0→1営業の「希少さ」が壁になる? 属人化を脱し組織力を高める条件
第1回で解説したとおり、新規事業開発を牽引できる探索型の人材は、全従業員の中でも数パーセントしか存在しないとされています。新規事業の0→1フェーズを担う営業担当は、この能力を備えた希少な存在と言えるでしょう。
そのため、0→1営業がその能力を発揮すればするほど、「あの人がいないと次の打ち手が決まらない」といった属人化の壁に直面することが少なくありません。事業がひとりの0→1営業の稼働量や判断スピードに依存し、スケールを阻害してしまう危険性があるのです。
しかし、「新規事業に携わる営業全員が探索型になれ」ということではありません。事業をスケールする際に重要なのは、探索型の0→1営業が現場でつかんだ「顧客の本当の課題」や「勝ちパターン」を、チーム全体で検証・活用できる仕組みを整えることです。
具体的には、前編で解説した条件の絞り込みと開発チーム・事業責任者への事実の伝え方を個人のスキルにとどめず、チーム全体の共有フォーマットとして定着させることが、仕組み化の出発点になるでしょう。
ここで注意してほしいのは、管理するための仕組みにしないことです。たとえば商談ログについて、上司が部下の評価するためではなく、PMF達成の条件をチームで絞り込むために入力すると考えられるかどうか。この発想の違いが、探索型の0→1営業の力を最大限に活かし、事業が次のフェーズに移行できるかどうかの分岐点になります。
「売上」から「学習」へ。新規事業を前に進める評価指標
新規事業の現場において、評価制度が事業のスケールを阻害しているケースを目にしてきました。
たとえば、新規事業の営業担当者が、商談で「このセグメントに対して現在のプロダクトはフィットしない」という重要な事実をつかんだとします。しかし、組織の評価軸が受注数と売上で設計されている場合、この気づきは議事録の片隅に埋もれ、翌週にはまた同じターゲットに同じアプローチを繰り返すことになります。このズレが、PMFや事業のスケールにたどり着けない多くのチームで起きているのです。
この問題の根本にあるのは、多くの組織の評価制度が「遂行型人材」を前提に設計されていることです。最適化された営業プロセスを滞りなく進める遂行型人材が評価される制度では、失注(=学習)を繰り返しながら条件を絞り込んでいく探索型の人材は、どうしても「成果が出せない人」に見えてしまいます。これは人材の問題ではなく、物差しの問題です。
では、新規事業の場合は何を評価すれば良いのか。私が重視しているのは「その失注から、PMFに向けて何が当てはまらないとわかったか」です。
「価格が高い」という失注報告ではなく「この規模の会社では、この価格帯では決裁が通らない構造になっていることが確認できた」という報告ができているか。「断られた」ではなく、「『このセグメントは自社のターゲット層ではない』と早期に確認でき、次に向かうべき市場が絞れた」と言えるか。こうした学びを正当に評価できる組織が、PMFへの道を速く正しく進むことができるのです。
