「いまさら聞けない営業マネジメント」の振り返り
第1回は、営業組織の要である「成果を上げる営業マネジャーの特徴」を整理し、企業を取りまく環境が著しく変化するなかで「何が人を動かすのか」という視点を提示した。
第2回は営業チームに焦点を当て、個人とチームの力の融合に注目し、チームとしてシナジーが生まれているのか、協力し学び合える場ができているのかを考えるための具体的なポイントを示した。
第3回では、営業現場において結果だけで評価するのではなく、プロセス上の課題を日常的にチームで話し合いレビューすることの重要性を説き、それがチームのパフォーマンスを高め、組織の活力にもつながることを示した。
第4回では、営業組織の運営に欠かせないITツールを主題にした。SFAは「顧客視点」を土台にしたCRMに統合されることが多い。しかし導入企業の多くで、「管理する」情報としてしか使われておらず、有効に活用するには上司と部下の丁寧なコミュニケーションなど現場に合った方法が不可欠であること伝えている。
第5回では、営業活動の質の向上について、「お客様視点をもつこと」「顧客のニーズは何かを明確にすること」から事例を交えて再考し、チーム内での日常的なコーチングが相互学習を促進し、顧客ニーズを起点に行動する文化が醸成されることが示した。
そして第6回は、「顧客視点に立つこと」「顧客のニーズを特定すること」がなぜ難しいのかについて論じた。ニーズはそもそもあるかないかではなく、状況に応じて変化し、それに伴い商品・サービスの価値やインパクトも変わる。その変化の過程を顧客と一緒に明確にしていくプロセスこそ、顧客視点に立ち、真のニーズを理解していくことである。
これまでの連載はすべて営業組織の強化を目指した議論である。営業組織は企業組織のエンジンであり、組織を動かす原動力といえる。では、営業組織の強化を営業組織だけに任せてよいのだろうか。答えはもちろん否である。
営業組織のパフォーマンス向上には組織的な支援が必須
企業組織の機能を構造化すると図1のように表すことができるだろう。すべての機能が最適に連動することで車輪、つまり組織が動くというダイナミズムを象徴している。
常に顧客を中心に事業戦略を設定するため、中心に顧客がくる。そのすぐ外側は、営業組織が行う主要な活動である。すなわち、営業機会を発掘して見極め、案件化した営業機会を成約に向かってマネジメントしていく。その繰り返しが、特に重要顧客の顧客価値を高める関係性の維持・発展につながる。
しかし、営業組織のパフォーマンスを上げるためには組織的な支援が必要である。したがって、その外側には3つの支援機能として「営業マネジメント」「オペレーション」そして「セールス・イネーブルメント」があり、相互に連携しながら営業活動を支える。言い換えると、この3つが機能しないと営業組織は力を発揮できないのである。
これまでの連載でも、営業組織、人、営業マネジメント、そしてITツールなどを論点にして考察してきた。より効果的に営業組織のパフォーマンスを高めるためには、支援機能としてのオペレーションおよびセールス・イネーブルメントに、あらためて注目することは重要な意義があるだろう。
まずここでいう「オペレーション」とは何か。一般的には、いわゆる営業戦略を実行に移すための具体策をマネジメントするものと言える。具体的には、目標値の設定、テリトリーの策定、インセンティブなどの営業施策やフォーキャストのためのさまざまなテンプレートの提供などツールを含む営業運営の土台であり、営業のパフォーマンスを上げるためのありとあらゆるしくみと手段を含む。営業組織を持つすべての企業が規模の差はあれ持っている機能であるといえる。
そこで本稿では、3つめの「セールス・イネーブルメント」に着目してみよう。