、クレームもなく、引き続き契約を継続してくれると思っていた顧客から『解約』を言い渡されること」を指します。困ったことがあったり、使っていて不明点があったりした場合も、実はお客様側から問い合わせをしてこない場合が多いんです。これは『顧客体験の教科書』(ジョン・グッドマン/東洋経済新報社)という書籍からの引用ですが、75%~98%の人は、「何か苦情を思いついても、どこにも申し立てない」というデータが示されています。こうした状況を打破するために、顧客との関係づくりにいっそう注力していく方々も多くいらっしゃると思いますが、果たしてそれが解決につながるかと言われるとどうでしょうか。
同書では「問い合わせ・苦情をためらう理由」として、次の点が挙げられています。
注目していただきたいのは「担当との関係を壊したくない」という理由。何か問題があったときに、「担当と顔が合わせづらくなってしまう」「クレーマーと思われたくない」と、せっかく築いた関係性を理由に、かえってやり取りがしづらくなってしまう状況が語られています。
一方で、テクノロジーを活用すれば「お客様がどのようにサービスを使っているのか」をデータでトラッキングすることができるようになります。お客様の「言動」をベースにアクションを起こすのではなく、「お客様が今『どういう状況にあるのか』」を判断軸に置き、お客様のサポートができるようになるんです。これは、テクノロジー活用で得られるメリットのひとつでしょう。泉さんは、テクノロジーを活用されましたか?された場合、どのように活用されているのかを教えていただきたいです。
泉 まだまだ模索中ではありますが、全社で利用するCRMシステムを中心に、多様なツールを組み合わせた「データドリブンな活動」を目指して設計を進めています。お客様の活用状況を参照するヘルススコアや、送付したDMへの反応を可視化する「アクセス履歴」、サポート部門への問い合わせ履歴など、こうしたデータを複合的に組み合わせながら、お客様に最適なタイミングでご連絡ができるよう、試行錯誤しています。
高橋 多様な情報を扱えば扱うほど、情報は組織の中で分散されてしまうため、データ活用の難易度も上がりますよね。お客様からは、営業に対する問い合わせもあれば、カスタマーサクセスへの問い合わせもある。そのほかにも、利用状況・お客様アンケートの結果データ、お客様向けのイベント参加状況など、種類もさまざまですが……これらがそれぞれ違う場所に格納されていると、お客様に対して統合的なやり取りをすることが難しいですよね。ちなみに、ヘルススコアはどのように活用されますか?
泉 カスタマーサクセスのマネジメントツールを活用し、お客様のZoomのご利用状況、具体的には「急に利用頻度が減っている」「購入されたライセンスに対してユーザー登録数が少ない」などをシステム側で検知して、そうしたお客様に対してアプローチをとっています。お客様が困っているであろう部分を察知して速やかにアプローチを行い、お客様が「困っていない状況」を継続させることを心がけています。
高橋 ありがとうございます。泉さんのお話しから、「どのようにしてお客様のゴールを導いていくのか」を考えて組織をつくり、テクノロジーを活用していきながらカスタマーサクセスを成功させていくヒントが得られたように思います。本日はありがとうございました。