書籍執筆のきっかけは「厳しいリーダーとしての反省」
──あらためて『なぜ営業リーダーの仕事はこんなに難しいのか』の上梓、おめでとうございます! およそ1年前の2023年12月には、1冊めのご著書『人生を変える営業スキル』を上梓されていますが、なぜ「マネジメント本」の執筆に至ったのか、きっかけを教えてください。
元部下にある本を勧められたんです。ビジネスリーダーが読むべきとされているその書籍に書かれている内容は、「遠藤さんがやってくれたマネジメントと真逆だ」と。「これがスタンダードとして広がっていくのは、違和感があるから、遠藤さんにぜひ営業リーダーの本を書いてほしい」と言われたのが最初のきっかけでした。
もうひとつのきっかけは自分の営業リーダーとしての失敗経験です。日本オラクルに勤めていたときに上司が退職し、一般社員だった私が突然部長に任命されました。当時は、自分には引き出しがなく、なかなかうまくいかなかったんですね。あらゆる制約や市場環境の中で、マネジメントの難易度はかつてないほどに上がっています。マネージャーになった人が意識するべきことがわかるような具体的な実践法と数字から逃げられない苦しみやその乗り越え方も併せて提示すべく、執筆を決意いたしました。
──書籍の中では、成果よりも先に人の能力を引き出すことが大事だと強調されていましたよね。
そうですね。最終的には、心理的安全性を確保してメンバーが自分らしくいられることを目指しています。
私も営業マネージャーになったとき、「外資系の営業マネージャー像」になろうと、自分を変えようとしてしまいました。しかしそれは疲れるし「自分ではない人間」でいると、お客様にもメンバーにも信頼してもらえません。自分らしくいられる状態がその人の能力を引き出すはずですから、「自分に戻る」というのはひとつのキーワードですね。
一方で、当然営業リーダーは数字を達成し続けることに責任を負っています。「数字に強いチームであろう」という共通認識を、メンバーとともにつくっていくことも重要です。この両立が難しいポイントのひとつです。
──遠藤さんが初めての営業リーダーとして経験した失敗について、どういった反省があったのでしょうか。
個人の成長を度外視して結果や数字だけを追い求めていたんです。メンバーからは信頼されないリーダーでした。
そんななか、中途メンバーに営業資料を見せながらオンボーディングをしていた際に、「表向きの資料は良いので、売るための資料をください」と言われて、ハッとしました。
営業リーダーの仕事は、「売るために必要なこと」を考えること。会社としての勝ち筋やお客様の状態を考慮し、売れる仕組みをつくることです。そこをまったく考慮せず、結果の数字のみが大事だと勘違いしてしまっていた。この勘違いに気づかされた瞬間でした。
営業リーダーはやるべきことをたくさん抱えていますよね。メンバーの採用やオンボーディング、メンバー育成のためのフィードバックや仕組みづくり、チームを効率的に回していくためのマネジメントやミーティングなどです。
でも、それらをすべて「数字」より後回しにして良いと思ってしまうことが多いのではないでしょうか。自律的な成長を促すために現場にやり方は任せるという考え方もあると思いますが、実はこういったプロセスを大事にすることこそが、数字につながっていくのにもかかわらず、気合いだけで数字を追い求めてしまう企業は多いと思います。