展示会はマーケティングの縮図
森野 その話は置いておいて……。改めて思うのは展示会ってたくさんの要素があって、やることもたくさんありますよね。
瀬川 展示会って本当にマーケティングの縮図だなって思います。お客様と出会うところから商談が生まれるところまでを、目の前でしかも短時間のうちに体験できますから。そういう意味では、やっぱり現場に出たほうが絶対に学びが多いし、勉強になることが多いと感じます。
富家 BtoBで「マーケターがいないし、何から手をつけて良いかわからない」みたいな状態だったら、僕はまず展示会が良いと思います。どこに出展するかを選ぶ時点で、自然とターゲティングができているんですよね。さらに、当日お客様に説明する中で、マーケティングメッセージもブラッシュアップされていく。お客様も能動的に来てくれるので、最低限興味を持っていて、売るための土壌が整っているんです。
森野 ウェブだけでやっていると、実際のユーザーが見えないから、手応えが見えるまでに時間がかかりますので、展示会に出てその場で反応を見るのはありですよね。
瀬川 ウェブで成果が出たフレーズが展示会でも通用したり、逆に展示会で成果が出たものがウェブでも効果的だったり、うまくいかないこともあるんですよね。仮説検証の場として展示会ってとても良いなと思います。広告のコピーで悩んでいるくらいなら、展示会でいろいろ試してみて、お客さんがどのフレーズにいちばん反応するかを見るだけでも価値があるはずです。
森野 こちらに関しても、月岡さんも現場で早くPDCAを回すかがポイントだとおっしゃっていました。マーケターとしても鍛えられる場なんでしょうね。
瀬川 やっぱり現場に勝るものはないなと実感しています。自分が現場に立って、参加したメンバーからフィードバックをもらい、毎回振り返りをして次に活かす。これを数回繰り返すだけで、すごく良くなるんですよね。最初から理想を追いかけるのも大事ですが、まずは1回1回を大切にして、PDCAをしっかり回すことが本当に重要だなと改めて感じています。
今後挑戦したいこと
森野 最後に今後挑戦したいことを教えてください。「展示会をこう変えたい」とか何か考えていることです。
富家 考えているのは展示会の「入口の体験」をもっと楽しんでもらうことですね。展示会に限らずBtoBマーケのウェビナーやセミナーって、退屈に感じることが多くて、もっと楽しい工夫ができるはずです。大道芸人さんが最後におひねりをもらうときって、観客がすごく楽しそうにお金を出すじゃないですか。ああいう感覚を展示会にも取り入れられないかなと思うんです。
強烈な体験や驚きを提供することで、「また行きたい」「会った人のことを覚えている」と思ってもらえる展示会にする。そうすれば、目的にももっと近づけるし、全体の成果が大きく変わるはずです。
森野 もうちょっとエンターテインメント性はあっても良いですよね。みんなが決まったことをしないといけないわけではないですから。とはいっても、そちらに振りすぎてもいけないので、目標を見失わないことも重要なのですが。瀬川さんはどうですか?
瀬川 展示会が出展者側のメリットばかりになってしまうと、参加者はどんどん来なくなるんじゃないかと思っています。実際に知り合いから「IT系の展示会に行ったけど、客引きが多くて圧倒されて、そそくさと帰っちゃった」という話を聞いて、良くないなと感じました。だからこそ、当社のブースは少しでも違うアプローチをしたいと思っています。同じことをやるにしても、「この会社、面白いコンテンツを持っているな」「行ってみたい」と思ってもらえるような楽しい場をつくりたいですね。
森野 来場者満足度を上げていかないと、来場者数も増えないし出展者の成果も落ちますからね。
瀬川 あとはウェブとリアルをつなぐ場にしたいです。デジタルマーケティングではセミナーや広告などを活用していますが、お客様と直接話すことで進む話って本当に多いんですよね。
ウェブでよく見る会社と、実際に話した会社では、親近感が全然違うと思います。地方の展示会で、「セミナー見ています」と声をかけてもらえると、そこからリアルな会話が始まるんです。リアルで会った人をウェブのセミナーに誘導したり、逆にウェブで接点を持った人をリアルな場に招いたり。そうやって、展示会をお客様との接点を広げる場として活用していきたいと思っています。
森野 瀬川さん、富家さん、今日はありがとうございました! 今年はおふたりの挑戦に期待していますので、うまくいったらインタビューさせてください。
インタビューを終えて
瀬川さん、富家さんのお話と月岡さんのお話で共通点が多いのが印象的でした。事前に目的を設定することと準備もしっかりやる、当日のオペレーションはその場で工夫、フォロー体制まで考えておく、などなど。ブースなどの見えるところばかりが気になってしまいますが、全体のプランニングが重要だと改めて実感したインタビューだったと思います。