「受注」の瞬間、世界はまだ1ミリも変わっていない
こんにちは。ニーリー 執行役員の小川洋子です。私は現在、モビリティSaaS「Park Direct」を展開するニーリーで、セールスからクライアントサクセス(ニーリーにおけるカスタマーサクセス部隊。以下、CS)まで、総勢約160名の組織を率いています。
創業以来、私たちは月極駐車場市場において、SaaSの理想的な成長曲線とされるT2D3(※)を上回るスピードで事業を拡大させてきました。
※ SaaS企業における最高成長速度の目安。ARR1億到達後、ARRを毎年、Triple(3倍)、Triple(3倍)、Double(2倍)、Double(2倍)、Double(2倍)に成長させていくこと。
株式会社ニーリー 執行役員 小川洋子
1986年東京都生まれ。大学卒業後、株式会社リクルートに新卒入社。住宅領域にて営業職としてキャリアをスタート。 産休・育休を経て当時リクルートでは初となる時短正社員として復職し、営業推進・マネジメント・採用人事など幅広い領域で活躍。仕事と家庭を両立させたキャリアを築く。2022年、SaaS企業であるNealleに転職。入社後、1年半で執行役員に就任。3名から始まったチームを160名超にまで拡大させ、T2D3を上回るペースでのARRで成長中。
私が組織を率いるうえで、営業メンバーたちに伝えている言葉があります。それは、「受注した段階では、顧客にまだ何の価値も届いていない」というものです。
やっとの思いで受注したメンバーにとっては、時に厳しい言葉に聞こえるかもしれません。しかし、インフラが切り替わり、現場の業務が変わり、成果が出て初めて顧客は「真の価値」を得ることができます。契約の段階では、「期待値」を買っていただいただけで、まだ顧客の世界は1ミリも変わっていません。
だからこそニーリーでは、「受注後の稼働・定着までやり切るのが営業の責任」という考えが共通認識になっています。
なぜ営業がそこまで責任を負うべきなのか。ひとつのシンプルな理由として、顧客の意思決定がどこまでも「揺らぎ」を伴うものだからです。
人事採用の経験においても、人の決断がいかに「揺らぐ」ものかを実感してきました。晴れやかな顔で内定を承諾いただいた翌日に、家族の反対で辞退……というケースは珍しくありません。昨日までの「イエス」が一晩で「ノー」に変わるという状況は、当たり前に起こり得るのです。
「組織の意思決定」も、個人の感情と同じく揺らぎます。受注後、これまで表に出てこなかった反対派が声を上げ、社内調整が難航してそのまま案件が停滞する──。
こうした土壇場の局面で、誰が事態を立て直すのか。私は、営業こそがその役割を担うべきだと考えています。
「営業の手離れを良くして、あとはCSに任せれば良い」という意見もあるかもしれません。しかし、それでもなお私たちがこの思想を貫くのは、本当の意味での顧客への価値にこだわりたいから。結果的にこの責任範囲の広さが、営業の「筋力」を鍛え、ひいては組織全体を強くしています。

