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なぜ顧客視点でニーズを特定することは難しいのか 顧客が営業に本当に求めている4つのこと

 本連載が着目してきたのは、営業組織を運営するうえで土台となる「営業マネジメント」という視点で人と組織を見ていくことである。これまでの第1~5回を通じ、「どのように自社商品やサービスを売るか」という視点から離れ、顧客視点から顧客のニーズを常に考え愚直に行動する。そのような実践が、顧客が困ったときに真っ先に相談が来るという信頼関係を築き上げることにつながり、競合他社から差異化する近道になることが示されたのではないだろうか。そこで今回は、「顧客視点に立ち、顧客のニーズを特定することがなぜ難しいのか」について、別の角度から論じたい。

ニーズは変化する

 そもそも顧客はニーズを常に持っているのだろうか。営業は、自社商品が起点になるため「顧客のニーズありき」で考えがちである。しかし現実がそうではないことは多くの営業が痛感していることだろう。顧客はすべての問題、将来的に起こりうる問題や課題に気づいているのだろうか。顧客が外部から商品やサービスを調達したいと思うためには「解決しないとまずい」と思える問題があるのが前提である。新しい何かを導入すること、それは彼らにとって「変化」を受け入れることである。変化はリスクを伴う。長年の慣習を変える、使っていた道具を変える、身についてきた行動を変えるなど、変化はコストを伴う。果たして「変化」を受け入れるほどにその問題や課題は切実で深刻なのだろうか。そのコストを確実に上回る価値が見出せるのであれば、人は一歩踏み出す可能性が高い。

 図1が示すように、人は何か変化を受け入れる際に、獲得できる価値と支払わなければならないコストを天秤にかけるのが通常だろう。

 

図1.コストとニーズのバランス(筆者加筆)

 また、顧客が具体的な何かを購買する意思決定をするにはプロセスが存在する。初期段階は、まだ課題を意識していない、つまり現状に満足している状態である。社内外のさまざまな環境変化により、顧客自身が変化の必要性を感じ始めるころから、ニーズの認識は少しずつ変化する。つまり顧客のニーズは時を経て発展していくのである。

 図2は顧客のニーズの変化をやや単純化して示している。

 

図2.ニーズの発展(筆者加筆)

 注目すべきは縦軸である。ここでの「ソリューションのインパクト」とは、営業が提供する商品やサービスのことである。つまり自社の「ソリューション」は固定している一方で、その価値は、顧客のニーズに合わせて変化する、ということである。

 考えてみれば当たり前である。ガソリンが満タンの車の運転手に通常より1ℓあたり5円安いガソリンを売ろうとしても見向きもされない。しかし砂漠にある小さな町のガソリンスタンドの価格が通常の2倍でも、ガス欠になった運転手は飛びつくだろう。ここで示していることは、ふたつのことである。まずガソリン(自社の提供するソリューション)そのものは変わらない。しかし相手(顧客)の状況や改善しなくてはならない問題の切実さによってその価値は変化する。そして、その切実さ、つまり顧客のニーズは、固定してそこにあるかないかではなく、時間とともに変化し、かつ顧客によって千差万別であり、従って受け取る価値も異なるということである。

顧客のニーズ・まとめ

  • 顧客のニーズは、あるかないか、という二項対立でも、固定した事実でもない
  • 顧客側のニーズは時間とともに変化する。発展する可能性もあるが、消えるかもしれない。あるいはほかのオプションで課題そのものが解決されるかもしれない
  • 顧客のニーズは、変化に対する受容度(コストと価値のバランス)によって変わってくる

顧客の認識する価値も変化する

 先ほどの図2において、最初の「①変化に無関心」の段階で自社のソリューションの詳細を説明したらどうなるだろうか?買い手側は興味関心を示すだろうか。最後の「④変化への行動」においてはどうだろうか。たしかに④では、その顧客にとって課題を解決するためのソリューションの価値はいちばん高くなる。では、そのときに売り込めばすんなりクローズできるのだろうか。残念ながら状況はそれほど単純ではない。ソリューションの価値がいちばん高いとされる④の時点では、顧客が解決しなくてはならないニーズはたしかにある。しかし、たいていの場合、顧客は自力でニーズを明確化しているので、そこに合う解決策だけを探すようになる。貴社の営業が提供するソリューションは競合他社を含めたたくさんのオプションのひとつに過ぎなくなるのである。

 つまり、顧客のニーズが「課題として認識(③)」あるいは④の段階であれば、彼らは割とすぐに営業に会ってくれる。しかし単なる選択肢のひとつであり、営業は彼らの質問に答え、ソリューションそのものの特徴、仕様を伝えそれが解決できる利点を伝えることに終始する。一方で、①や「現状維持(②)」の段階ではなかなか会ってもらえない、門前払いの可能性も高い。しかもこの段階で自社のソリューションの良さ(精度が上がった、少ない経費で運営できる、自動化が進んだ、など)を伝えても、単なる情報提供という処遇で次の面談はないだろう。

 顧客のニーズは変化し、その変化に応じて彼らが認識する自社のソリューションに対する価値も合わせて変化する。

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